'08.08.18 『レス・ポールの伝説』(試写会)@PONYCANYON
シネトレ(いつもありがとうございます!)の試写会に当選。ROCK好きとしてこれは見ないと! レス・ポールとは偉大なギタリストにして発明家。多重録音など現代のレコーディング技術の原型を作った人でもある。そしてGibson LES PAUL! Guitar Kidsなら知らない人はいないというエレキ・ギターの代名詞。ご本人よりも有名かもしれない。私自身ご本人のことはあまりよく知らなかった。
「ロックの殿堂」入りをしているけど、ルーツはカントリー。カントリーはほとんど聴かない。イメージとしてはバンジョーという感じなので、エレキ・ギターがなぜ必要なのかは分からない(笑) でも、後にジャズやポップスへ移行していくことからも、自分のやりたい音楽、自分の出したい音を追求したということか。もちろん売れるという側面もあるはず。今年93歳になったレス・ポールはその辺りも隠さずサラリと語る。
1915年生まれ。音楽活動を開始したのは1930年代。93歳の今も毎週月曜日にニューヨークのイリジウム・ジャズ・クラブでライブを行っている。正直、活動初期の辺りはあまりに昔の話でよく分からない部分が多い。B.B.キング、ナット・キング・コール、ルイ・アームストロングなどのビッグ・ネームにビックリしつつも、いまひとつピンとこない。「White Christmas」のビング・クロスビーですら、ミュージシャンというより映画スターだと思っていたのでビックリ。
とにかく音楽に対する情熱と探究心がすごい。ハリウッドでビング・クロスビーが人気だと聞けば即行動! トリオを結成してアポなしで会いに行く。エレベーターから降りてくるのを待ち伏せして演奏し雇われたなんてエピソードは、もちろん多少の脚色もあるとは思うけれど、活気がありながらもほのぼのしていた古き良き時代の雰囲気まで感じられて楽しい。
93年の人生を90分にまとめるというのはけっこう乱暴(笑) 当然かなり駆け足。めまぐるしく変化していくレス・ポールの音楽人生と彼自身の人生。それを当時の映像と、関係者やミュージシャン、そしてもちろん本人のインタビューを交えて見せる。その見せ方は楽しくて彼らの興奮がそのまま伝わってくる。ただ、結構な速度のカット割なのでボーッと見てると見逃してしまう。特に自分があまり良く知らない時代や内容の話題の時には見失いがち。でも、1人の人物を取り上げたドキュメンタリーとしては丁度良い長さだったと思うし、詰め込みすぎという感じはしない。
妻だったメリー・フォードとのデュオがいい。これは完全にポップス。新しいメンバーを探す中、女性ヴォーカルが欲しいということになり、紹介されたのがメリー・フォード。典型的アメリカン・ビューティーな容姿と素晴らしい声の持ち主。彼女にはポップスがいいということで、次々とポップスの曲を発表。レス・ポールのギターとメリー・フォードの歌が絶妙。普段ポップスは聴かないけど、聴いて育ってきてはいるからやっぱり楽しい。聞き覚えのある曲もあった。年代的に'50~'60年代くらいで、その時代のポップな感じが浮かんでくる。もちろん知らないので想像だけど(笑) 2人は絶大な人気を得るけど、このデュオ最大の功績は多重録音。要するに別々に録音した音を重ねるということ。今では考えられないけど、それまでは違う音程の歌声を録りたければ、その人数分歌手が一緒に録音する必要があったということ。だけど、この方法を使えば高音部も低音部もメリー・フォードの歌声で録音することが可能。今でこそ当たり前のこの技術は当時では大発明。この発明、実は自宅のガレージを改装したスタジオで生まれたというのが楽しい。
知りたかったのはご本人のことはもちろん、多重録音と何といってもGibson LES PAULの事! ソリッド・ギターの代名詞。ギター自体のことはあんまり詳しくないので少々調べてみたところ、ソリッド・ギターとはボディーが空洞になっていないギターのこと。ギターは本来それ自体で響いて音が出るようにボディーが空洞になっている。アンプを通して音を出すこと前提に作られているのがソリッド・ギター。外部から音を出すため大音量で演奏できるし、ボディーも小さく薄く出来る。レス・ポールはまだウィスコンシン州の実家にいた頃に試作し、改良をし続けていた。ギブソン社に何度か売り込んだけれど断られていたそうで、実は先にソリッド・ギターを発売したのはフェンダー。この辺りのことは映画でもサラリと触れている。フェンダーのストラトキャスターといえば、こちらも人気の名器。この辺りのことはとっても知りたかった事だけど「ソリッド・ギターとは」というような前置きつきの説明はない。ギブソンの人のインタビューや、レス・ポールが発明のきっかけや、発想や改良の過程などを語ることが、そのまま説明となってはいるけど、ある程度知識がないとそれとは気付かないうちに終わってしまうかも(笑)
