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億万長者から転落 米スポーツ界の現実

2013-05-18 08:15:51 | 海外ネットワーク
5月12日 NHK海外ネットワーク


巨万の富を手にした人生の成功者から一転して自己破産に追い込まれる元スター選手たち。
そこにはアメリカのスポーツビジネスが抱える構造的な問題がある。

4月下旬ニューヨークで開かれたNFLのドラフトで
笑顔でメディアのインタビューに応じるのは大学のアメリカンフットボールの選手たち。
上位で指名されれば日本円で20億円以上を獲得する選手もいる。
全米の注目が集まった。
「選手にとっては一瞬にして億万長者になるチャンス。」
「いわばフットボールのアカデミー賞さ。」
しかし今 華やかな舞台を引退した選手たちの自己破産が問題になっている。
アメリカのメディアは
NFLの元選手のうち78%が引退後5年以内に自己破産している
と伝えるなどこの問題を相次いで取り上げている。
NBAアメリカプロバスケットボールでも60%にのぼる。
多くの選手が自己破産に陥る原因。
それは奨学金で学校に通いスポーツだけに集中するため
金融の知識をほとんど持たず投資詐欺などに騙されるケースが多発しているからである。

引退後自己破産したNFLの元スター選手ジャマール・ルイスさん(34)。
今年全米チャンピオンに輝いたNFLの名門レイブンズで2000年から10年間プレーした。
全米最大のスポーツイベントスーパーボウルにも出場。
記録を次々塗り替えチーム歴代の“ベストプレーヤー”にも選ばれた。
しかし自己破産で自宅を差し押さえられ財産のほとんどを失った。
インタビューにも弁護士の自宅で応じてくれた。
(ジャマール・ルイスさん)
「なんとか暮らしている。
 トラック会社のセールスの仕事をしている。」
南部の貧しい地域で育ったルイスさんは
町を出て豊かな人生を勝ち取ろうと高校で熱心にアメリカンフットボールの練習に取り組んだ。
卒業後は奨学金を得て名門テネシー大学に進学。
(ジャマール・ルイスさん)
「成功してこの地域を出たいと思っていた。」
プロ入りしたときの契約金は10億円。
現役生活で総額40億円以上を稼ぎ出した。
ルイスさんは友人に誘われるままさまざまな事業に手を出した。
遊園地建設に18億円
運送会社とレストラン経営にそれぞれ5億円。
内容を把握しないまま金融商品にも手を出した。
しかし共同経営者のずさんな運営などでいずれも失敗。
お金はあっという間に無くなった。
(ジャマール・ルイスさん)
「大金がどこへいったのかさっぱりわからない。」
大金を手にしても自己破産に追い込まれてしまう問題の根本に何があるのか。
プロ入り前に選手が所属する大学の“スポーツ環境”や“選手教育”に原因がある
と指摘されている。
アメリカンフットボールでは有力選手たちはプロのような扱いを受ける。
紅白戦でも4万人が試合を見にかけつける一大イベントである。
スター選手も生まれメディアから注目を集める。
大学にとってこうした選手たちは収入を生み出す源である。
ジョージア州立大学では入場料や飲み物の販売などスポーツ部門の収入が年間90億円以上になる。
(ジョージア州立大学 スポーツ部門責任者)
「大学のアメフトが巨額のビジネスであることは間違いない。
 日々 資金が必要だ」
これに対して専門家は選手として活躍することばかりが強調され
大学が充分な教育を行っていないと批判している。
(ノースカロライナ大学 リチャード・ソーテル教授)
「ビジネスモデルとしていいかもしれないが教育としてはお粗末だ。
 彼らはまるで出稼ぎ労働者だ。
 そして必要な知識を学ばないまま突然大金を手にしてしまう。」

詐欺にも合うことなく莫大な資産を計画的に運用していくためにはどうしたらいいのか。
選手と引退した元選手だけを対象にした資産管理についての本格的な講座が
ワシントン大学に初めて設置された。
先月行われた授業には200人以上が参加した。
(担当者)
「教育の質にこだわっている。
 最高の人たちを講師として迎えている。」
収入が大きく減る引退後の人生に真剣に向き合おうとしている。
(NFL元選手)
「現役は時代競技以外のことは二の次だった。
 じっくり学べるいい機会。」
(担当者)
「彼らのための専門的な授業はこれまで提供されてこなかった。
 特別なプログラムをつくろうとしている。」
華やかな舞台から一転。
自己破産に追い込まれた元NFLのスター選手のルイスさん。
生まれ育った町に戻り地元の選手などを相手に講演会などを開いている。
公園やサイン会を通じて資金を集めながら通信教育で金融の知識を学んでいる。
今年の夏をめどに新しい事業を始める計画である。
(ジャマール・ルイスさん)
「自分の犯した間違いから多くを学んだ。
 新たなスタートさ。
 誰でも新たな出発をする権利がある。
 私にもね。
 今度はうまくやるよ。」

チームによっては新人選手を対象に資産の運用などの教育を始めたところもある。
この問題はアメリカのスポーツビジネスに影を生んだが
アメリカがやり直しがきく社会であることが救いである。

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