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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

僕は知らない寺山修司NO.181⇒劇団☆APBーTokyo演劇公演「盲人書簡」を見た

2011-11-14 | 寺山修司

■日時:2011年11月12日(土)、14:00~

■作:寺山修司

■演出:高野美由紀

■出演:高野美由紀、丸山厚人、浅野伸幸、マメ山田、たんぽぽおさむ、他

 

私の中では特に知人がいるわけでもないのに何度もそこの演目を観劇し、一方的ではあるがすっかりお馴染みのイメージも強い劇団☆APBーTokyoによる寺山修司の「盲人書簡」を見に行いった。さて、この「盲人書簡」は1973年に寺山修司と天井桟敷によって<見えない演劇>として企画され海外で上演された。<見えない演劇>というから劇場は真っ暗闇で、その中で観客はマッチを持たされ見たいところを見るという奇妙な形式で上演されたという。凱旋帰国公演で「盲人書簡・上海篇」として日本でも公演している。寺山修司はこの戯曲を“この上海篇の台本もまた、上演後の形骸である。ヴィデオとテープを参考とし、上演記録から再生したこの台本は、この劇の結果であって、原因ではない。……私たちの演劇とは、まったくべつの読物である”と述べている。

 

私が見た今回の公演は<見えない演劇>ではなく<見える演劇>になっていた。つまり、上演台本をそのまま丁寧に舞台で表現ししていたということだ。しかし、この「盲人書簡」は寺山が別物と称しているように、<見える演劇>としてやるにはもしかしたら無理があるのかもしれないと思った。そもそも、寺山修司の戯曲自体がストーリーは無視、独立したシークエンスの繋がり、それもそれぞれのパーツが二重三重に捻れているので前後の繋がりを見出だすのが難しい構造になっている。よって見ている側からすれば、江戸川乱歩の小説の登場人物、上海というキーワードがあるものの展開に脈絡があるわけではなく、全体としては理解の糸が切れているため、実は後半になるにつれてまったり感が漂ってしまう結果となっていた。

 

もともと初演時では<見えない演劇>として企画されていたものだから、<見える演劇>という通常の形態をとるでのはなく、<見えすぎる演劇>くらいの大胆なメスを入れてもいいように思ったのだ。<見える演劇>として戯曲をそのまま視覚化した場合、正直、私が感じたまったり感は演じる側の問題以上に、先書いたように脈絡のなさをはじめとする理解不能性が戯曲側にあり、戯曲の問題として大きくそこにあるのは間違いないのだから。加えてたとえば、寺山の戯曲がその文章の中にどんなに前衛的な痕跡を残していても、おそらくもう今となっては、寺山が当時見せた問題提議などは陳腐化しており、そこから世界が開いて見えてくるということは難しいのだろうということもある。(とはいいながらも私は寺山修司の言葉に酔いしれてしまうので、もはや置き去りにされた世代になっているのかもしれない)そんなことを、私はこの「盲人書簡」見ながら感じずにはいられなかった。だからでなないが、この戯曲を手掛かりとしながらも、大胆にメスを入れ手法もコペルニクス的展開くらいのアイデアで<見えすぎる演劇>として観客も驚くくらいの改変を施してもよかったのではないか?と思ったのです。

 

外野としての観客は好きなことをいうものだ。わがまま千万なのです。できることできないこと、そんなことを無視していいたいことを言う。ならばお前がやってみろということになったら、できませんと答えるしかないのに。言うは安し行うは難し。今回はそんなような記事になってしまった。

 

◇寺山語録~「盲人書簡 上海篇」より~◇

 

“世界中の電気が消えても、猫が一匹いれば不自由することはないのです。むかしの人たちは、猫の目玉の明るさだけで、百冊の書物を読んだのですよ。それに、わたしは猫の目玉をみがくのがとても好き。あれは、この世で一番小さな鏡なのです。”

 

“世の中の目の数ってきまってるだろ。だから、誰かが目をあけたら、誰かが目をつむらなきゃならん。”

 

“にんげんのあらゆる病気は、記憶を持つことからはじまっているからです。”

 

“ホラ、生まれた!(とマッチを見て)火が生まれた。だけど、こうやると(と吹き消す)すぐ消えてしまう、ほんとにみじかいマッチの一生!一本じゃ「資本論」の一行も読めやしない。(また擦って)でも、このマッチ、支那中の図書館の本を全部焼いてしまうこともできる。国旗を焼くのは朝めし前、国家まるごと火がボウボウ!”

 

※「寺山修司の戯曲6」(思潮社)より引用

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