
◎2024年11月8日(金)
以前から地図を見ては気になっていた。細尾峠の西側、つまりは長手沢の左岸側に実線が通っていて、おそらくは林道だろうが、始点は旧国道(50年前に日足トンネルができるまでは、ここの細いクネクネ道を日光・足尾間を往来するバスが通っていた)の途中から分岐して北上し、終点は、地図上の水線は下流で切れてはいるものの、実際は流れのある長手沢の上流付近に接している。2013年にハイトス氏と長手沢を源流から地蔵滝まで下った際に気にかけていたが、GPS軌跡上は林道末端部に接してはいたものの、もう少し上だったのか、林道らしき道を見つけることはなかった。それでいて、沢沿いにドラム缶が散乱していたことだけは記憶に残っている。以来、いつかこの林道を辿ってみたいと思ってはいたが、それきりになっていた。林道歩きをしたところで、その先をまた沢歩きをする気持ちもなく、つまりは、長手沢はさほどに面白くはなかったということになる。さりとて手ごろに取り付けそうな尾根がありそうもないのでは、ただの林道歩きで引き返すことになるかも知れず、自己満足で終わりそうなところもあった。
今回の茶ノ木平行きについては、あくまでも、終わりかけのはずの紅葉見物が目的ではあったが、どうせなら、その林道の様子を少しでも見ておきたいという目論見もあった。下からでは無理かも知れないが、上からなら、ハイキング道から外れた1575m標高点から東に下る尾根を使い、下部の地形はややこしそうだが、長手沢を越えれば、林道に出られそうな感じがした。問題は、林道先の途中から林道を離れて細尾峠にすんなり行けるかどうかだ。林道をそのまま下れば、始点の旧道に出るだろうし、それらしい分岐場所も知ってはいるが、舗装された旧道を細尾峠まで登り返すのはつらそうで避けたい。幸いにも、林道から離れるあたりの等高線は緩そうだし、ヤブ漕ぎで適当な歩きになったとしても、上を目指せば登山道には出て細尾峠に戻れるだろう。
地形図を見ながらだけの偉そうなことを記した。いつも特別な目的意識を持って山歩きをしているわけではないが、今回は、それなりに満足するはずの紅葉の後に、久しぶりにバリ歩きを加えてみたいといった気持ちがあって、少なからずの気負いが出てしまった。
家からの出発が遅れ、大間々の通勤混雑にはまり、細尾峠に着いたのは8時45分。峠には車が2台あった。おそらくは薬師岳方面の紅葉見物だろう。今日は新品のスパイク地下足袋にした。新品のゆえか、コハゼの差し込みに手こずり、出発は9時ちょうど。余談だが、一切経山へのシモフリ新道歩きで懲りたワークマンの4500円の登山靴を前回の西沢渓谷でも履いてみた。やはり、履いた瞬時にくるぶしの上が痛くなり、最後まで痛みがあって、自分には合わないようなので、もう履くことはあるまい。貧乏性ゆえ、潔くゴミ出しということはないだろうが。
(細尾峠から茶の木平方面へ)

(早速出てきたが、光の関係か疲れ気味に見える)

(豪勢な群がりだが、足を止めるほどでもない色合い)

(貧弱な送電鉄塔。帰路では右から上がって来た)

細尾峠から薬師方面はともかく、峠から茶ノ木平方面に登るのは14年ぶりになる。それだけのブランクがあれば、勝手を知ったコースとは言えず、歩きながら、そういえばと、記憶に残る風景に出会う程度だった。出発からして、いきなりの急登だったような気がしていたが、緩やかな道が続いていた。14年前の記憶の先入観は捨てた方がよさそうだ。
そんな緩い道なのに、早速、足の具合がおかしくなった。これまで愛用の同メーカー、同サイズの地下足袋なのに、親指以外の4本の指が中でもつれて遊んでしまい、どうもフィットしない。歩いているうちに足が膨張して、こんな懸念も消えるだろうと楽観していたが、足指のもつれはずっと解消せずにちょっとしたストレスだった。次回は靴下かインソールでカバーした方がよいだろう。
(ようやく始まったか)

(すぐにこうなった。つまりはまばら)

(右の谷筋は光が当たって、幾分きれい)

