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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

鮮血の美学NO.18⇒映画「ダリオ・アルジェントのドラキュラ」(監督:ダリオ・アルジェント)

2014-10-06 | 吸血鬼

■製作年:2012年
■監督:ダリオ・アルジェント
■出演:トーマス・クレッチマン、アーシア・アルジェント、ルトガー・ハウアー、他

レイトショーで上映という公開情報をどこかで知ったものの見過ごしてしまった映画「ダリオ・アルジェントのドラキュラ」を見ました。ダリオ・アルジェント監督と言えば私の世代では「サスペリア」という映画で有名なイタリア・ホラー映画の巨匠です。この巨匠が古典的なドラキュラを撮ったという点にひかれました。思い起こせばその昔、私の年齢で言えば10代の後半から20代前半んかけて、「エクソシスト」から始まるホラー映画は、「オーメン」「ハロウィン」「ゾンビ」「ポルターガイスト」といった映画が次々に公開されました。この頃の私は映画を見に行くということイコール、ホラー映画を見に行くということに近かったように思います。難しいことは考えず、ドキドキしながら画面をながめる、で、そんなのありえないよと突っ込みを入れながら、恐怖をそそるシーンにはそれなりにビックリしたり、ゾーッとしたり。

特に女の子とデートするには、キャーといって腕に抱きつかれたりするので、持ってこいのジャンルであったかと。ただ、なんの映画だったか忘れてしまいましたが、登場する女性のキャラが怖すぎて女の子と映画を見終えて夜の公園に行き二人っきりになったとき、暗がりに浮かぶ目の前の女の子がさっきみたホラー映画の怖い女のキャラとダブってしまい、早る心もどこかに飛んでしまいすくんでしまったという笑い話のような苦い記憶があります。そんな若い頃の時代と結びついているのが私にとってのホラー映画であり、その系譜の中に「サスペリア」という作品もありました。ただ、この「サスペリア」は見たのか見ていないのかその記憶がありません。確か音楽がよくって、その後のこの手の映画に影響を与えたんじゃないかと。

このホラー映画の巨匠であるダリオ・アルジェント監督が撮った映画が恐怖系のジャンルとしては古典的素材であるドラキュラなので、また何で?と思ったのですが。なぜなら、一時のホラー映画はこうした古典的素材をどう否定し乗り越えていくのかという流れにあったからです。いろいろ実験したあげくの古典回帰というやつなんですかね、アルジェントも74歳といいますから。しかし、すごいのはそんな年齢でもホラー映画を作ろうするエネルギーがあることです。私は先程も書いたように若い頃はホラー映画を見ることが多かったのですが、この歳になると血しぶきやエグいシーンにはホントにへきへきしてしまい、そうしたものを基本的には見ないようにしていますから(園子温監督作品もそうした過剰な描写が出てくるのですが、好きではありません)。74歳という、言ってしまえば死に近い年齢にいながら惨殺死体を描くなんて、すごいエネルギーだと思いませんか?私はある種の尊敬の念さえ感じます。たとえ年齢による衰えで演出が陳腐化してようと、たとえテンポが遅かろうと、たとえ押し付けがましくても、俺はこのジャンルの映画で生きてきたんだという気迫というか意気込みを感じます。

このドラキュラ映画はどこか古典的な風合いを持って描かれていました。背景も含め映像の感覚に格調があります。20年前に作られた映画といい放っても、そうなんですね、となるんじゃないでしょうか。シェイクスピア劇を正面から描いたというような印象で、新しいドラキュラ像を目指したというよりは気をてらうことを避けて正面から古典を作ったという感じです。だって、今どきに描かれる吸血鬼は十字架やニンニクに怯んだりしないのではないでしょうか?ダリオ・アルジェントよるこの吸血鬼はそうした古典的な魔除けのものに怯んでいました。ですから、子供の時にテレビで見たクリストファー・リーが主役を勤めたあのドラキュラ映画に近い感覚なのだけど、噂には聞いていたドラキュラが巨大なカマキリに変身するのは、やっぱり笑えました。

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トーマス・クレッチマン,アーシア・アルジェント,ルトガー・ハウアー,マルタ・ガスティーニ,ミリアム・ジョヴァネッリ
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