■日時:2012年1月21日(土)、19:00~
■劇場:吉祥寺シアター
■作:寺山修司
■脚色:岸田理生
■構成・美術:宇野亜喜良
■演出:水嶋カンナ
■出演:毬谷友子、水嶋カンナ、今村美乃、黒色すみれ、他
ProjectNyxによる演劇公演、寺山修司の「くるみ割り人形」を見に行きました。この作品、手元にある寺山修司の戯曲集を見ても見当たらない。当日購入したパンフレットによると寺山修司がサンリオのため人形アニメーションとして書き起こしたが、それが叶わず、岸田理生が浅草版として脚色したもののお蔵入りしてしまった作品であるそうだ。幻の戯曲、それが20数年ぶりに日のめを浴びる初演の処女演劇とか。
美女が一杯登場する女性ばかりお芝居なので当世流行りの女子会版アングラ演劇といった風のお芝居でした。劇団主催の水嶋カンナのコメントを見てもアングラ版宝塚をやりたいとあって寺山修司が主宰した「天井桟敷」直系の劇団「万有引力」などにみられる独特の暗さは薄まっていて絢爛豪華なエンターテイメント仕上げになっていました。勿論、ただでは転ばない寺山修司なので至る所に毒が刺さっています。しかし、視覚的なビジュアルは一部を除き?美女が舞い唄う。衣裳もお洒落で洗練されている。なんといっても美術はイラストレーターの宇野亜喜良なので、その洗練度合いは100%完璧であります。このお芝居の世界がどれだけ宇野の力によって構築されているのかは、全く美術を変えた場合、ここまでアリス・イン・ワンダーランド的な世界と成り得たかは疑わしいと想像すればあきらかでしょう。おまけに役者の動きも計算されており、一冊の大人の絵本を見ているような感覚になりました。
毒というか、とかく人間本位で語られがちななかで、その人間から忌み嫌われる大女優(演じるは毬谷友子)率いるネズミの家族を芝居に導入し、我々は何もしていないのに人間から大虐殺され、だから復讐をするんだという要素の導入は視点の置き換えを迫られ新鮮でありました。しかし、芝居を見ているときはネズミの家族に同情しても、家や職場でネズミが大量発生したら、やっぱり芝居であったようにそれの処理を考え行動してしまうのです。我々人間はどうしょうもなくそのような生き物なのです。そうした矛盾こそが人間かなと…。見ながらそんなことを考えました。
幻の戯曲、そこにはドキッとさせたりホロッとさせるけっこういい台詞がたくさんありました。さすが寺山修司、それはこのお芝居には詰まっていたように思いました。
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