その昔、元ユニコーンの奥田民生氏がバンドを解散後の暇な時代に川口湖に通い詰めてはブラックバスを500匹釣ったとか。それなら僕もと1年間と決めて、近くのダムに通い始めた。毎朝、早起きしては仕事の前に2時間ほど釣りを始めた。アメニモマケズ、カゼニモマケズ・・だ。ルアーはほぼ軟質プラスティックのワームといわれるもの。ジグヘッドやテキサス、キャロライナ、アンダーショットリグと手返しよく釣るためにリーダーにサルカンを結んだものを作っておいて根がかりしたら即交換というふうに。夏の終わりの頃には800匹を超えた。けど、あまり楽しくなくなってきて数えるのをやめた。漁をしているみたいだったからだ。漁ならミミズとか生き餌を使えばいいのだ・・。バスフィッシングの楽しさはなんといってもハードルアー。デザイナーが、或る意図を持って作り上げたルアーを理解し、使い分けて魚と向き合うのが面白いのだ。初めてクランクベイトでバスを釣った時の興奮は今も忘れてない。当然、釣果も落ちるのだけど、湖面に向かってルアーを投げるだけでも楽しい。
自分の描いたイメージ通りに魚が釣れた時の喜びは格別です。それがたとえ1尾でも。
開高健は「地球はグラスのふちを回る」の中でこんなふうに語っている。「釣りをしているときは外からは静かに見えるけど、実は妄想のまっただ中にある。このとき考えていることといえば、原稿料のこと、〆切日のこと、編集者のあの顔、この顔、それからもっと淫猥、下劣、非道、残忍。もうホントに地獄の釜みたいに頭の中煮えたぎってる。それが釣れたとなったら一瞬に消えて、清々しい虚無がたちこめる」・・・と。