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[パソコン遠隔操作] 事件弁護士、警察とメディアの二人羽織に憤激(取調べの可視化を要望) 

2013-03-04 | Weblog

事件:

「愛知県豊田市の会社のパソコンを利用して犯行予告のメールを送りイベントを妨害したとして威力業務妨害の疑いで逮捕・勾留されていた片山祐輔氏について」

東京地検は3/3日、処分保留として片山祐輔氏を釈放した。続いて、警視庁など4警察によるPC遠隔操作事件の合同捜査本部は、かつて大阪府警が誤認逮捕した2件について、偽計業務妨害とハイジャック防止法違反の疑いで再逮捕した。

検察の対応を評価:

弁護人の佐藤博史弁護士は処分保留となったことについて、「現時点では起訴できる証拠はない、ということ。検察は正しい判断に一歩近づいた」と評価。「冷静に考えれば、検察は決して警察に同調していない。今日、処分保留になったことがそれを示している」として、検察の対応に期待を寄せた。

そのうえで、「録音・録画をして、しっかり取り調べを行って欲しい」と、改めて要望したことを明らかにした。

警察の姿勢を批判:

一方、捜査関係者や警視庁幹部が匿名で、「弁護士に励まされているうちに、自分が無実だと思い込んだのではないか」「今回も誤認逮捕というなら真犯人からのメールが逮捕以来途絶えていることをどう見ればいいのか」などと、新聞報道の中でコメントを発信していることに対しては、

「いったい何を考えているのか」「真犯人からのメールは1/5以降途絶えているのではないか」「こういう馬鹿なことを言う人が幹部というのはとんでもない」となどと憤慨。「鯛は頭から腐るというが、警察組織はおかしくなっている」と厳しく批判した。

また、「ウィルスの痕跡や通信履歴など客観証拠を積み上げれば有罪は揺るがない」という警察幹部のコメントに対しても、

「誤認逮捕の時も、それなりの客観証拠はあった。その客観証拠を被疑者に突きつけて、反論や弁解を聞くべき。言い分も聞こうとしないで、有罪に持ち込もうなどとありえない。目の前にいる被疑者が真実を知っている。その言い分に冷静に耳を傾けるべき。そうではなく自白を取ろうというのは間違っている、というのが足利事件の教訓だったはず。(警察にとって)有力な情報があるのは認めるが、それを1つひとつ本人に当てて聞いていけば、犯人ではないと分かるはず。取り調べもやらないのは、職務放棄だ。しかも再逮捕までして煽っている」と強く反発した。

マスコミは「あるべき報道に戻れ」:

さらに、一連の報道や記者の姿勢について、次のように厳しく批判した。

「最初に大げさに報道され、報道の責任を言ってきたが、このあたりで冷静になって、本来あるべき報道の姿勢に戻ってもらいたい。自分がペンやマイクを握ることにしたのは何をやるためだったのかを思い出してもらいたい。君たちは、まるで彼が無実であるということを証明しろと言わんばかりの態度ではないか。反省するべき」

そのほかの弁護士発言:

米国サーバーの「痕跡」に疑問

Dropboxの米国のサーバーに、問題のウィルスが保管されており、そこに片山氏の派遣先のPCで作成した「痕跡」が残っていると報じられていることについて、佐藤弁護人が聞いても、「全く分からない」と首をひねるばかりだという。

「米国のサーバーにあったウィルスと、日本で遠隔操作されたPCに残っていたウイルスは完全に一致しているはず。米国で『痕跡』が見つかったというが、なぜ、日本で遠隔操作されたPCから、その『痕跡』が見つからないのか」と疑問を呈した。

「彼(片山氏)は、C#でプログラムが作成できないだけでなく、Visual Studio 2010というプログラム作成に必要なソフトもインストールしていないし、使ったこともない」という点を挙げ、彼がウイルス作成に関わっていないと強調した。また、彼が職場以外で使っているのは、自宅に自作のデスクトップPCがある以外は、スマートフォンとiPadで、ノートPCは持っていないことを明かした。

本人は「処分保留になってよかった」

佐藤弁護士によれば、逮捕状を執行した警察官は関西弁とのこと。この2件は大阪府警が取り調べを行いたいらしい。ただ、片山氏は「身に覚えがありません」と述べ、弁解録取書の作成には応じたが、録音・録画がなされない取り調べには応じない旨を告げると、警察官はすぐに留置場に戻す手続きを始めた、という。

片山氏は、弁護人に対して「処分保留となったのはよかった」と述べ、落ち着いて受け止めたようだった。数日前までは「3月3日が限度です。気付いたら独り言を言っていたり、床や壁を叩いたりして留置場の係官に注意された」と語るなど、精神的に疲弊している状況だった。しかし、再逮捕後の接見では「あと20日が限度」とは言うものの、動揺はなく淡々としていた、という。

 

本文参考:

江川紹子、ジャナリスト、早稲田大学政治経済学部卒。神奈川新聞社会部記者を経てフリーランス。司法、災害、教育、カルト、音楽など関心分野は様々。著書『人を助ける仕事』(小学館文庫)、『勇気ってなんだろう』(岩波ジュニア新書)など。

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