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[国際競争] 語学力、井のなかの日本人によく効く最適な英語学習法(その2)

2013-02-03 | Weblog

 

最新の脳科学研究で次のようなことが分かった。バイリンガルの脳は、言語ごとの「ことば回路」が一つずつ別になっていて、仮に一つが損傷しても、もう一つが生き残るが、日本語だけで生活している人は、その回路が傷ついてしまえば言葉を完全に失う危険があるという。つまり、英語を話せる回路を持っていれば、理論上は失語を免れることができるというのだ。

この理論に従えば、脳は新言語の習得と共に活性化し、成長する生命体であるようだ。この研究の裏付けとして、バイリンガルの脳は一つの言葉しか話せない人と比べて、脳の病気(アルツハイマーなど)の進行も遅いという。

また、文法力を問うテストにおいてもバイリンガルの方がいい結果を出しているのだ。

このように、外国語学習には脳の活性化や、筋道を立てて考える論理力などを鍛える効果があるようだ。ただ、今まで「外国語を積極的に学ぶ」=「脳を健康にする」ということはあまり強調されてはこなかった。

英会話が脳にいい理由をまとめると、「瞬発力を問うもの」だからである。英会話はキャッチボールのように展開される脳のスポーツだと言っていい。

投げられた言葉の玉は「瞬時に」打ち返さなければならないし、自分からも継続的に投げて行かねばならない。言葉は感情と連動するため、相手に言われた言葉で気をよくしたり、悪くしたりと、感情を伴った変化球もある。そういった、脳に汗をかく活動が非常に脳にいいのだ。

:日本語の構造の落とし穴

日本人は文字を見て、そこから絵を想像するのが得意だ。

例えば、中華料理のメニューを見て、「蠔油牛肉」という文字列があれば、たとえ、中国語の正式な発音なんか分からなくても、「オイスターソースで炒めた牛肉の料理」であるとおぼろげにもイメージできる。漢字の意味(論理脳=左脳)を通過して、そこから立体イメージを浮かべる(=右脳処理)という順番だ。

一見、ここに何も問題がないと見える。しかし、実はこの「当たり前」に大きな問題がある。外国語学習という側面からみて、外国語と日本語の大きな違いは、日本語が「一言も口で音を出さず」に、そして「本物の音を聞かず」して意味だけが分かってしまう言語ということである。

実際、「蠔油牛肉」が中国語でどう発音するかまで掘り下げて知ろうとする人はあまりいないだろう。日本人は漢字という文字を見ただけで全体像が分かって安心してしまうが、本物の音がついていなくても文字で吸収できてしまうところが実は日本語の怖いところなのだ。

例として、中国語を知らない日本人に、中華料理店で「Háoyóu niúròuはいかがですか。」とお薦めしてみても、「オイスターソース炒めの牛肉」は全く想像できないだろう。音を優先させなくても意味がわかればいいという思考のままでは、絶対に外国語が「話せる語学」にはつながらない。日本人が英語をはじめとする外国語を学習する上での大きな落とし穴だ。

音だけを聞き、イメージを膨らませることを日本人は一番苦手としている。だからこそ、日本人は最も英語学習において、今までの視覚に頼りきった学習法とは真逆の「音を聞くこと」を何よりも優先させて、強くイメージを浮かべる流れに持っていくべきなのだ。

:表音文字と表意文字の違い

音重視の学習方法が外国語学習においていかに重要か。

ある音を聞き、似たような音の言葉を2,3思い浮かべてみると面白いことがわかる。

例えば、Fluent(流暢な), flood(洪水), flag(旗) というようなFl−の音の連続に、「よどみなく流れる感じ」がイメージできるようになればしめたものだ。そうすれば、Flute(フルート)というのも、音が流れ出る感じがするし、トイレの水を流す際に使うFlushも同じfl-音のファミリーに属することが感覚としてわかってくる。

このように、英語は表音言語で日本語は表意言語と言語体系が異なる。だから、英語に対応するときは日本語とは違い、音にこだわりを持ち、文字だけを見て分かったつもりにならないよう、意識してみると良い。

