ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

PCからTVを攻める-「TVポータル」の可能性

2005年07月16日 | 検索・ポータル
周囲の状況もあって、ここ2週ほど書くかどうか迷っていたのだが、孫正義の言葉のせいか、はたまた時代の要請か最近、TVと携帯、PCをどう繋ぐか、あるいは「TV向けポータル」という言葉を社内でよく聞くようになった。とはいえ、「TVポータル」という言葉を聞いても、その具体的なイメージというのがもう1つ沸かない。世の中には松下が音頭をとっている「Tナビ」というものも存在しているわけだけれど、実際、うちのTVはSONYだし(笑)、具体的な姿はよく分からない。

まぁ、大雑把な言い方をすると、「TV」をベースに、インターネットのように生活に必要な情報にアクセスできつつ、iモードのようにコンテンツや課金機能を提供できるようなもの、といったイメージだろうか。

では、何故、例えば次世代ゲーム機やISP、(検索)ポータルサイトまでが「TV」にむかっているのだろうか。否、あえて暴力的に言うならば、何故、「リビング」に向かっているのだろうか。

ここであえて「リビング」と書いたのは、実は「TVポータル」や「Tナビ」が目指しているものが「TV」だからではなく、「リビング」なのではないかという仮説に基づくからだ。僕らが「TVポータル」という言葉を口にする時、そこには当然、一家が皆集うリビングに据え付けられた大型TVをイメージしているのではないだろうか。

しかし「TV」の定義を、NHKおよび地上波民間放送局の電波を受信し、受像する装置として規定するならば、リビングルームに据えられたハードウェアとしての「TV」と、機能およびソフトウェアとしての「TV」とは分離して考えることが可能となる。つまり先の定義によれば、「TV」とはあくまで機能であり、ハードウェアとしてはPCや携帯・PSPのようなポータブルデバイスでも「TV」と呼ぶことが可能となる。つまり「TV」とは、一家が皆で見るために所有するものではなく、個人がパーソナルで利用するものとして考えることが可能となる。

週末にコジマなどに出かけてもらうとよく分かるのだが、最近のPCというのはTVチューナーを搭載していることが多い。またYahoo!光・無線LANパックのようにPCでの受像をサポートする機器もあれば、ロケーションフリーテレビ「エアボード」のような機器もある。あるいはauやボーダフォンのようにテレビチューナー搭載の携帯電話などもあるし、そう考えると「TV」はよりパーソナル化しているといえるだろう。「TV」とは既にリビングに存在するものではなく、個人が個人の用途に応じて利用するものなのだ。

しかしこのことは正しく理解されているのであろうか。

多くの場合、「TVポータル」というとハードウェアとしての「TV」、リビングにすえつけられた「TV」を前提に考えてしまう。それは既に「TV」というものが生活の一部として不可欠な存在であるが故に、この装置を押さえなければいけないといった「あせり」であったり、あるいはPCを利用する層が若年層から好奇心の強い年配とある程度限られてしまうため、より広範囲な層をおさえるためには「TV」が必要と考えるためだろう。

しかしこれまで数多の事業者が「TV」に「インターネット」を繋げようとして失敗したように、ハードウェアとしての「TV」というのは既に完成されたポータルであり、また放送局とハードウェアメーカーというインターネットとは遠いPLAYERによって主導権が握られている。「TVポータル」とはほど遠い位置にあるのだ。

リビングに据えられる「TV」にとらわれるあまり、パーソナルデバイスに導入された「TV」をおざなりにしているのではないだろうか。

整理しやすくするために、「専用機」「PC」「携帯電話」と3種類のデバイスにわけて「TVポータル」の可能性について考えてみたい。

リビングなどに設置される「専用機」としての「TV」の場合、先にも述べたように放送局とメーカーが主導権を握っているためにそれ以外のPLAYERの独自参入というのは難しい。現実には松下陣営が提供する「Tナビ」があるし、それ以外となるとSTBやあるいはHDRなどのテレビに付随する他のハードウェアから提供するしかない。しかしSTBなどの普及状況は芳しくないし、またCATV・通信キャリア側がイニシアティブをとることになる。