(逆光になったが薬師岳)

(数日前だったら良かったかも)

(あれに上がらなきゃいけないのか)

(やはり、アップはいけないねぇ)

(右側を見ながら歩くしかないか)

(日光市内が見えてきた)

(これで一応は満足とする)

(アップも何とか堪えられる)

さて、出だしから紅葉は見られたが、ごちゃ混ぜの紅葉だった。盛りらしいのもあれば、濃過ぎたり、すでに枯れたり、はてまた青葉のままだったりで、早いのか、遅過ぎなのかさっぱりわからない。概してきれいな紅葉ではないことは確かだ。場所によっては、葉をすべて落とし、四方、ただの薄茶の世界だけというところもあり、その時は、元よりこの辺は紅葉のきれい所ではなく、先を期待して、篭石を過ぎれば、足を止めてしまうところも出てくるだろうと思っていた。つまりは、暗に、茶ノ木平も日光の山のうち。紅葉は素晴らしいだろうと根拠のない期待をしていて、予定では、茶ノ木平に行く前に、明智平方面にも下って紅葉を楽しむつもりでもいた。
(もうダメか)

(東からの稜線に乗った)

(日光連山の一角が見えた)

(あるにはあるが、焼けた感じ)

(ぎりぎりのアップ)

(篭石に到着。気になることがある。ここを篭石としているが、地図上の記載は少し東側になっている。そちらに行ったことはない)

(不動様と首欠け石仏は左の四角い岩の上に鎮座していると思ったが…)

(奥の岩に石仏の胴体部だけらしいのが2基。以前には、この岩の上には何もなかった)

(お札が2枚)

情況は好転せず、くすんだ紅葉を見ながら篭石に到着。この先の期待は持てなくなった。せめて、ここにある石仏だけでも拝めれば幸いと、周辺を眺めたが、見慣れた岩ではない奥の岩の上に、石仏に見えなくもないような石が2基乗っているだけで、他には何もない。14年前、そして9年前にもここを通過しているが、その際の記憶では、石仏と首欠けが2体あったはず。現に、帰ってから、その時の写真を確認すると、不動様と首欠けの2体が写っているし、今回見かけた石碑まがい2基が乗った岩には何も写っていなかった。何らかの事情で手が加わったことは確かだ。下に転げ落ちたのかと岩の下を覗き込んだが、それらしき塊は見えなかった。担ぐには重過ぎるだろうし、いったいどういうことになったのだろう。もしくは自然崩壊? 新らしげなお札が2枚、重なって横に倒れていて寂寥を誘ってしまう。
ところで、ここの篭石までが『山と高原地図』に記されたコースタイム1時間50分とばかりに思っていた。いつものように休み休み、ゼーゼーで登りながらも1時間半もかからず、今日は元気かなと思っていたが、同地図をよく確認すると、1時間50分とは明智平分岐までのタイムと知ってがっくり。14年前は、篭石までは1時間、分岐までは1時間15分で歩いていた。往時の歩きぶりでは、すでに三角点も過ぎ、分岐に至っている時間だ。嘆いたところでどうしようもない。現実の体力がそれなのだから。
(茶ノ木平へ)

(茶色に近い黄色)

(1618m三角点)

石仏にがっかりして茶ノ木平に向かう。空腹で腹が鳴っているのに、別に休憩したい、食べたいといった気分にはならず、水を一口飲んだだけでこのまま歩き続ける気力だけはある。
ほどなく1618m三角点に到着。空きっ腹も限界そうなので、標石に腰かけて無理におにぎりを食べていると、反対側からやって来たオジサンが指差しでどいてくれとのこと。何のことかわかりかねたが、標石を撮るらしい。そういうことかと傍らの草むらに移動した。オジサンの話を聞くと、「今年の紅葉はさっぱりダメ」とのこと。何やら、気象学的な理由を並べていたが、左から右へと流れていった。自分には、この先がどうなのかの結果が一番の関心事であり、不作の原因はどうでもいい。オジサンは明智平から登って来たが、明智平方面も茶ノ木平もさっぱりだったとのこと。栃木言葉なまりのイントネーションだったから、歩き慣れた地元の方だろう。言うだけ言ったら、さっさと元来た方に戻って行った。三角点標石の撮影で寄り道するとは律儀な方だ。しかし、聞いた話の内容からしてそういうことか。やはり、紅葉は期待できないなと改めて思った。
(明智平分岐。そちらに行ってみた)