小さな意識化を続けて無意識に至るまでやり続ければ、あなたはそこで自然にどんな言葉でも操れるようになる。

:想像力を脳の活性化の起爆剤にする

語学学習において重要な、想像力=創造力を再活性化させる方法をご紹介したい。

昔は大喜びしていたことも、今は新鮮味が全く感じられないということもあるだろう。感動する心が鈍くなってしまうのが記憶力衰退の原因だ。「あっ、そんなこともう知ってるよ。」と侮る気持ち。これが、脳に新しい刺激を入れるのを阻止し、まだまだ活性化できるはずの脳の成長を阻む原因なのだ。知ったかぶりをすることは学ぶ心をも奪ってしまう可能性がある。

歳を重ねれば、経験も増す。だから、脳は「予定通りの所作」に慣れっこになってしまっていて、多少の変化くらいでは驚きもしない。だからといって経験豊富な大人が、度肝を抜く驚きを作れないということでは決して無い。

我々の脳の驚くべき機能のひとつに「異物同士を組み合わせる力」すなわち、「想像力」がある。

想像力は「一見引き合わない対極に位置する物同士の足し算」をも可能にしてしまう。「甘い」と「しょっぱい」をうまく組み合わせた「塩キャラメル」が大ヒットしたのも、対極する物同士が上手にマッチングしたいい例だ。

対極する物同士の組み合わせは、いつもうまく融合するとは限らない。例えば、「黒いコーラ」に「白い牛乳」を混ぜると、飲んだことすらないのに、とんでもない味が想像できる。記憶力をより向上させるには、自分でもおかしいなと思うくらいの「強烈なミスマッチ」を浮かべれば、忘れたくてもそう簡単には忘れられない。想像力を司る右脳の可能性は偉大だ。

これからは、対極の物を思い浮かべブレンドさせてみよう。既知の物同士のありえない組み合わせ(=俗に言うところの形容矛盾)を皮切りに、新イメージ、新味覚、新触覚、新感情を開花させ、右脳をフル回転させてみるのがいい。ここまで複雑な作業は感情の無いコンピューターにはできない。右脳に眠る類推力を眠らせたままにしていては実にもったいない。

いままで当たり前に通りすぎてきたことに、真逆の角度の刺激を与えてみることで記憶力=想像力=創造力を再活性化させる。そして外国語学習に積極的に応用する。いままでやっていた英語学習法を根本的に変えてみる。(今も)拒否し続けていることにも、あえて手を出してみる。脳を変えてあなたを変えるのだ。

 

 


[国際競争] 語学力、井のなかの日本人によく効く最適な英語学習法

2013-02-03 | Weblog

 

欧米人の思考法「直線思考」を手に入れる

欧米人の思考法は、一般に「直線思考」と呼ばれる。主張したい意見がはっきりあって、ストレートな直線を描いて聞き手に伝わる。この直線思考は、言語を始めとして、欧米の実生活のあらゆる場面でも見られる基本の考え方だ。

例えば、直線思考が“食”の場面に現れる例として、フレンチのコース料理では、前菜、スープ、そしてメインディッシュ、そして最後はデザートという並びで料理が順番に運ばれてくる。

私が活動の拠点とする欧米・カナダモントリオールにある寿司レストランでも欧米式で、お寿司を注文すると、まずは味噌汁だけが出てくる。味噌汁を飲み終えてからでないと、お寿司は出て来ない。日本であれば、通常、ご飯と味噌汁などの汁物は一緒に出てくるはずだ。

行動のパターンで見たこの直線思考が言語にはどう反映されているのだろう。欧米言語の中でも英語は特に直線思考が強く反映され、逆に日本語は直線思考を避ける傾向にあるという。カプラン(1966)は英語の直線思考を他の言語と比べて以下のように示したので紹介してみよう。

カプランの仮説:使う言語が違えば思考法も異なる

カプランは、使う言語によって思考パターンが違うと説いた学者であり、言語と思考の違いが文化の違いに関係していることを積極的に明らかにしようとした。彼の論文に出てくる言語別・思考回路の図を見てみよう。



