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ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

仏語ではフォン・ド・ヴォライユ、伊語ではブロード

2008-06-17 13:03:29 | Weblog
 初夏に出回る果物の王様「さくらんぼ」がテレビなどで取り上げられるようになってきた今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 山形で生まれ、現在、山形に住んでいる私にとっては「さくらんぼ」は他人様(知り合いの人や親戚など)から頂くもの、と子供の頃から思っておりました。(他人様に送る場合は購入)
 ですから、百貨店の地下食品売り場で遭遇する桐箱に入っている高額「さくらんぼ」などを見ると「一体、誰が買うのか?」と、いまだに思ってしまうのは悪いトラウマです。

 さて、話は変わりますが、昨日、まっきー様という方から「フォン・ド・ヴォライユの作り方を教えてほしい」とのコメントをいただきました。
 こういった料理関係の記事リクエストをいただきますと、常にネタ切れな私にとっては「渡りに舟」と言いますか、大変助かるわけでして、意地でも長文にしたいと意気込んでしまうのも事実です。
 今回、「フォン・ド・ヴォライユ」を取り上げていますが、これは私の個人的な考えを織り交ぜながらの説明になりますので、「他店のシェフは違う事を言っていた。」や「本当にそれでいいのか?」といった意見は胸にしまっていただきますようお願いいたします。

 「フォン・ド・ヴォライユ(Fond de volaille)」の言葉を分解して解説いたしますと、「フォン(fond)」は「だし汁」の意味を持ち、「ド(de)」は接続詞、「ヴォライユ(volaille)」は家禽の鶏の事であります。
 読んで字の如く「鶏のだし汁」となるわけですが、作る人の考えによって大分変ってきますから、どういったところに焦点を絞るか、が大切になってきます。
 例えば、鶏ガラと丸鶏(バラらされていない丸のまんまの鶏)を入れれば深い味わいになりますし、鶏ガラの臭みを抑えるために長ネギの青い部分とショウガなどを入れてしまうとラーメンスープのようになるでしょう。
 
 私は以前、フォン・ド・ヴォライユに「飲んで素直においしいと思えるコクと深み」を求めておりましたので、鶏ガラと香味野菜の他に手羽先を入れ、取る時間も4時間以上、と他店よりも長めにしておりました。
 勿論、それはそのまま飲んで美味しいもので、今でも「コンソメ・ド・ヴォライユ(鶏のコンソメ)」を取る場合はこれをベースにしております。
 しかし、普段使用するには旨みが強いように感じてきてしまい、現在では鶏と野菜の風味を重視しながらもクリアな旨み、というところに重点を置いて取るようにしております。
 前者と後者の違いは何かと言いますと、前者は旨みとコクを重視していたのでゼラチン質を引き出す必要がありました。ですから、あのように長い時間取っていたわけですが、冷蔵庫で冷やすとブルンブルンに固まるほどでした。後者は、香りとコクはありながらもサラッとした仕上がりになっております。
 では、作り方と説明をしましょう。

    材料(出来上がり8リットル)

・鶏ガラ5キロ(家庭で作る場合は1キロくらいが作りやすい)
・水10リットル(鶏ガラ1に対して水2、位が目安。鶏ガラが1キロに水2リットル、といった感じ。)
・玉葱3個(縦に半分、更に横に半分の4等分にカット)
・人参2本(縦に半分し、更に1センチ幅にカット)
・セロリ大3本(斜めに2センチ幅にカット)
・パセリの茎(あれば)
・ホワイトペッパーのホール(なければ良い)
(注意。野菜類は出来上がり8リットルの場合です。鶏ガラ1キロ、水2リットルの場合は野菜の量を5分の1に設定してください)

   プロセス

「鶏ガラを洗う→鶏ガラと水を鍋に入れ火にかける→野菜を切る→アクを取る→野菜を入れる→アクを取る→濾す」

   解説

・鶏ガラを洗う(現在、鶏ガラはフレッシュで入るので内臓を洗って使用します。その方がよりクリアに取れると思い実践しております。家庭では必ずしも取る必要はないと思います。」

