曇り、22度、82%
私が香港島の北、中腹にあるボーエンロードを走り始めたのは17年前のことです。仕事柄、どうしても12月から2月にかけては風邪を引いていられない状況でした。風邪をひかないために始めたジョギングです。長距離は大の苦手、そんな私が徐々に距離を延ばしながら、半年かけて、ボーエンロード8キロを走ったときは、嬉しくてオイオイ泣いてしまったほどです。その翌年からは香港マラソンも初まりました。朝、ボーエンロードで会うジョッガーの人たちは大小のマラソンレースに誘ってくださいましたが、今まで一度も参加したことがありません。自分の性格上、レースに参加するとなると、事前からプランを立てて、毎日タイムをとったりしそうです。そういう負荷を自分にかけたくないと思っていました。
このボーエンロードは、距離が明記された香港島では有名なジョギング道です。一日中走る人が跡を絶えません。早朝は、お年寄りが散歩や太極拳も兼ねてやって来ます。この道で、私は毎朝、10人ほどの走る人に会います。この人たち、ほとんど私より永くこのボーエンロードを走っている方達です。人種も様々、朝の挨拶も何か国語かが飛び出します。時には立ち話などもするほどの仲間です。その中の一人、フィリップさん(香港人は中國名の他に呼称として英語名を持っています)つい先日まで、私より若い方だと思っていました。ここ数ヶ月朝お会いする回数が減ってきました。元気?と尋ねると、退職したから朝は時々走らなくなったとおっしゃいます。退職?政府の仕事をしていた彼は60才で退職したそうです。そんな彼が、別の私を知る走る友達と私のことを話題にしたことがあったそうです。どこのレースにも参加しないのに、毎朝早くに走っている私は、純粋に走ることが好きな人だと、話したとのこと。思わず涙が出るほど、その言葉は私を嬉しくしました。
自分が走ることが好きだと気が付いたのは、走り始めて10年以上も経った時のことです。それまでは、周りを見て、自分のことは棚に上げ、よくまあ、まじめに走りに来るものだわ、などと思っていました。ところが、自分が走ることが好きだと気付いて以来、毎朝会う彼らも走ることが好きなんだと、解るようになりました。
こう話してくれたフィリップさん、先日の大阪マラソンにも参加し、その時のことを楽しげな話してくれます。別の方も、日本のトレールマラソンに参加するんだと話してくれます。一緒に並んで走ることもあります。アメリカ人の私より年上の彼女は、アメリカにいる11人の孫の話です。今、気付いたのですが、毎日会うのに名前を知っているのは、フィリップさんとイギリス人のジョージさん、アーロンさんだけです。
17年間、主人の理解とこうした仲間のおかげで、走ることが出来ました。ほんとは皆の名前を書きたかったのですが、代表してフイリップさんを。
今朝は雨上がりの中、台風の余波の風を受けながら、拾ったドングリを握りしめて先程帰宅しました。