ここでは、Semiticはアラビア語を代表、Orientalは日本語、Romanceはフランス語を便宜的に各言語をグループとした代表例として挙げてみる。図をみると、英語は他の言語グループと比べて、圧倒的に直線思考であることが分かる。英語は、“言いたい内容に迷いがない言語”もっと言うならば、いつ、どこで、誰が、何をどうしたかがはっきり分かる言語だということだ。

一方、オリエンタル思考は、考えがグルグル渦を巻いていて、論点が見えにくい。こと日本人は文章を構成する際、結論から書き始めることを苦手とする。単刀直入を嫌う傾向があるために、さほど結論には関係ないような枕詞の導入をクッションにして、ジワジワと結論に持って行く言い回しを良しとする傾向が強い。

英語を効率的に学ぶには、英語話者の思考法を手に入れるのが一番いい。左から右へと順を追うように直線を意識して、情報を頭から順番に追っていく事。これを身につけなければ、日本語の思考回路のまま英語を学ぶことになってしまい、非効率極まりないのだ。

分けることは分かること

まず、言語習得を効率良く行うための方法として考えたときに、仮説の一つに次のようなものがある。それは、短い文章をまず習得し、だんだんと追加情報を足しながら、複雑な事が言えるようにしていくメソッドである。このメソッドを言語学の世界では、チャンク&リンケージと呼ばれる。小さな意味のユニット(=チャンク・意味の塊)を作り、その小さな塊をどんどんつなげて(=リンケージ)文にして行く作業のことを言う。

文作りとはチャンクとリンケージのパッチワーク(つぎはぎ)である。

だから、これからは、いっぺんに長い文を話そうとするのはやめて、チャンク&リンケージを心がけたい。

大きなステーキを丸ごと一枚いっぺんに食べられないように、細かくナイフで切り分けて、すこしずつ順番に口に運ぶ。分ける=わかるをイメージして欲しい。

チャンクを順番に並べてリンケージする

ここから、ナイフで言葉を小さな意味の塊に分けて、頭から消化していこう。ここから、認知言語学の世界でよく使われる“Completability”という概念を新たに導入してみる。日本語にあえて超訳すれば「意味のスッキリ感」という意味だ。

例えば、I went to the USA. アメリカに行った。(まず小さなチャンクを作る)ここで、意味に曖昧さが残るのであれば、なんとかスッキリさせようと、更に別なチャンクを足し算(リンケージ)してみる。

to study English (英語を勉強しに:別な小さなチャンクを追加する)

文を作るプロセスとして、まず、小さい塊を作って(I went to the USA)、それで言い足りずスッキリしなければ、また小さい塊を足して行く(to study English)という具合だ。とにかく、左で塊を作り、また、右に塊を作り、それを順番に足し算(リンケージ)する。このようなパッチワークのような作りは効率がよく、練習すればすぐにできるようになる。

なりきることが大事

海を目の前にして、海に入らずその脇でフォームだけ練習してては当然のごとくいつまでたっても泳げるようにならない。言葉もチャンク&リンケージという“理屈”が分かっても、実際に言葉の海の中に飛び込んで使ってみなければ意味が無い。実践すること、どんどん自分でリハーサルすること。これが本当に大事なのである。

日本人は概して、抽象的なものを高尚なものだと考える傾向が強いという。何を言っているかがわからない、煙に巻くような文章をかっこいいと思うのかも知れない。しかし、英語圏では逆だ。何を言っているかわからない人は、やはり“変な人”でしかない。英語を話すということは、曖昧感が消えるまでスッキリした文を作ろうとする「直線思考」を手に入れなければいけないことを意味しているのだ。

CNN,japan (文)溝江 達英 カナダ ラヴァル大学文学部日本語科主任 
早稲田大学第一文学部、一橋大学大学院言語社会研究科を経て、カナダ ラヴァル大学文学部言語学科博士課程修了。言語学博士(Ph.D) 英語スピーチコンテスト優勝経験を持つ。英語に加え、仏、独、西、伊、露語も堪能な言語学者である。