goo blog サービス終了のお知らせ 

ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

ゼラチン質という甘美でエロチックな食べ物

2009-05-22 11:37:48 | Weblog
 先日、「愛」とだけプリントされているTシャツを着ている方をお見かけした事がありましたが、直江兼続効果なのですね。
 今更「天地人」を「あまちびと」と読むような御仁は存在していないと思いますが、そのお膝元の米沢は今、まさに「天地人」景気に湧いているようであります。
 ゴールデンウィークの上杉神社には人が溢れていた、との事を漏れ聞きましたし、平日でも観光客がやって来るそうです。
 上杉城址苑の売店にいたっては1年分の売り上げをこの5月で達成した、という話まで聞こえてきました。羨ましすぎでしょう、その売り上げは。
 当店がそのような状況になったら、迷わず2ヶ月くらい店を閉めて、フランスへ旅に出かけますな。
 しかし、その後、まったくお客様がいらっしゃらなくなったらどうしよう、などという心配事も付きまとうのが飲食業の辛いところ、どうしたらいいのでしょうか?(心配しなくてもそんな事にはならないよ)
 どう考えても「天地人効果」なのでしょうが、5月人形の兜にも「愛」の字が光っているバージョンが発売されておりましたから、テレビの力、というより「妻夫木なにがし」の効果がかなりの部分を占めているであろう、テレビの力は絶大なものです。
 直江兼続=妻夫木なにがしの図式が成立しているのでしょうから、実際の銅像などを見たおば様方は「全然、顔が違うじゃない!」と怒り出すのではないか、と頼まれてもいない事を考えてしまいました。

 さて、話は変わりますが、またもや牛スジ肉が冷凍庫に溜まってしました。いつの間にか溜まってしまい、冷凍庫の4分の1くらい占めている状況に重い腰を上げざろう得ない事になってしまいました。
 「牛スジ煮込みの会」なるものを開催してなくそうか、と4月辺りに考えましたが、そこまでの量もなく、かといって賄いで食べるには多い、というビミョーな量であります。
 そこで、牛スジのゼラチン質を利用して、お得意の「テリーヌ」にしてみたらいかがなものか、と考えた次第です。
 元々は「山形牛」の「ランイチ」と呼ばれるランプとイチボという部位が抱き合わせになっている10キロ未満の塊肉のスジですから、味、風味共に悪くありません。
 今はまだ解凍段階ですが、私が考える作り方はこうであります。

「牛スジの脂を取り除く→熱湯でボイルしてアク抜き→フォン・ド・ヴォライユで5時間くらい煮込む→肉とキュイッソン(煮汁)を分け、キュイッソンを煮詰めて固めるためのゼラチンとする→テリーヌ型に牛スジとレンズ豆を交互に詰め少し冷やしたキュイッソンを流し冷やし固める→マスタードとサラダを添えて提供」

 となります。
 「豚足のテリーヌ」の時もそうですが、なるべく自然のゼラチン質で冷やし固めた方が美味しいと私は考えますので、徹底的に煮て、そのキュイッソン(煮汁)をギリギリまで煮詰め、ゼラチン質を引き出してやるのがポイントになるのではないでしょうか。
 
 ゼラチン質の食べ物は色々ありますが、ネットリととろけるような食感だけではなく、ブリブリの食感のものも美味しく、そして、ワインを誘発させます。
 両者に共通しているのは、口の中に粘りつくようなゼラチン質のエロチックな感覚であり、そしてそれを高めるのはその粘りつく感覚を洗い流すアルコールの甘美なまでのマリアージュであります。
 男女の食事というのは、普段人に見せる事のない口の中をさらけ出す行為であり、そこにゼラチン質のエロチックな感覚が加わると更に雰囲気は高まります。

「コラーゲンたっぷりのゼラチン質のものには肌をツルツルにする効果があるの知ってる?」

 この言葉には、その効果を俺のこの目で確かめたい、という強い欲求が含まれており、男性は一人の女性の前で徐々に「オス」化していくのです。

「ほら、白ワインを飲むと口の中が洗われるでしょう、そして、目を閉じてその香りの余韻を感じてごらん、違う世界が広がるんだよ。」

 口の中が粘りつく、洗われる、そしてまた粘りつく、の繰り返しの中でゼラチンの美学が構築され、そして「オス」化した男はこう発言するでしょう。

「さっきより、君の肌、ツルツルしてきたような気がするよ。」

 そして、それを聞いた女性はこう答えるかもしれません。

「失礼ね!いつも私の肌はツルツルしてます!あ~気分悪い!ワタシ帰る!あんたのウンチクに付き合うのも辛いのよ、まったく!」

 一人取り残され、「オス」化しかけて、しぼんでしまった男性は、周りのお客さんにこう問いかけます。

「やっぱり・・・ダメだったのでしょうか?あれでは・・・」

 周りのお客さんは声を揃えてこう言うでしょう。

「ダメでしょう・・・ねぇ。」

 言葉より「愛」、「愛」ですよねぇ、頭の上に「愛」を掲げないと。というオチでよろしいでしょうか。



















 
 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