(期待できそうにはなかった)

(戻って茶ノ木平へ)

(日陰の道には霜柱)

明智平分岐から、少しだけ下ってみた。確かに、尾根の周辺に黄色やら赤の色彩は先にも確認できなかった。展望台まで200m下って、撮った写真は華厳の滝と中禅寺湖だけでは寂し過ぎるし、相応の見返りを得られそうにもない200mの登り返しもまたつらい。明智平への寄り道はやめにした。正直のところ、オジサンから情報を聞いて幸いではあった。紅葉が輝いていたとしても200mはきつそうだと思っていただけに、体の良い理由付けになったことは確かだ。ただ、オジサンの目が肥えていたとしたら、逆に損した感じになったかもしれない。今になって、自分の目で確かめるべきだったかなと思ったりもしている。
(標識に合わせて茶ノ木平に向かうが、展望広場も含めてこの辺一帯が茶ノ木平ではなかろうか)

(この中に石祠があるはず)

(展望広場。正面に男体山)

色のない殺風景な景色の中を、こんなものかと思いながら茶ノ木平に向かって歩いているとふと思い出した。2年前のこの時期、とはいっても10月19日のことだが、歌ヶ浜から茶ノ木平に出て半月山に行った。あの時、茶ノ木平には豪勢とまではいかないが、赤も入った色づきが確かにあった。今年は紅葉が遅れていたとはいっても、少しは居残りを含めてあってもおかしくはない。視界にそれすらない。かろうじてシラカバの黄色が目に入ったが、陽があたっているにも関わらず、鮮やかさからは程遠い。確かにオジサンのおっしゃっていたとおりなのかもしれないし、来るのが遅過ぎたのかもしれない。もう、頭の中には、紅葉への期待と執着は薄れ、初めて歩く林道への尾根下りのことしかなく、それも、ここまでのレベルからして、紅葉への期待はなくなっている。
淡々と平坦な道を歩いて茶ノ木平の展望地。だれもいない。男体山は中腹に雲がかかってはいるものの真正面に見えている。篭石の石仏がダメなら、ここまでは、お粗末ながらもこれを見られただけでもラッキーかもしれない。日光修験の石祠に覆いかぶさったコケはさらに分厚くなっている。剥がしてしまいたい衝動にかられたが、それをやったらバチあたりになるかも知れず、そっと手を合わせた。
(戻って半月山方面へ)

(わかりにくいが、八丁出島が見える。ここからでは色付きは感じない)

(半月山だろう)

さて、ここからが次の目的の林道への尾根下りになる。あそこからだろうなという見当はついている。これまで、三角点オジサンとしか会うことはなかったが、軽装の男女と出会った。欧米系の外人さんだった。先方からコンニチワと声をかけられた。おそらく、半月山の駐車場から登って来たのだろう。続いて単独さん。この方は東南アジア系の外人さん。山中で出会った方々はオジサンを含めて4人だけだった。いや、この先のおかしなところで青年にも出会った。
半月山方面に下る途中で右手に中禅寺湖が見えた。樹間を通してだからすっきりはしないが、八丁出島も見えた。新聞やらに出る定番の紅葉写真とは別物で、ただの白茶けた半島にしか見えず、これが半月峠からの展望なら、いくらか間近で色彩も感じられたかもしれないが、ここから見る限りでは、それもまた微妙かもしれない。現に、下野新聞は知らないが、毎年のように写真掲載される全国紙に今年の掲載はなかったと記憶する。国政選挙やらアメリカ大統領選挙があった。悠長に一面に八丁出島の紅葉でもあるまい。
(南尾根や東尾根はここから直進。長手沢を遡行した際にも、普通はここに出る)

