苔玉
晴れ、28度、85%
深い緑の苔が好きです。日本の家の庭にある蹲いの石には、小さい頃は苔が生していました。小さな池の側、古い梅の木の下にあるその石は手水にも使いますが、石そのものの形よりも苔に心奪われていました。庭の手入れを顧みなかった母が逝く頃には、庭は鬱蒼とした荒れ果てた庭に成り果てました。この蹲いの石はカラカラに乾いて苔が付いていたことなど誰も分からないほどになりました。
子供心に何故苔が好きだったのか、きっとあの緑の色と苔の姿に魅かれていたのでしょう。「苔玉」が日本で流行り始めたのは数年前でしょうか、丸い苔ボールにいろんな植物が植えられています。その形のかわいいさ、手頃な大きさに思わず手が出ます。
日本の流行は、時間をかけて香港に上陸して来ます。先日訪れた太子の花市で、「苔玉」を見つけました。苔玉を売っている店は日本の園芸店とつながりがあるようです。日本人のスタッフの人を見かけます。花のスペースの奥には珈琲のコーナーまで出来ました。店を入った途端、まるで日本のお花屋さんの雰囲気です。日本からの鉢植えの珍しい木も置かれています。 黒松の盆景は日本円にして20万円を超す値がつけられています。この黒松の根本にも苔が生しています。苔だ盆景だというと侘び寂びの世界ですねといわれそうですが、そんな小難しいことではなく、苔を見る、盆景の姿を楽しむ取りも直さず心が和むことではないかと思います。
香港人の若いお嬢さんがこの苔玉を何枚も写真に収めていました。そして顔を上げてにっこりします。レンズを通してみる苔玉に何かを貰ったような顔でした。
私、大きな苔玉を計画しています。手になんて乗りそうもありません。家の庭にある蹲いの石にもう一度苔を生やすつもりです。時間も知恵も必要ですが、昔のあの緑を取り戻したい一心です。 それまでは蔦で我慢してください。