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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

映画「愛のメモリー」・・・<恍惚の視線>デ・パルマ監督NO.7

2013-08-07 | ブライアン・デ・パルマ

■製作年:1976年
■監督:ブライアン・デ・パルマ
■出演:クリフ・ロバートソン、ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド、ワンダ・ブラックマン、他

カメラが旋回します。何度も何度も。慈しみというか祝福というかそんな思いを込めて抱き合う男と女(実は父と娘)カメラが捉えて旋回するのです。ブライアン・デ・パルマの特徴的なカメラ・ワークが、印象深い映画「愛のメモリー」のラストシーンです。それは観客の予測を軽やかに裏切る演出に見る側も予想していましたとばかりで、その長い時間において感情の起伏を盛り上げ、その後は十分に旋回映像で酔いしれてくださいね、という視覚と聴覚に訴えかける映画において、映画とはかく味わうべきとばかり監督の個性が詰まった映像に違いないのです。このカメラが360°旋回する映像はこれまで見てきたデ・パルマ監督の作品の中でも長い部類に入りますし、「愛のメモリー」では他にもカメラが旋回する映像が使用されており、まさに悔恨のムードに包まれたこの作品においては適切すぎるデ・パルマ調のカメラ・ワークのひとつの選択なのでしょう。

 

基本的にはこの「愛のメモリー」はサスペンスの要素を持ちながらも哀愁漂うロマンス的な要素もあり、全般に妻を失ったことへの悔いる感情とせつなさを感じさせる空気が流れています。誘拐された妻を失い、イタリアでその妻とうりふたつの女性と出会い恋に落ちる。見ていてそこに男のエゴとして罪とそれを償う意識はないのかというとそれを思わせる含みもあるし、逆にその似ている女性を一人の女として見ているのか、いや亡き妻とダブらせているのではないかというとそう感じさせるやはり男のエゴを思わせる映像なのです。この事件においては実は黒幕がいて(いかにもあいつが怪しい。そしてやっぱり怪しかったと見る側はなののですが)も、おそらくこうなるのではないかという予測が用意につける、ある意味、わかりやすさを逆手にとった演出がデ・パルマ監督の持ち味とこの映画で認識しました。それに気づいて監督、心憎いねと私などはなるのでした。

 

ところでこの映画はヒッチコック監督の「めまい」の影響を大きく受けていると言われています。きっかけはデ・パルマ監督がポール・シュレイダー監督と「めまい」について談義していたことから始まったそうです。私は以前、そのヒッチコック監督の「めまい」を見たことがあるのですが、すっかり忘れてしまっていて、どこが影響をうけているのかわからずじまいで映画を見終わることとなりました。あれあれ…。

愛のメモリー デラックス版 [DVD]
クリフ・ロバートソン,ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド,ジョン・リスゴー
パイオニアLDC
愛のメモリー Blu-ray
ロバート・S・ブレムソン,ポール・シュレイダー
紀伊國屋書店

 

 

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