晴れ,28度、86%
香港に来て以来,春の種蒔きは日本よりひと月早く,4月の初めにします。今年は,やや気温の上昇が早かったので3月の終わりに種を蒔きました。いつものように,バジルに紫蘇にパセリにルッコラ、今年初めて小さなピーマンの種も蒔きました。種蒔くときは,秋口の成長した緑を思い浮かべながら蒔きます。冬の間伸び切ったプランターのミントの整理も考えていました。
一週間もすれば,ポツポツ芽が出始めます。最初に目を出したのが意外にもルッコラ、いつもならバジルです。バジルはかれこれ30年近く毎年蒔いてきました。バジルソースを作るためです。今年のバジルの種はオーストラリア産の昨年の残り物、芽吹いて来た数も思いのほか少なく,やや貧弱な芽です。急いで新しい種を蒔けばよさそうなものを、5月の初めには6日ほど家を空ける旅行が控えていました。留守の者に出たばかりの芽の管理は頼めません。貧弱なバジルの芽にしっかり育って欲しいと願いました。
6日の旅行から戻って見ると,どの苗もまあそこそこに順調に育っています。小さなピーマンの苗はすくすく。バジルはやはり力ありません。もう新しい種を蒔くには気温が高すぎます。たった4本のバジルの苗の力を信じるしかありません。と,ローリエの枝を見ました。ローリエの新芽はあの深い緑とはかけ離れて優しい黄緑です。遠目には薄緑の花にすら見えます。出かける前は,そんな状態でした。ところが新芽も去年の葉にも黒いカビのような物が付いています。カイガラムシが付いたようです。たった6日の間のことですが,木全体が元気ありません。根本を揺すると,パラパラ葉がこぼれました。考えに考えて,殺虫剤を使うことにします。出来るだけ使いたくない殺虫剤です。ハーブは料理に使います。口にする物に殺虫剤はどうかなと考えます。でも,木の弱り具合は甚だしく,見るも無惨です。殺虫剤をまいたらごっそり葉が落ちました。裸木に近くなりました。
春の日差しの中,惨めなローリエが可哀想で仕方ありません。ローリエの力を信じようと思います。植物が元気をなくすと,いつも祈るような気持ちでそのものの持つ力を信じようと思います。
あれからふた月、裸のローリエに 新芽が吹き始めました。優しい黄緑の新芽です。この暑さに堪えられるか,ともあれ、木がすっかり枯れることだけは免れたようです。やれやれ。
4本のバジルは,小ぶりながらこの暑さに向けて大きく成長し始めています。ミントの脇に押されるようにそれでもしっかり上に伸び始めています。
秋に蒔いたイタリアンパセリは花を付けました。もう葉っぱはいい香りがしなくなっています。種を穫って,また秋に蒔きます。一昨年、急に葉が落ちたオリーブは今年は次々に新芽を付けています。このオリーブは我が家にやって来る鳥たちの大事な止まり木です。
3月にお見せした,リンゴの苗は 空調の効いた涼しい部屋で育っています。リンゴの中の種からこんなきれいな緑を見せてくれます。
初めて蒔いた小さなピーマンの苗も、 こんな花をつけてくれました。この花とイタリアンパセリの花にミツバチがやって来てくれています。
ローリエの緑が少ないのですこし寂しい我が家の緑ですが、心配で心が苦しかったこのふた月,やっと重荷が下りました。ガラスのドームな中の杉苔は,見事に成長を続けています。このドームの中は,小さな小宇宙のような気がします。