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チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

興福寺仏頭展 東京藝術大学美術館

2013年11月20日 | 日々のこと

曇り、19度、76%

 仏像の顔に惹かれたのは、中学の時です。美術の教科書に小さく載っていた、広隆寺の弥勒菩薩。口元に微かに微笑みを浮かべ、右手が右頬に触れるようなあの半跏思惟像と呼ばれる独特なポーズをとったものです。昭和40年代の中学の美術の教科書なんて薄っぺらな代物でした。その小さな写真を見ているだけで、すっと心が落ち着きました。

 国宝級の仏像は、直に接することが少ないものです。香港に住むようになって、中國、台湾、インド、タイの仏像を見る機会に恵まれます。南に行けば仏像の顔も、目鼻立ちのはっきりした仏像に変わって行きます。仏像を見る場所は、寺院であったり博物館であったりするわけですが、日本で見る仏像と違い、私にはなぜか心落ち着くものではありませんでした。

 興福寺の仏頭展は、仏頭のみの白鳳が今回のメインです。この白鳳を守るように置かれた12体の仏像も全て公開されています。私は、興福寺といえば阿修羅像を直ぐに思い浮かべます。残念なことに、阿修羅には出会えませんでしたが、日本に3体ほどある弥勒菩薩が出展されていることを知りました。しかも興福寺の弥勒菩薩は、厨子に入っているのだそうです。

 秋の冷たい雨の降る中を、上野公園の一番奥の藝大の美術館へと向かいます。開館したばかりの時間だというのに、ご年配の参観者が大勢です。

 会場でまず出迎えてくれたのが、なんと弥勒菩薩像でした。厨子から出されて、厨子は並びに展示されています。思っていたより小さな像です。半跏思惟像の独特な姿は全体像も美しく感じます。細かいところは、胸の中にある広隆寺の弥勒菩薩とはやや違いますが、目の前にあるその顔も、心が洗われる思いで見つめました。

 仏教的な知識を持ち合わせていない私です、その道に詳しい方ならば、厨子の中の絵の意味やそれぞれの仏がどんな意味を持つのか、もっと深い次元で仏像に接することが出来ると思います。メインの白鳳の微笑みは、心開けたものでなくては出来得ない微笑みです。

 いつもは忙しなく会場を回る私ですが、周りのご年配の方達と同じ歩調で歩きます。仏様の顔を見に来ている人たちです。なぜか、皆さん顔が穏やかに見えます。

 ひと回りした後に順路を遡って、もう一度弥勒菩薩を見ました。やはり、心が静まります。いつかは広隆寺の弥勒菩薩に会いたいと思いながら、霧雨の上野公園を歩きました。