・鶏ガラと水を鍋に入れ火にかける(最初、掛ける火の強さは中火よりやや強めにしております。普段は目分で水を入れますが、出来上がりは必ず8リットル~9リットルです。家庭ではちゃんと測る事をお勧めします)

・野菜を切る(野菜は入れる直前に切るのが好ましいと考えます。切り口から野菜の香りが逃げていく、と考えるからです。切り方としては切り口の表面積が広い方が味と香りが出やすいと考えますから、セロリの香りで鶏の臭みを抑えたいのでセロリの切り口は斜めに切り、断面の表面積を広くしているわけです。)

・アクを取る(鶏のアクがブクブク出ますから満遍なく取ります。勿論、ここから弱火にしてください)

・野菜を入れる(十分鶏のアクを取ってから野菜を入れましょう)

・アクを取る(野菜からもアクが出ますし、鶏のアクもでますので徹底的に取ります。因みに、私は浮いてくる鶏の脂も徹底的に取り除きます。この作業がフォンの味をよりクリアにするものと考えます。これを繰り返しながら2時間半くらい弱火かける。)

・濾す(静かにゆっくり濾すことにより若干出る濁りを抑える事が出来ると考えます)

 当店では、長いと1週間か10日、短いと3日くらいで使い切る量です。家庭では量的に多く作り(水2リットルで作った場合、出来上がりは水の量の10~20%減りますから1.8リットルか1.6リットルになると計算できます)冷ました後、冷凍しておくと便利ですし、無駄になりません。
 スープのベースや煮込みの料理などに水代わりに使用してもいいでしょう。とにかくこのフォンは何にでも使えますので一度作っておいて損はないものでしょう。
 因みに、これに昆布、煮干、生姜、ニンニクなどを加え、再び煮込むとラーメンのスープが出来上がります。

 と、このようになりましたが、如何でしたでしょうか?まっきー様。

 また、ネタ切れの暁にはリクエストしてください。

 お待ちいたしております。



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございます。 (まっきー)
2008-06-20 16:13:03
早速の解説ありがとうございました。

野菜の切り方、投入のタイミングなど、非常に参考になりました。

良く家でチャレンジしてみるのですが、火加減を調整して、クリアにしてしまうとどうしても旨みが感じとりにくく、いつも最終的には白濁鶏がらスープに変身させてしまう事の方が多くなってしまいます。

恐らく、ガラと水の量のバランスが違うのでしょうか?そりゃ、沢山まとめて獲ったほうが良いフォンが取れる気もします。あと、ガラの下処理?でしょうか。あまり水洗いして、内蔵とかを必死にに取ろうとすると、旨みも逃げてしまうものなのでしょうか。

良く家では、リゾットのブイヨンにしたり、鶏がら水炊き鍋、チキンスープ、韓国料理のトックのお出汁なんかに使ってます。

オススメの使い方などあればまた教えてくださいませ。

解説ありがとうございました。ブログ楽しみにしております。
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コメントありがとうございます (マチルダベイ)
2008-06-21 03:22:16
いいえ、こちらこそリクエストくださいましてありがとうございました。
文中にも書きましたが、ウマすぎるフォンよりも、薄く感じるくらいの方が料理に使うには適しているのかも知れません。
ですから、無理に旨みを引き出そう、と考えなくてもいいと思います。
物足りないかと思いますが、意外にそれくらいでいいのですよ。サラッとしていて。
フォンの活用法を、そのうち載せますのでお待ちくださいね。
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ああ (アイ・・)
2012-02-12 20:57:01
・・
藤原さんの料理食べたい...
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コメントありがとうございます (マチルダベイ)
2012-02-12 22:28:58
  >アイ様

お待ちいたしおります。
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