■製作年:2002年
■監督:リー・タマホリ
■出演:ピアース・ブロスナン、ハル・ベリー、ロザムンド・パイク、トビー・スティーヴンス、他
この「ダイ・アナザー・デイ」は、007映画にとっては40周年20作目にあたる節目の作品となっています。そのため過去の作品へのオマージュとして様々な部分でそれらが引用されたものがそこかしこにあるようで、私もいくつか見ていて、あれ?これそうかなと思える部分があったのですが、残念ながら細かいところまで見つけたというわけにはいきませんでした。その中でも一番わかりやすいのはNASAの諜報部員ジンクスを演じたハリー・ベリーが浜辺からあがってくるところです。これは以前、ここでも書いたようにサブカルの帝王みうらじゅんが若かりし頃「ドクター・ノオ」の該当する映像を見て熱狂したというところでウルスラ・アンドレスが浜辺からあがってくるシーンの模倣であることは間違いありません。ウルスラ・アンドレスは白の水着、ハリー・ベリーはオレンジと色の違いはあるものの、いずれも甲乙つけがたい魅力的な映像でありました(強いていえば「ドクター・ノオ」の映像の方がよかったかな)。しかし映画の中において登場してからの活躍となれば断然ハリー・ベリーなのでした。彼女はジェームス・ボンドを喰ってしまうほどの存在感と魅力をみせます。さすがオスカー受賞女優というところなのでしょうか。ボンドばりのアクションもこなし、格闘シーンでもすごい、かと思えば、先ほどのようにオレンジの水着ではありますが豊満な肢体を惜し気もなく見せたり、フィットしたボディスーツを着て囚われの美女となったりと八面六臂の活躍だからです。それを見ていると男の視覚的な魅力は一面的になりがちなのですが女の魅力を表現するには多面的で、やっぱり映像に華を添えるなあと思う次第です。
さて今回の舞台は、なんと日本も決して無視できない北朝鮮でありました。そこでは危険な国として描かれており、デストロイヤー(ボンドはやたら破壊するので私はそのように見ているため)としてのジェームス・ボンドは、初っ端からガンガン破壊していきますが、北朝鮮側に捕らえられてしまいます。14ケ月も拘束され、華麗なボンドは髪の毛や髭が伸び放題となりまるでキリストのような風貌になります。こんな状態のボンドは初めてです。一方、北朝鮮側の我が儘放題の将軍のドラ息子、彼は共産主義圏でありながら西洋かぶれであります。ボンドとの闘争で死んだと思われていたのが、実は遺伝子工学の技術で白人の見た目は全く別の人物として生き返っていたという、わかったようなわからない話へ展開します。変身した彼は大成功した実業家としてイギリスの女王陛下に会見したりと華麗で派手な生活を送る一方で、宇宙の衛星から太陽エネルギーを集積しそれを地球へ放射するという技術で、狙いをさだめた地域を宇宙から攻撃し、世界を転覆しようと企む危険人物でもあります。そうなってくるとピアース・ブロスナン版ジェームス・ボンドも、だんだん話がエスカレートしてきていてSFチックな展開となっている模様で、そんなことありえないでしょ感も強くなっています。それゆえ映像はCGを多用したものになり、私のあまり好きではないハリウッド大作映画の様相をみせ、あまりの非現実性にちょっとゲップがでそうになります。意外だったのは、ヘッドマウント・ディスプレイで見るヴァーチャル・リアリティの世界を使ってマニー・ペニーが幻想の中でボンドとキスするのは彼女の欲望を映像化したものとして描かれていおり、これも初物で時代を反映しているのだろうなと思ったのでした。