■日時:2010年11月23日(火)、12:00~
■劇場:国立劇場
■作:近松門左衛門
■出演:市川団十郎、坂田藤十郎、中村梅玉、中村東蔵、他
久しぶりに歌舞伎を見に行きました。やっぱり歌舞伎はいいですね。生の迫力を堪能しました。見たのは国立劇場で上演中の「国性爺合戦」です。こちらは日本のシェイクスピアといわれる近松門左衛門の作で、1715年に人形浄瑠璃として初演され17ヶ月のロングランを記録、翌年には歌舞伎化された近松の代表作にして人気の作品です。
題材は17世紀に実在した人物から、中国人の父と日本人の母との間に生まれ、日本から明朝復興のため中国に渡り清朝に抗戦した人物・鄭芝龍を元にしているそうです。ですからそれは、部隊が日本から中国へと展開し、近松による国際劇の様相を見せています。タイトルの国性爺とは、鄭芝龍が明朝から<国姓爺>と呼ばれたところからきているそうで、姓が性となっているのは、浄瑠璃の内容が史実と異なることから近松が意識的に変えたという。
このお芝居、何度「日本」という言葉が出てきたろう?日本のヒーローが明を救う!といった話なのです。国性爺こと和藤内は、虎をいとも簡単に退治する、中国の兵士が束でかかっても勝てない、腰にさしている刀の重さは重量上げのバーベルのように重たい、超人的な肉体を持っていて、隈取もバッチリの<荒事>の様式で演じられています。見方によれは日本男児ここにあり、日本万歳!ナショナリズム的な内容のお芝居とも見えなくもないです。
しかし実際は、和藤内は純粋な日本人ではなく、中国人の父と日本人の母のハーフなのであります。このお芝居において生粋の日本人は和藤内の母、ただ一人が登場するのみという構造、そこで「日本」の連呼。和藤内はハーフであるという苦悩など臆面もみせず、日本男児としての誇りを持って父の祖国である明のために身を捧げるのであります。先に書いたとら退治の時に見せた「天照大神」のお札に象徴されるように、このナショナリズム的な?お芝居はねじれたナショナリズムを持った近松門左衛門による国際演劇なのでありました。ちなみに、中国人から見た日本人の異様さの表現もあって、その描写が笑えたました。
ところで、和藤内が共闘を甘輝に申し入れ、その結果を鑓り水に流すところ、「紅流し」の場面、そこを見ていて黒澤明監督の映画「椿三十郎」の椿が小川から流れてくる場面を思い出しました。意外と、この「国性爺合戦」の「紅流し」をヒントに黒澤監督は「椿三十郎」のシナリオを書いたのかもしれませんね。
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