正直、この映画を見ただけでは多重録音のことも、LES PAULについても良く分からない。そして彼本人に関しても全て理解できるわけではない。でも、映画を1本見ただけで理解しよう、させようというのがそもそも無理。この映画で語りたいことはレス・ポールというギタリストの音楽人生。LES PAULにしても多重録音にしてもその一部であり、人生通じてのテーマでもあったということ。そもそも、ドキュメンタリーは主題に興味がなければ見てもあまり面白くないと思う。だから、この映画を見たいと思う人は彼に興味がある人だし、だとすればLES PAULも多重録音のことも知っているハズ。そういう前提で作ってあるのは潔いかもしれない。
B.B.キング、ジェフ・ベック、ヴァン・ヘイレンなどのインタビュー映像は豪華。キース・リチャーズやポール・マッカートニーはイリジウムでのライブに飛び入り。キースとのセッションはいい。キースがステージ去り際に「今日、俺は彼を聴きに来たんだ!」というのがいい。ここの主役は彼ですよということ。ジェフ・ベックの「Happy Birthdayジジイ!」もいい(笑) 2人とも言葉は悪いけど愛情と尊敬が感じられる。
毎週月曜日行っているライブ映像がいい。時々、冗談を交えながらイスに座ってギターを弾く。そのシワだらけの手からつむぎ出される音は、やわらかく美しく、そして若々しい。さすがすばらしい! ジャズアレンジの"OVER THE RAINBOW”がすごく良くて心に染みる。なんとも優しい音色。これはちょっと感動(涙)
さっきも書いたけれど、レス・ポール本人どころか音楽にもあまり興味がない人にはおもしろくないかもしれない。「ロックの殿堂」だけではなく「発明家の殿堂」入りもしている偉大な人物ではあるし、映像的にも楽しいけど、やっぱり音楽に興味がないとよく分からないと思うし・・・。ややテンポが速すぎる気もするけど、神格化し過ぎることなくもなく、きちんと描いていると思う。好きな人はきっと楽しいと思う。
とにかく、今年93歳になったレス・ポールが今も現役でギターを弾いていることこそが奇跡! 彼は生きる伝説だし。彼の音にも姿にも品格がある。それこそが93年の人生がすばらしいものであったことの証し。どうか1日も長くギターを弾き続けて下さい、ジジイ
『レス・ポールの伝説』Official site
シネトレ(いつもありがとうございます!)の試写会に当選。ROCK好きとしてこれは見ないと! レス・ポールとは偉大なギタリストにして発明家。多重録音など現代のレコーディング技術の原型を作った人でもある。そしてGibson LES PAUL! Guitar Kidsなら知らない人はいないというエレキ・ギターの代名詞。ご本人よりも有名かもしれない。私自身ご本人のことはあまりよく知らなかった。
「ロックの殿堂」入りをしているけど、ルーツはカントリー。カントリーはほとんど聴かない。イメージとしてはバンジョーという感じなので、エレキ・ギターがなぜ必要なのかは分からない(笑) でも、後にジャズやポップスへ移行していくことからも、自分のやりたい音楽、自分の出したい音を追求したということか。もちろん売れるという側面もあるはず。今年93歳になったレス・ポールはその辺りも隠さずサラリと語る。
1915年生まれ。音楽活動を開始したのは1930年代。93歳の今も毎週月曜日にニューヨークのイリジウム・ジャズ・クラブでライブを行っている。正直、活動初期の辺りはあまりに昔の話でよく分からない部分が多い。B.B.キング、ナット・キング・コール、ルイ・アームストロングなどのビッグ・ネームにビックリしつつも、いまひとつピンとこない。「White Christmas」のビング・クロスビーですら、ミュージシャンというより映画スターだと思っていたのでビックリ。
とにかく音楽に対する情熱と探究心がすごい。ハリウッドでビング・クロスビーが人気だと聞けば即行動! トリオを結成してアポなしで会いに行く。エレベーターから降りてくるのを待ち伏せして演奏し雇われたなんてエピソードは、もちろん多少の脚色もあるとは思うけれど、活気がありながらもほのぼのしていた古き良き時代の雰囲気まで感じられて楽しい。
93年の人生を90分にまとめるというのはけっこう乱暴(笑) 当然かなり駆け足。めまぐるしく変化していくレス・ポールの音楽人生と彼自身の人生。それを当時の映像と、関係者やミュージシャン、そしてもちろん本人のインタビューを交えて見せる。その見せ方は楽しくて彼らの興奮がそのまま伝わってくる。ただ、結構な速度のカット割なのでボーッと見てると見逃してしまう。特に自分があまり良く知らない時代や内容の話題の時には見失いがち。でも、1人の人物を取り上げたドキュメンタリーとしては丁度良い長さだったと思うし、詰め込みすぎという感じはしない。
