3月15日 NHK海外ネットワーク
キューバはアメリカが半世紀以上にわたって厳しい経済制裁を科している。
そのため車の大半は革命前のアメリカ製か
革命後に輸入された旧ソビエト製である。
キューバの車事情からもこの国の波乱に満ちた歩みがうかがえる。
1959年のキューバ革命。
親米政権が倒されカストロ政権が誕生した。
新政権はアメリカとの国交を断絶。
当時のソビエトに接近し社会主義の道を歩み始める。
しかし後ろ盾だったソビエトが崩壊したことで経済は慢性的な不振に陥った。
国民の平均的な月給は今も3千円程度と言われる。
キューバが国民の暮らしを支えてきたのが配給所である。
食料や油などを求めて人々が訪れているが
経済の低迷で品物は大幅に減っている。
長引くアメリカの制裁で物資不足が続いている。
キューバがアメリカとの国交正常化に動いたのは経済を立て直したい狙いがあるからである。
「制裁はすべての市民に悪い影響を及ぼしている。」
制裁が解除された場合とりわけ勢いがつきそうなのが観光の分野である。
超大国アメリカと対峙してきた歴史がそのまま観光資源になるとみている。
ハバナの中心にある革命広場には
キューバ革命の中心人物 チェ・ゲバラの巨大な肖像画が描かれ観光客に人気の場所となっている。
(イギリスからの観光客)
「歴史や博物館に魅力を感じる。」
(ベラルーシからの観光客)
「特別な雰囲気にひかれる。」
革命博物館もキューバ革命を売りにした施設である。
革命直後の時代に使われた武器や先王器などが展示されている。
キューバが世界に誇るラム酒の製造過程を見学してもらう施設も
連日ヨーロッパなどからの人たちでにぎわっている。
国交正常化でアメリカからの観光が自由になれば売り上げはさらに伸びると期待を募らせている。
アメリカ人の訪問が増えるのをチャンスとして生かそうと準備を進める人たちがいる。
観光に携わる人たちを育成する専門学校では
このところ英語力を磨きたいという生徒が目立つ。
社会主義のキューバではこうした授業も無料のため
必要に応じて学ぶ期間や内容を決められる。
(生徒)
「コックになる勉強をしている。
英語は胎児なので学んでいる。」
(英語教師)
「キューバではもともと英語に興味を持っている人が多かった。
観光の仕事に就きたい人も多く英語を話せないとだめだとわかっている。」
キューバでのビジネスを拡大しようとすでに動き始めているアメリカ人もいる。
フロリダ州で牧場を経営するジョン・ライトさん。
ハバナ市内のホテルに拠点を設け
畜産だけでなく観光業への進出にも意欲を見せている。
(ジョン・ライトさん)
「将来的には自由貿易や観光クルーズなど様々なビジネスの機会が広がる。
観光と農業で大きなチャンスがある。」
アメリカの観光業への進出を迎え討とうとしているのが
社会主義を通じた友好国としてキューバでの実績がある中国やロシア系の企業である。
観光客の移動の足となる大手のバス会社はいずれも中国との合弁企業。
中国系の旅行会社を経営するワン・チェン社長。
キューバの国営企業と提携し観光客を受け入れてきた。
約20年にわたって市場を知り尽くした強みはアメリカ相手でも揺るがないとしている。
(中国系旅行会社 ワン・チェン社長)
「長年仕事をしてきたので有利。
競争相手には負けない。」
社会主義のキューバでは原則すべての職業は国営で公務員が行うことになっているが
ここ数年 政府が許可すればレストランやお土産屋など個人でもできる職業が増えている。
街にはアメリカとの国交正常化を控え毎日のように新しい店がオープンしているのがみられる。