曇り、17度、63%
随分前に日本でも、ワイヤ−で出来た人形やバスケットなどが流行っていたことがあります。その頃、香港にフランスから実に繊細な細工のワイヤーのバスケットやカードホールダー、ろうそく立てが入ってきました。アンティークではありません。パリにあるフローリスとのクリスチャントルチュでも扱っていた、ワイヤー細工です。香港でも、クリスチャントルチュと提携していたジョイスのフラワー売り場に売られていました。小さいものは手のひらの大きさのケーキスタンド、大きいものは私の背ほどもある鳥籠です。ワイヤーといっても随分といい値段のものでした。少しずつ少しずつ買い集めました。
そんな中のひとつが、 上から見るとこんな格好の花留めです。ワイヤー細工は、置物ではありません。実際に使うことを目的に作られているものです。当時求めてワイヤ−のものたち、しっかりと我が家で仕事をしています。ところが、この花留めはすっぽり入る大きさの花器が我が家にはありません。入っても高さが足りなかったり。
見てるだけでも、形がいい花留めです。それでも時には仕事を言いつけます。 ドライフラワーを作る時これに刺しておくのです。湿度が高い香港ですから、ほぼ一年中どこかの部屋の除湿器が廻っています。その部屋にこうして置いておくだけで、ドライフラワーが出来上がります。いつかは、この花留めで花を生けてみたいのですが、透明な硝子の大きな花器、外からもこの花留めと花の茎が見えるのも素敵だなと想像します。
ある時、このワイヤー細工が一斉に香港から姿を消しました。買う人も少なかったし、もっと買っておけばよかったと後悔しています。ワイヤー細工には、もう一つおまけの話が。ちょうど、香港からワイヤー細工が姿を消した頃、パリに行くことになりました。そこで、内心ホコホコの私でした。ところが、時差に非常に弱い主人とクリスチャントルチュの店の硝子ウィンドーの前に立ったのは、まだ外もやや白みはじめた早朝でした。大きな硝子のウィンドーの中、ずらっと並んだワイヤーが見えています。その日の午後ポルトガルに向かうので、結局買えずじまいです。いつかまた、巡り会うことがあると思っています。