HOBNOBlog

ロンドンから徒然に

闘牛の光と影

2011-06-23 | 旅・イベント
 ブログのペースがゆったりしているもので、旅の移動にリアルタイムで追いついていません。
 というか、滞在先のWi-Fi環境が良くなく(すぐに切れる)、またあまりの暑さに参ってしまって書く余裕がなかったというのが正直なところですが、いつもの旅と同じくスケジュール後半の体感はすごく早く、もう終わりを迎えて、昨晩ロンドンに戻ってきました。

 アルハンブラの写真はまた後日整理してからアップすることにして……実はグラナダに移動する前にもう一ヶ所訪れていたんです。
 Ronda/ロンダ……この町の歴史を辿ると、新石器時代から人類が住んでいたらしいとのことなのですが、このことを置いといても、少なくとも紀元前6世紀頃のケルト人に起源を辿ることができるくらい古い町のようです。
 その後のキーワードを探っても、“フェニキア”、“ポエニ戦争”、“カルタゴ遠征”、etc.と、かつて世界史で習った懐かしい言葉を見つけられます。

 とまぁ、堅い話は抜きにしても、おそらく下の写真の橋をどこかで見た人は多いんじゃないかと思います。このPuente Nuevo(“新橋”の意味)の光景を見ても分かるように、ロンダは海抜739mという非常に高い岩だらけの台地の上に成り立っています。



 この橋の眺めは凄いと思うでしょ?でもこのアングルで撮るには実は谷の随分下方まで降りていかなければなりません。この日の天気は雲一つない快晴!周りは低い木ばかりなので陰ひとつできず、ここらがこの日の僕には限度でした。
 公園の木陰に入るとそれなりに涼しいので、地元の老人達は皆でこうして雑談を楽しんでいるんですけどね。



 さて、この町は詩人のリルケが“夢の町”と詠んだことでも有名ですが、確かに白い壁で作られた住居と青い空のコントラストはそういった形容に相応しいくらい綺麗です。




 そんな中に一際目立つ円形の建築物。これが実は闘牛場なんです。スペイン最古の闘牛場のひとつで、近代の闘牛のルールが確立したのもロンダでのことだと言われています。



 闘牛と言えばスペインの国技として有名ですが、近年では娯楽の中心は当然フットボールに移り、また動物愛護団体からの抗議にも晒されるなどして、その人気の衰退ぶりが目立つようです。事実カタルーニャ州(バルセロナはここに属します)では昨年闘牛禁止法が成立し、来年からは州内での闘牛がなくなります。

 今年からとりやめたと聞いていたのですが、ホテルのTVを点けてみたら中継されていました。
 音楽や服装を始め長い伝統に則って行われる“儀式”とそれに対する観客の熱狂的な反応は、かたやで厳かであり、またやけに俗っぽくもあります。

 知られていることだとは思いますが、華やかなマタドールが牛との一騎打ちでとどめをさすのは最終段階であって、それまでに登場するピカドールやバンデリジェロと呼ばれる人達が、長槍や銛を牛の背中に打ち込み、動きを弱めます。おそらく“残酷だ”と避難されるのはこうした過程を含めてのことだと思います。

 一部始終を見ていると、個人的な心情としてはやはり牛が可哀想だとの思いを抱いてしまいますが、おそらくこういったある意味“国の文化”に対しては国民の複雑な感情があるに違いありません。
 例えは悪いかもしれませんが、捕鯨に対する非難を理解しながらもどこか素直に全てを受け入れられない日本人の歴史の背景や心情にも似たものがあるのかもと思ってしまいます。

 それにしても、この強い光の中で激しい格闘が展開され、乾いた土が牛の血を吸って影のように黒くなると思うと、闘牛をテーマにしたピカソの作品の印象がまた違ったものになりました。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。