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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

鏡花幻想譚への接近#97・・・「陽炎座」を読む

2013-09-05 | 泉鏡花

泉鏡花の「陽炎座」を読みました。これまで泉鏡花小説のについて書いた時に、読みづらい文章で私の読解力はどうなんだろうと不安になるし自身も失うといったようなことを発言してきました。この「陽炎座」も一際難解でやはり同じような現象が起こりました。私はこのように小説に描かれた風景をイメージしているのだが、はたしてそれでいいのだろうかという一抹の不安。そして混乱したままイメージが定まらず読み進めると突然光が射してきっとこうに違いないと思える部分。全く泉鏡花の小説は手強いのです。

 

さてこの「陽炎座」でありますが、ある女性の純な気持ちが裏切られそれがもとで発狂し死んでいった情念が引き金となっているひとつの幻想的な子供芝居(実は妖怪たちと見ることができる)として現出させ、その子供芝居の囃子に引き込まれていくその悲しい女性に縁がある男と女のカップルともう一人、傍観者であり語り部となる男の話がクロスしながら展開します。小説の舞台となるは六道の辻に現れたる芝居小屋、そこはもうこの世の空間の話ではないということでしょう。こちらとあちらの世界の境界に位置しているのだと。そしてそこを繋ぐのが冒頭の第一声にあるように囃子=音楽であり、音の超越性、憑依性といった風なものを想起させるのです。

 

ここではお稲といううら若き女性が婚約を破棄され狂気に陥ったその顛末が大きく影響しているのですが、その辺りの様子を今日で想像してみれば、意外とあっけらかんと別の男に乗り換えていくたくましい現代女性が想像させらるのですが、明治・大正の女性はそうはいかなかったのでしょうね。女性の価値観は大きく変化したのだと思います。大恋愛をしているわけではないし、男に振られたくらいでそこまで思いつめなくてもいいのではないかと思ってしまいまうのですが。子供芝居の役者たちが実は魔界の魑魅魍魎で暗雲立ち込める中雷とともにその芝居小屋が消えてしまうラストは鮮やかですが、ちょっと設定というか構成に難があるように感じました。(しかし、鏡花の小説は読みづらいですね。これ本音です。)

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