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本社機能は小さいほど良いは嘘?

2016-08-11 20:24:18 | 折々の随想
今読んでいる、森川正之著 「サービス立国論」によれば、間接部門の最たるものとしての「本社機能」の縮小が組織全体の効率化につながるとの認識はどうやら誤りらしい。

彼が行った日本企業の大規模なパネルデータを使用して行った分析によれば、総務・経理・人事といった本社機能部門の従業者比率が高いほど、企業全体の生産性が高いという明瞭な関係があったとのこと。そして、本社機能部門が大きい企業でのみ、情報ネットワークの活用が生産性に対してプラスの効果を持っているらしい。

これには驚きました。

もちろん、筆者の長年の経験から本社部門でも、ともすれば冗長的な仕事を抱え込んでいることは多々ありましたが、それは製造部門など直接部門でも同じことです。だとすれば、本社機能部門の何がその企業全体の生産性の向上に寄与しているのかが考えどころですね。

例えば経理の仕事を考えれば謎が解けるかも知れません。

私自身は経理部門に所属したことはありませんが、頻繁に経理部門との調整を余儀なくされました。特に、新製品発売の際の値段の決定、営業のインセンティブプログラムの策定、そのためのITシステムの改変、売り上げや利益管理の従来システムへの取り込みなど、まさに扇の要のような部分を、実は経理部門が握っておりました。

経理部門を無視しては、いかなる新製品もこの世には出せませんでした。いや、強引に製品を出すことはできるかも知れませんが、その後の「後始末」に膨大な時間を要して、結局はその新製品の発売の継続は頓挫せざるを得なくなり膨大な損失を被ることになるのは自明のことでした。

こうした点を無視して、間接部門を減らして身軽になると称して、本社機能部門の人員を一方的に減らした時の弊害というものは実に大きなものでした。減らすのは結構なことですが、減らすにしても会社のオペレーションにとってどうしても必要な機能まで削ることはできないのです。その分をITシステムで補完するとか、冗長な業務部分を簡略化し同じ結果を導き出すとか、様々な対応を準備していないと、とんでもない事態に陥るのは必定ですね。しかも、どこが冗長なのか、何かに代替えできるのか、あるいは、システム化により効率を上げることができるのかなどについては、会社全体のオペレーションやIT化の最新情報などにも精通していなければなりません。

物事を単純化して考えることの危険性がここにもありそうです。
コメント
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