行けども行けども

長い間、日本各地、フランスやボストンで教育や、牧会の仕事を担ってこられた
牧師が、この３月で引退辞任されることになった。
臨時総会が終わって帰る道、ぼつりぼつりと歩いた。
おうちだに公園のほうへ行くつもりだったが路地を間違えたのか行けども行けども見知らぬ山道。
鳥の声と渓谷を流れる水の音ばかりで人っ子一人通らない。
栗谷とやらを過ぎたあたりで仕出し屋の車が通ったのでたづねると、
「そっちへ行っちゃいけんやまおくへはいる」と。
引き返して杖を頼りにひたすら歩いていると、自転車の紳士がおりて、ていねいに教えてくれた。
「僕は毎日のように行ってますよ、９０歳８０歳の方も体操やさんぽをしたりして、話も弾むそうだ。
「またあいましょう」と別れた。

”梅は咲いたか桜はまだかいな
山吹き浮気で色ばっかりちょんがいな”

４５年前銀座の室内装飾店に勤めていた頃、同僚のお母さんに教えてもらった
三味線の一節。

やっと着いたおうち谷の梅はまだ蕾が固かった。