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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

鏡花幻想譚への接近#80・・・十月花形新派公演「滝の白糸」(三越劇場)

2010-10-12 | 泉鏡花

■日時:2010年10月9日(土)、15:00~

■劇場:三越劇場

■原作:泉鏡花

■演出:成瀬芳一

■出演:市川春猿、井上恭太、市川笑三郎、市川猿弥、他


水がまるで滝の白糸の意思を受けているかのように自在にあちらから、こちらからと華麗に飛ぶ。水を操る滝の白糸の着物もはえる。滝の白糸とは、水を白い糸でもあやつるかのように自在に操る曲芸のこと。華麗な舞台の一場面です。三越劇場で新派による演劇公演「滝の白糸」を見てきました。ボクは同じ「滝の白糸」を同じこの三越劇場で2年前に見たことがあります。その時は劇場がそんなに大きな劇場ではないので、この曲芸はできないということであったかと記憶しているのですが、できるじゃないかと。

 

やっぱり「滝の白糸」はこの曲芸がないとさみしい感じがします。滝の白糸こと水島友が一途な想いで村越欣弥に仕送りをする際、何をもって彼女が体を張って稼いでいたかが、この水芸を見せる場面がないと観客には伝わりづらいだろうと思うから。そしてこの芸が舞台で展開されることで一種の異空間に観客は誘われるわけで。つまり、滝の白糸は非日常的とも言えるあちらの世界の女神のような存在となってくるのだ。

 

このお芝居は、どの場面もさすがに155年前の初演から数えて何度となく上演されている人気演目だけあって隙がない、熟成されている、とてもよかったです。特に見せ場である裁判の場面では泣けてきました。舞台を見ながら涙ぐむことは滅多にないのですが、気丈に尋問する検事になった壇上の村越欣弥とそれを謙虚に受け止める白糸の言葉として現象面には現れない2人だけの心の会話が見事に表現されていて、ボクはグッときてしまったのです。その間、滝の白糸を演じる春猿は、観客席に背中を見せての演技でしたが、そのただずまい、仕草、声どれもが、偶然の事故ながら犯してしまった罪を悔いる悲しみ、こんな残酷な形でしか愛する男に再会できなかった運命の酷さ、あるいはもう会えないと思っていた欣弥に最後にどんな形であれ出会えた喜びなど様々に入り組んだ複雑な気持ちを見事に演じていました。

 


※金沢にある滝の白糸の像

なかなかよかったお芝居でした。来年早々新派は同じ劇場で先般記事にした鏡花の「日本橋」を上演するようなのでぜひそちらも見たいと思いました。

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