妻だったメリー・フォードとのデュオがいい。これは完全にポップス。新しいメンバーを探す中、女性ヴォーカルが欲しいということになり、紹介されたのがメリー・フォード。典型的アメリカン・ビューティーな容姿と素晴らしい声の持ち主。彼女にはポップスがいいということで、次々とポップスの曲を発表。レス・ポールのギターとメリー・フォードの歌が絶妙。普段ポップスは聴かないけど、聴いて育ってきてはいるからやっぱり楽しい。聞き覚えのある曲もあった。年代的に'50~'60年代くらいで、その時代のポップな感じが浮かんでくる。もちろん知らないので想像だけど(笑) 2人は絶大な人気を得るけど、このデュオ最大の功績は多重録音。要するに別々に録音した音を重ねるということ。今では考えられないけど、それまでは違う音程の歌声を録りたければ、その人数分歌手が一緒に録音する必要があったということ。だけど、この方法を使えば高音部も低音部もメリー・フォードの歌声で録音することが可能。今でこそ当たり前のこの技術は当時では大発明。この発明、実は自宅のガレージを改装したスタジオで生まれたというのが楽しい。
知りたかったのはご本人のことはもちろん、多重録音と何といってもGibson LES PAULの事! ソリッド・ギターの代名詞。ギター自体のことはあんまり詳しくないので少々調べてみたところ、ソリッド・ギターとはボディーが空洞になっていないギターのこと。ギターは本来それ自体で響いて音が出るようにボディーが空洞になっている。アンプを通して音を出すこと前提に作られているのがソリッド・ギター。外部から音を出すため大音量で演奏できるし、ボディーも小さく薄く出来る。レス・ポールはまだウィスコンシン州の実家にいた頃に試作し、改良をし続けていた。ギブソン社に何度か売り込んだけれど断られていたそうで、実は先にソリッド・ギターを発売したのはフェンダー。この辺りのことは映画でもサラリと触れている。フェンダーのストラトキャスターといえば、こちらも人気の名器。この辺りのことはとっても知りたかった事だけど「ソリッド・ギターとは」というような前置きつきの説明はない。ギブソンの人のインタビューや、レス・ポールが発明のきっかけや、発想や改良の過程などを語ることが、そのまま説明となってはいるけど、ある程度知識がないとそれとは気付かないうちに終わってしまうかも(笑)
正直、この映画を見ただけでは多重録音のことも、LES PAULについても良く分からない。そして彼本人に関しても全て理解できるわけではない。でも、映画を1本見ただけで理解しよう、させようというのがそもそも無理。この映画で語りたいことはレス・ポールというギタリストの音楽人生。LES PAULにしても多重録音にしてもその一部であり、人生通じてのテーマでもあったということ。そもそも、ドキュメンタリーは主題に興味がなければ見てもあまり面白くないと思う。だから、この映画を見たいと思う人は彼に興味がある人だし、だとすればLES PAULも多重録音のことも知っているハズ。そういう前提で作ってあるのは潔いかもしれない。
B.B.キング、ジェフ・ベック、ヴァン・ヘイレンなどのインタビュー映像は豪華。キース・リチャーズやポール・マッカートニーはイリジウムでのライブに飛び入り。キースとのセッションはいい。キースがステージ去り際に「今日、俺は彼を聴きに来たんだ!」というのがいい。ここの主役は彼ですよということ。ジェフ・ベックの「Happy Birthdayジジイ!」もいい(笑) 2人とも言葉は悪いけど愛情と尊敬が感じられる。
毎週月曜日行っているライブ映像がいい。時々、冗談を交えながらイスに座ってギターを弾く。そのシワだらけの手からつむぎ出される音は、やわらかく美しく、そして若々しい。さすがすばらしい! ジャズアレンジの"OVER THE RAINBOW”がすごく良くて心に染みる。なんとも優しい音色。これはちょっと感動(涙)
さっきも書いたけれど、レス・ポール本人どころか音楽にもあまり興味がない人にはおもしろくないかもしれない。「ロックの殿堂」だけではなく「発明家の殿堂」入りもしている偉大な人物ではあるし、映像的にも楽しいけど、やっぱり音楽に興味がないとよく分からないと思うし・・・。ややテンポが速すぎる気もするけど、神格化し過ぎることなくもなく、きちんと描いていると思う。好きな人はきっと楽しいと思う。
とにかく、今年93歳になったレス・ポールが今も現役でギターを弾いていることこそが奇跡! 彼は生きる伝説だし。彼の音にも姿にも品格がある。それこそが93年の人生がすばらしいものであったことの証し。どうか1日も長くギターを弾き続けて下さい、ジジイ
『レス・ポールの伝説』Official site