植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

今回の出品作は「福沢諭吉先生」のお言葉でいこう

2023年10月05日 | 篆刻
昨日は朝から本降り、これは神様がくれた賜物です。まさに慈雨でありました。
①植えたばかりの野菜と咲き始めた秋バラにたっぷり水を与える ②屋上のメダカプールに足し水をする ③多忙と暑さとで疲弊しているワタシに休養させてくれる ④次に予定している公募展「日美展」の作品制作の時間を与えよう・・・そんな有難い雨で、だいたい60mmくらいは降ってくれました。

それで、ブログの更新も忘れて朝から、午前中ずっと篆刻三昧でありました。まず、その前に彫った印がミスだらけであったので、定番である「青田石」に変えて同じ文字を同じように彫りなおしたのです。ワタシのやり方は、全くの自分流で独学なので、無駄や常識外れの作業が多いのです。経験的には、一度彫ってみてもう一度彫りなおすと段違いに良い(自分の尺度ですが💦)印ができます。

「印稿」(設計図・つまり出来上がりの予想図)がアバウトで、「布字」(逆さ文字にして石に彫る文字を書き込む)もいい加減なものになっております。彫っているうちにああだこうだと考えて、設計通りになっておりません。また、考えながら試しながら彫るので、雑念だらけ・集中できないのです。手元が狂ってあちこち刀が傷つけ余計なところまで削る、ということが多発いたします。

また、最初の「印稿」自体に問題があると確実に途中で嫌になります。その場合は、とっとと諦めてやり直し。しかし、一応真面目に考えてよさそうな字形・章法で彫り始めるので、ほとんどは失敗しながらもとにかく最後まで彫り上げます。通常それが満足できるなら仕上げるのですが、前述のとおりあちこちで間違え、改善点が目につきます。

そこで、一応出来上がった代物をとくと眺め、その反省を生かしてもう一度彫りなおすという事になるのです。ところが昨日は二度目の印も無駄になりました。わざわざ印材を取り換えて、いくつかの修正を加えて慎重に彫り始めたのですが、今度は石に問題がありました。ヤフオクでまとめて落札したものの一個、安物の質の悪い「青田石」で、2か所に広く硬い石質の部分がありました。寅さんではないですが「日焼けのなすび」で、わたしゃ入れ歯で歯が立たない、状態であったのです。
左が第1号、右が第2号。どちらもいけません。

彫ろうにも力いっぱい刃をたてないと削れず、表面を滑ることも多発しました。それで午前中が終了。途中でギブアップでした。もーイヤ、3回目はやめておこうと思いました。そこで、師匠格のS先生から以前写真で送られてきた印稿を思い出しました。こんなものでよかったら彫っていいよ、と言われていたのです。ところが印の字というのは簡単に読めないのです。色々な時代で「篆書体」は変遷していて相当な勉強と経験を積まないと、彫った字が読み取れません。で、なんて書いてるの?と恥を忍んで尋ねたところ「人生の妙は意の如からざるに在り」という文句で、どうやら福沢諭吉先生のお言葉らしいのです。
素晴らしい、さすが本職の篆刻家さんですね。

福沢先生は、慶應義塾の創設など日本の思想家教育家として名高い偉人でワタシの故郷大分県の出身であります。そこで、急遽午前中の印は放棄し、その印稿を彫ろうと思ったのですが、そこではたと考えたのが、先生の印稿をその通りに彫ったら「摸刻」と同じ、自分のオリジナルの印にはなりません。これから公募展に出すというのに、他人さまのデザインを失敬するわけにはいかないだろうと思いなおしたのです。

そして、福沢先生の修身要領を眺めて見つけたのが「敢為活溌(かんいかつぱつ)堅忍不屈(けんにんふくつ)」の下りであります。個人の独立自尊の精神 を説いた第6条の一節です。ワタシは前提として多文字印を彫る予定でしたから、この8文字で良かろうと決めました。独学独習でやってきましたからぴったりだと思いました。今度は出来れば2度彫りは避けて一発で決めようと考え、念入りに印稿を書きました。
午後から、夕方5時までみっちり時間をかけて彫りました。で、今朝も6時から彫ってだいたい8割がた出来たのがこれであります。↓

S先生に、途中の印影を送ったところ「これまた新境地ですね」と謎のお言葉(笑)。どこが新境地かはさっぱりわかりません。いささか心配になって、どこか変でしたかと尋ねたら、短く「いえ、いいと思いますよ」だそうです。

お若いのに褒め上手な先生なので、今までもけなされたことはありませんし、「会心の作」ですとか、「絶賛されました」とか人の気持ちを良くする術にも長けていらっしゃる。あとはこれに線の強弱を載せ、彫り残しを削り、片の線をあちこちこすったり切ったりして「古色」を出します。これがなかなか難しいのです。これで、先生が「OK、今回はこれでいきましょう」と言ってくれると嬉しいのですが。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする