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「キャプテン翼」翻訳 シリアに夢届け

2017-05-19 06:15:00 | 報道/ニュース

4月25日 国際報道2017


4月に中東ドバイで開かれたアニメや漫画などをテーマにした大規模なイベント「コミコン」。
大きな注目を集めたのが「キャプテン翼」のアラビア語版である。
「キャプテン翼」は
サッカーを愛する主人公の少年 大空翼が
数々のライバルと出会いながら
ワールドカップ優勝という夢を追う物語である。
アニメが放送され中東でもすでに高い人気があるが
新たな市場を開拓しようとマンガが初めてアラビア語に翻訳されたのである。
「本当にすばらしい作品だね。」
「小さい時から大ファンなの。
 アラビア語になってうれしいわ。」
翻訳にあたったのは東京の大学に通うシリア人留学生のカッスーマー・ウバーダさん(26)。
日本の教育や戦後の復興について学ぼうと5年前に交換留学生として来日した。
当初は1年で帰国する予定だったが
内戦が激しさを増すなか故郷に戻ることができなくなり苦しい日々を過ごしていた。
そんなとき思いがけずウバーダさんの語学力が出版社の目にとまり
翻訳を頼まれることになったのである。
サッカー選手を目指してた子どものころ憧れていた「キャプテン翼」の翻訳は
願ってもない話しだった。
(シリア人留学生 カッスーマー・ウバーダさん)
「ホンマうれしかった。
 僕の留学には価値があったというか。」
翻訳を始めるとイスラム圏独特の難しさに直面した。
イスラム教ではタブーのアルコールが登場する場面
アラビア語版では「ウイスキー」という言葉を使わずに意味が伝わるように工夫した。
(シリア人留学生 カッスーマー・ウバーダさん)
「ウイスキーという言葉をこのまま書くと出版許可が得られなくなってしまう。
 どうすれば出版できるかと考えて
 頑張って訳しました。」
最も思い入れがあるのが
翼がライバル日向小次郎との勝負の中で言い放つひと言。
ウバーダさん自身が勇気づけられた言葉である。
「みたか!
 おれのサッカーはおまえらの遊びのサッカーとはちがうんだ!!
 遊びなんかじゃない!」
「なに?!」
「サッカーはおれの夢だ!!」
(シリア人留学生 カッスーマー・ウバーダさん)
「“サッカーはおれの夢”
 そのままアラビア語に訳した。
 どうしてもこのセリフは絶対変えたくないと。
 努力することが大事と子どものときに解釈して
 夢を持つのは大事と思ったんですね。
 この漫画が夢を持つきっかけになったり努力するきっかけになるといいなと
 翻訳しつつ思っています。」
翻訳をしながらも常に考えているのは母国シリアのことである。
この日も化学兵器によって多くの子どもが犠牲になったニュースが伝えられた。
シリアの子どもたちのために自分ができることをしたい。
この強い思いが難しい翻訳作業を進めるための力にもなっている。
(シリア人留学生 カッスーマー・ウバーダさん)
「罪もない子どもたちが毎日殺されていて
 チャンスも与えられず
 殺されているのは悲しいですね。
 いつかこの本を通じて夢を与えられたらいいなと思っています。」
4月 ウバーダさんが翻訳した第1巻が
出版社を通してドイツにいるシリア難民の子どもたちのもとに届けられた。
今後 全37巻を訳すのがウバーダさんの当面の目標である。
「キャプテン翼」から夢を持つ大切さを学んだウバーダさん。
そのことをシリアの子どもたちにも知ってもらいたいと願っている。
(シリア人留学生 カッスーマー・ウバーダさん)
「僕はこの内戦を終わらせるヒーローになりたいんですけど
 それって現実的ではないので
 子どもたちが読んでいる間くらいは嫌な思い出を忘れてくれたらいいな。
 いつか内戦が集結したら
 漫画を通じてだけではなく
 シリア復興とかシリアの子どもたちのために努力したいと思っています。」


 

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