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藤波辰爾と長州力、昭和プロレスの最後を飾った2大レスラーです。まさかその2人の名前で新書が出ているなんてびっくりしました。プロレスは私が中学生の時に夢中になってからのファンで、その中学生の時などはプロレス関係のメディアで仕事をしてみたいなんて真剣に思っていたこともあります。だから私はスポーツ新聞社を見学させてくださいと12、3歳くらいのとき編集部に行ってみた記憶があるくらいです。私がそのプロレスを愛してやまなかった時代は、アントニオ猪木率いる新日本プロレスとジャイアント馬場が率いる全日本プロレスが凌ぎを削っていたレスリング・ウォーの最中で最も面白くかった時でした。
ジャイアント馬場側の全日本プロレスは、大物外国人プロレスラーを招聘するいわゆる王道プロレスを展開(=保守)、一方の新日本プロレスは外国人レスラーのルートが弱く企画性と中味で勝負とストロング・スタイルを標榜(=革新)し対抗していました。その中でアントニオ猪木は日本人対決、異種格闘技戦などそれまでのタブーを破ったマッチメークで次々と話題を作り、ファンの興味を掻き立てていったのでした。
その革新的なスタイルが売りの新日本プロレスで、新たに展開した物語が、この本の著者でもある藤波辰爾と長州力の抗争でした。本のタイトルにあるように2人の戦いは名勝負数え唄と呼ばれファンを熱狂させました。私もこの2人の戦いを興奮しながら見ていたくちで、特に「俺は噛ませ犬じゃない!」と噛みついた長州力、パワーホールにのって登場する長州力に痺れていました。だから、この本はスイスイと読めてしまったのです。あのプロレスにとって幸福だった時代を思いだしながら…。
それと目に見える部分だけではなく、彼等はビジネスとてのプロレスに従事した職業人であったわけだし、それぞれが現場はもちろんのこと経営側のトップとしても企業としてのプロレス団体を運営してきた果ての今という自分を語っているため、生きること=仕事をすること=仕事はプロレスという論法で許されるなら、あの時代を熱狂しプロレス観戦していた中年諸氏においても自分の実人生と重ね共感したり勇気づけられることもあるはずだと思ったのでした。なぜなら、たかだか数十年の間に起こったプロレス史における数々の出来事はまるで戦国時代のⅠページを見ているかのようだから。しかし、最後に残るのはいい試合を見せてファンを満足させたか(=現場においてベスト尽くしいい仕事をする)ということなのだ。戦ってきた、そしてこれからも戦おうとする2人の心の叫びを受けとった。中学生のころからプロレスの味方だった私は、どんな小説よりも、どんな映画よりもすんなりと入ってくる言葉に違いないのだ…。
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