ここ10数年以上、母の頭皮に黒い塊が現れ、
しかも年々広がって、ブラシを使うと引っかかり、
血も出てくるようになってきたようだ。
心配で皮膚科に行った方がいいと勧めていたが、
痛みもないし、たとえ癌であっても、
年寄りは進行が遅いから大丈夫だと言って聞かなかった。
しかし、
月に一度お世話になっている美容院で指摘されたらしく、
角のようになると嫌だからと、
急に病院に行くことを決心した。
3月25日
みなみ野駅近くの皮膚科に行くと
「これは大きな病院でちゃんと検査を受けた方がいい。
私はその病院にいますから、是非受診して下さい。」と
紹介状もいただいたが、
母は「癌ですか。それならそれで良かった、
病院に行く気はありません。」とそのままにしていた。
その後、友人のご主人が近くの皮膚科で
同じような症状で数回通ったら
治ったから行ってみたら?と言われ、それならと
片倉駅の近くの皮膚科に出掛けた。
そこでも、全く同じ、大きな病院で検査を受けるべき、
とのことだった。
4月10日 (木)
東京医科大学八王子医療センターに
9時の予約で出掛けると、
みなみ野で受診した時の先生がいらして
「いやいや、よかった!
皮膚の癌で死ぬなんて事は絶対ないし、
脳の中や他の部位に転移することもないから、
問題はありませんが、
とにかく原因は分かった方がいい・・・」
とおっしゃって、予約を取った。
4月28日(月)
組織の一部を切開
5月7日 (水)抜糸
5月30日 (金)
結果を聞きに伺った
あのお元気なパキパキとした先生が
「手術のことですが・・・」とおっしゃった途端、
母「やっぱり、癌だったんですね。
手術は絶対しません。良かった、先が見えて・・・
耳は聞こえなくなる、目は見えなくなる、脚はヨロヨロ、
こんな状態で150歳なんて生きたら
とんでもないですから・・・」
先生「あのね、どんなに生きても120歳ですから・・・」
母「120歳にしても、人の話に『はあ?、はあ?・・・』
なんて何度も何度も聞き返したり、
テレビを見ても聞こえない、見えない、
どこに行くのも自由に行けない、
癌がなくなってもそんな状態は嫌ですから・・・」
先生「あなたは随分誇り高い人ですね・・・」
母「ほこり?いや、毎日お風呂に入って、頭のてっぺんから
足のつま先まで、よ~~~く洗っていますから、
埃なんてありませんよ。」
私はおかしくて笑っていたら、
側にいらした看護師さんお二人もクスクス・・・
先生「いや、内臓には転移しませんが、
骨の中に深く食い込んでいきますから
悪いものは取って置いた方が安心じゃありませんか。」
母「いや、いいんです。痛くて痛くて我慢出来なくなったら
どんどん痛み止めを注射して
痛みを取り除いてくれればいいんです。
本当は安楽死をお願いしたいんですが、
そうすると先生が捕まっちゃうでしょう?
苦笑いをしながら 「そうですねぇ・・・実は私、
アンチエイジングの研究仲間に入っているんですが、
ご家族皆さんの亡くなられたお年や
原因をお聞きしてもいいですか。」
お話はしばらく続き 最後に
「仕方ないですねぇ。私もちょっと心配なので
来年の4月10日にまた来てもらえますか。」で
この日の診察は終了。
ねぇ、お母さん、簡単な手術のようだし、
受けて置いた方が心配もないし、
後々安心だと思うけれど・・・
と言った私に
あなたは120歳まで生きたい?と問われ
先生に100歳以上生きられますよ、
と太鼓判を押していただいた元気な母でさえ
96歳という年齢は老いを自覚する日々なのだ。
「日々発見」と言うより「日進月歩」なのだそうだ。