
「留美子さんは何にする?」
「さっき美味しいワインをいただいたから、なにか違うもの」
「それじゃぁこちらにマンハッタンを、僕はドライマティーニで」と
カクテルをリクエストした。
かしこまりました、とボーイが礼をして去ると
辰雄は留美子をじっと見つめた。
さっき辰雄さんはラウンジに移動して、私の欲しいものを聞く、と言っていた。
いつだって彼は私に「何が欲しい?」と聞く。
それは、洋服だったりアクセサリーだったり、香水だったりバッグだったり
するのだが、みんなデザイナーズブランドの高級ブティックでのことだ。
これが素敵、と答えるとすぐにそれは私へのプレゼントになる。
そんな生活を続けて5年が過ぎた。
カクテルを飲み干した頃、私はそっと彼の手を取る。
彼は私と他愛の無い会話をした後「留美子」と敬称無しで呼ぶ。
私は彼の手をぎゅっと握る。店を出る合図だ。
こんなことをもう5年も続けてきたのだ。
つづく