ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

大阪都構想をめぐる橋下知事と平松市長の戦い

2011年08月07日 | 地方政治・経済
大阪を遠く離れて東京圏で生活していると、改めて関西のニュースというのは少ないのだと思う。インターネット時代となり、探そうと思えば地方のニュースも簡単に手に入れることは出来るのだけれど、PUSH型のニュースはすべて東京中心だ。テレビが流すのは「全国ニュース」という名の「東京」が関心を持っているニュースだし、関西版でもなければ、関西のニュースが新聞紙面を飾ることは少ない。

そんなこともあって、橋本大阪府知事と平松大坂市長が「大阪都構想」でもめているというのは知ってはいたけれど、ほう、橋下知事が秋の大阪市長選に立候補するようだ。

 橋下VS平松…大阪秋の陣に向け動き加速 : 地方選 : 選挙 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


僕が大阪にいた当時、もう10年以上前のことだが、その当時の大阪府というと、バブル時代の無謀な計画のために財政再建団体に陥るかどうかという危機的な状況。しかも(面白ければいいってわけではないのだろうが)横山ノックが知事をつとめ、さらにはその後任は、後に幾つもの金銭問題を起こす太田房江で、財政再建については成果が上がらないままといった状態だった。

その当時、大阪府の苦境に比べると、大阪市は財政面での余裕もあり、はるかにいい状態だった。しかしそれは問題が表に出ていなかっただけで内実は決していいものではなかった。そしてそれはその後、一気に吹き出すことになる。

政令指定都市でもトップクラスの給与をもらっている「労働組合」はひたすら自らの要求を主張し(彼らのおかげで大阪市のIT化は非常に遅れた)市の財政再建の道筋は大きく遅れ、不明朗な補助金や優遇政策が続く「同和行政」の問題があり、OCATをはじめ大阪シティドーム、ATC、WTC、クリスタ長堀など「第三セクター」が次々と経営破綻となる。気がつけば大阪府以上に危機的な状況に陥っていた。


そして持ち上がった「大阪都構想」。これは「東京都」と同じように、「大阪都」として「大阪府」と「大阪市」を統合しようというもの。政令指定都市である「大阪市」「堺市」を廃した上で、特別区として再編、府下の市町村を含めて、20区域に分けて統治しようというもの。

そもそもの背景には、地盤沈下が続く「大阪」に対しての危機感がある。府内総生産はこの10年で2.4兆円も減少し、県民所得は平成8年から18年にかけて約50万円も減っている。大阪を再建させるために、この時代にあった新たなる統治機構が必要だと考えているのだ。

「大阪都構想」を実現するために、住民の生活基盤(安心)に関わる業務を行う「基礎自治体」と、産業基盤に関わる業務を担う「広域自治体」とに役割を分け、前者を「都区」が担い後者を「大阪都」が担うことになる。これまでも大阪府と大阪市の二重行政の問題というのは指摘されてきたわけで、役割を再編することで、二重行政を解消しようというのだ。

しかしこのことは当然のことながら「権力闘争」の問題に結びつく。

大阪というのは圧倒的に「大阪市」の存在が大きい。府下880万人のうち267万人有し、本社を大阪市に置く大手企業も少なくはない。交通の要所も大阪市にある。JRを始め私鉄も梅田やなんぱを中心に伸びるものが多く、関空や伊丹空港からの乗り継ぎにもいったん大阪市のターミナル駅で乗り換えることになる。この大阪市が政令指定都市として独自の権限や予算を持っている限り、大阪府全体を統制することは難しい。

大阪市長を始め、大阪市の行政を携わるものからすれば、大阪府と一緒になることにメリットなど感じないだろう。だからこそ平松市長は「反対」を唱える。職員たちもそれは同じだろう。給与もステータスも違うし、場合によっては自分たちのポストがなくなるのだ。

正直言えば、「大阪都構想」についてはもう1つ懐疑的だ。というのは、大阪市の存在をどのように壊すかというのは大事なことだけれど、「広域自治体」という意味では「関西」という視点、もっと言えば大阪、神戸、京都という「三都」を一体となって考えなければ、「東京圏」にはかなわないのだろうと思うからだ。

経済規模だけでいうと、2008年度の東京都の名目GDPは89.7兆円。当時の韓国が93.6兆円、オランダが88.2兆円とほぼ一国の経済規模に相当する。これに対して、大阪府は38兆円。近畿圏全体でも79.7兆円と東京にはかなわない。

また廃藩置県後、3府72県に統合された1871年当時というのは、新橋駅~横浜駅間での日本発の鉄道が開通する前年。人の移動、物の輸送という意味では1つの「県」の大きさというのははるかに広かったのだ。

これまでは国、都道府県、市町村という三層構造で地方自治というのは行われてきた。各レイヤーは同様の機能を果たそうと、同じ設備をもち、(規模は違えど)同じように予算を執行しようとした。しか交通網、通信網の整備ははるかに人の活動範囲を広げ、今では車を飛ばせば1~2時間でとなりの県まで行けるくらいだ。かっての「都道府県」「市町村」という括り方や役割自体を見直すべきなのだ。

そういう意味で、「大阪都」ではなく、「関西」や「近畿」という括りで広域行政を担う組織が必要だと思うし、基礎自治体としては、今の大阪市の権限は強すぎる。「道州制」の議論とセットで考えなければならないのだろう。

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