これに対して「PC」向けTVポータルの場合、全く違うアプローチとなる。PC上でTV映像を再生させる場合、極端に言えばソフトウェアとしてのPCとTVを切り替えるという方法もあるわけだが、BCN総研の調査結果などを見る限り、むしろPC上での「ながら」視聴を前提に1アプリケーションとして提供することが求められているのだろう。
となると、PCに組み込まれたTVチューナーボードが受信した映像を再生させるソフトが必要となる。つまりこのソフト自体が「TVポータル」となればいい。

この場合、TVポータルの機能としては、1)テレビの受像、2)テレビの録画、3)ポータルサイトとの連携(Web検索)、4)VODサービス、5)ECサービスなどが含まれるのだろう。BCN総研の資料にもあるように、「テレビを録画する」ためにPCを使うというニーズは高し、また生活に必要な情報は改めてそれ向けに用意するというよりはYahoo!やgooなどのポータルサイトの情報を利用し、それ以上のものが必要であればそのままインターネット検索をすればいい。

またジャンルによって差はあるとはいえ、WMPをベースにインターネット配信している動画コンテンツというのは結構ある。テレビの延長上として利用すれば、そうしたVODサービスに対する違和感も少なくなる。TVショッピングに限らず、例えばドラマに流れている曲や小道具、あるいはCMにあわせてそれら商品の情報や販売が可能になればEC連動も可能だろう。

ポータルサイトやISPが提供するのであれば、ネットワークHDというが考えもあるのかもしれない自分が録画した番組やビデオ映像を「TVポータル」を通じてネット上のサーバにUPし、端末に縛られることなく利用することができる、というものだ。著作権などの課題はあるにせよ技術的には難しいことではない。

PCの場合、あらゆるサービスのパーツは既に揃っており、それらを統合してコーディネートすること、PC向け「TVポータル」をどうつくり、どう普及させるかという戦略面が課題となる。特にTVや携帯電話と違って、Windowsという汎用性の高いプラットフォーム上で提供できるため、参加できるPLAYERの幅が広い。あとはPCに搭載させるための戦略などが求められるのだ。

 PCでのテレビ視聴、伸びの鍵は「PC+テレビだからこそ」のコンテンツ-BCN総研

 「Yahoo!BB 光」と「無線TVパック」はどうつながるのか

 P2P時代のテレビ録画


最後に「携帯電話」だが、これは実際にauで提供している「EZテレビ」がいい参考になるだろう。残念ながらこれを利用したことがないので、記事などを参考にすると、ボーダフォンのように単純にテレビが映るというだけではなく、テレビを視聴しながら、放送中の番組を録画できるほか、番組に関連した情報が表示される「お知らせウィンドウ」や、EPG番組検索機能なども備えており、EZの各種サービスとの連携が意識されているようだ。

しかしこちらもauが規格をつくり、それに合わせてメーカーが提供しているということもあって、キャリアもしくはメーカー以外のPLAYERが直接参加することは難しい。

いずれにしろ、「TVポータル」という抽象的な言葉でこれら3種類の利用形態・利用パターンの違う「TV」を1括りにするのは難しい。本来であれば、こうした違いを踏まえて、どの領域をどう攻めるかという検討が必要なのであるが、多くの場合、リビングに据え置かれた「TV」だけが検討の対象になっている。

確かにリビングの「TV」をどう攻めるかということは大きな課題だ。しかし同時にリビングの「TV」とは最も能動的でないメディアでもあるのだ。ここに「TVポータル」を提供するのは、理念としては分かるが、並大抵のことではないのだろう。


 「映像」を見るためのデバイスとは?

 VODサービスの可能性について






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