ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

定額制ラジオ「リアルミュージック」は未来を語れるか

2006年07月12日 | デジタル家電・iPodなど
やはりネタがないのだろう。リアルネットワークス代表取締役Douglas Kaplan氏のインタビューで述べられている言葉に目新しさはなく、これからの音楽配信のターゲットはむしろ今後の展開を述べない方が期待感を煽ることができたのではないかというものだった。リアルネットワークスは5月31日に定額性インターネットラジオサービス「リアルミュージック」を開始し、個人的にはなかなか料率の問題などで話が進まない定額制サービスに先駆け、実質的に定額制サービスの提供に成功し、僕はひそかに注目していた。

あえて「ネットラジオ」を核に--音楽配信サービスに挑むリアルネットワークス - CNET Japan

「定額制サービス」と「月額性インターネットラジオ」というと全く別物と感じる人もいるかもしれないが、実はこの2つの差というのは思ったほど遠くない。現在、月額性サービスを考えている事業者の中には、Yahoo!サウンドステーションを含めたインターネットラジオを別物として考えているところも多いと思うが、もしかするとユーザーの求めているものにこの2つの差はさほどないのかもしれないのだ。

P2P、あるいはiTunesの開いた地平とは、「数は質を凌駕する」と言わんばかりに、ユーザーが自分の知らない様々な音楽との「出会い」「発見」こそが楽しいのだということだった。合法的には自分の過去に買ったCDなどで忘れていた曲との出会いが、半違法的にはファイル交換などで手に入れた新しい曲との出会いが、自分の知っている曲、聴きたいと思っている曲だけを聴くことよりも楽しいということだった。

もともとFMなどが全盛期だった頃は、ユーザー自身、FMで聴き、そこで紹介された新しい曲と出会い、その曲を気に入ればレコード店で購入したり、レンタルレコードに借りに行ったりするというのが、音楽購入までのサイクルだった。それがFM離れやTVでの音楽番組の衰退に伴い、結果的に「新しい曲との出会い」の場が失われてしまった。

その結果、ここに来て注目を集めることになったのが、SNSといった「コミュニティ」サイトを通じて「口コミ」を通じた新しい楽曲との出会いであったり、「PLAYLIST」の交換を通じた楽曲との出会いであったりであった。そして現実的に、これらの行動を支えるにはiTMSのような楽曲単位での課金というモデルでは難しいため、「月額定額制サービス」が注目を集めることになったのだ。

そう考えると、ユーザーが自分で楽曲を選ぶのではなく配信側(システム)が楽曲を選択しユーザーに紹介する「インターネットラジオ」も、「新しい曲との出会い」を実現するという意味では等価であるといえる。

SNSのレコメンド機能やPLAYLISTと、完全に受動的な「インターネットラジオ」は違うという意見もあるだろうが、もちろんそれはその通りでそれを否定するつもりはない。ただ本当に普及するサービスを考えた場合、「能動的な要素」を伴う「レコメンド」や「PLAYLIST」というのは中核のサービスではない。これらはコアなユーザー、アーリーアダプター層こそが楽しむものだからだ。

そういうこもあって、このリアルミュージックの取り組みというのは(成功は厳しいとしても)注目に値するサービスだった。料率・分配方法などの思惑でなかなか実現できない「定額制サービス」を尻目に、「定額制サービス」に近いモデルを実現してしまったのだから。だからこそ、次の展開というのが気になるところだったのだけれど、結果的にDouglas Kaplanは、

・SNSとの連動
・ゲームや動画といった一般的なインターネットサービスへの拡張
・「ポイント制」という名の「個別課金」モデルの導入

という、まぁ、そこらで流行っていたり、言われているようなものの引用に尽きるものだった。

もちろんこれらを実現する上で新しい工夫というのが出てくるのかもしれない。が、これだけのことだとしたら、たまたまインターネットラジオというアプローチをしたけれど、実はそんなに深いビジョンがあったわけではないのかも、と思わせてしまうだろう。

まだまだ混迷する音楽配信サービスの中で、何がキラーとなるのかはまだ誰も見えていないのかもしれない。


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