ハイキングコースはやがてカーブになった。ご親切にも、ここには直進しないように以前からロープが張ってあり、標識まで置かれている。ここを越えて直進するわけだが、これを越えたのは過去に2回。11年前にハイトス氏と手焼沢、茶ノ木平、長手沢を周回した時。そして、9年前にアカヤシオ満開の手焼沢左岸尾根を歩いた時。一旦、1575m標高点を目指すが、11年前の時には1575mを経由せず、ストレートにロープゲートに出て茶ノ木平に寄って下っている。つまりは、1575mに出るのは今回が2回目となる。ヤブとはいっても、シカ道なのかは知らないが、低いヤブの中に細い踏み跡もあって、何ら問題なく歩ける。
(1575mピーク)

(男体山。雲が停滞している)

(日光白根山方面)

(そして半月山)

1575mからの眺望は良好。半月山は左寄り正面で、日光白根山や錫ヶ岳も見える。少し白くなっているようだから今年の初冠雪かもしれない。ただ、白根山はいつでも白く見えるから断定の自信はない。ここまで歩いた限りでは最高の展望地だった。
さて、ここから東に下る。9年前は南の尾根からここに登って来た。南尾根は部分的に踏み跡も明瞭で、テープもかなりあった。果たして、東尾根はどうだろう。派生分岐する尾根がいくつかあるので、間違ったらややこしい歩きになってしまう。林道下の長手沢にコンパスを合わせた。沢に出られれば何とかなるだろう。
(南尾根。この先で東尾根が分岐する)

(東尾根に下る。敢えて記すが、南尾根も東尾根も1575mピーク起点での自分の勝手な呼び名だ)

(役立たずながらも、あれば安心するテープ)

(薬師岳方面。尾根の紅葉をこの時点では期待していない)

下ろうとしたら、ヘルメットをかぶった青年が登って来た。普通なら、こんなところで人に出会うのはまずあり得ない。南尾根から来たのか、東からなのかはわからない。尾根が分岐するのはこの少し先だ。沢歩きで手焼沢か長手沢からでも登って来たのだろうか。挨拶しただけで、その辺は聞いて確認もしなかった。おそらく、青年も驚いたろう。
歩きやすい尾根だった。ヤブは薄い。踏み跡らしいのを見かけたが、散らばって一本道になっているわけではない。おそらくは気まぐれなシカ道だろう。意外なことに、ボロボロになったピンクテープを見つけた。こんなところを歩く奇特な方もいたようだ。この先、テープをいくつか見かけたが、紛らわしいところに取り付けられているわけでもなく、無意味なテープといえばそれまでだが、ここを歩いた人もいるのだなと思えば安心してしまう。先で2度ほど、尾根分岐で判断がつかなかったが、コンパスの示す方に下った。
ツツジの紅葉が出てきた。見られたものではない色づきだが、南尾根同様に、この東尾根もツツジが多いようで、その時期に改めて歩いてみたいものだ。ただ、結果としてのことだが、この東に下る尾根は下る分にはよいが、上り使用となると、取りつき部分の視界内の尾根型は不明瞭で広く、かなり迷うかもしれない。いずれは集約されて一本になるが、それまでは不安が付きまとうだろう。
(出てきた。この程度でも、あれば良しとするが)

(消えた)

(復活。黄色が加わる)

(黄赤のコラボ)

(今度はオレンジか)

1450mあたりから紅葉が目に付くようになった。結構賑やかで、細尾峠からの出発からここまでの区間の中、初めて足が止まるようになった。紅葉見物は何度もあきらめていたが、気分的に楽しくなってきた。ただ、群れて密集しているわけではない。樹々がさほどに多くない疎林帯では致し方がない。いずれにしても、茶ノ木平に期待してがっかりした紅葉は少なからず挽回した気分だ。
傾斜がさほどにきつくもない尾根を紅葉を楽しみながらゆっくり下った。尾根そのものは広いながらも明瞭で、あっちに行っては覗いて見たりといった歩きになっている。紅葉の主体は赤と黄だが、オレンジ色も加わる。この時期としては、この尾根のこの付近が紅葉ピークなのかもしれない。やはり紅葉見頃の標高は下がってきている。
(ちょっと濃過ぎて好みではないとしながらも撮っている)

(周囲の風景が明るく色づいている)

(賑やかだねえ。茶ノ木平とは別の世界だ)

(唯一の細尾根箇所。危険はまったくなし)

(これは絵になる)

(また真っ赤)

(真っ黄色になるにはもう少しかな)

(紅葉がちょっと寂しくなった)

(これは陽の当たり具合で見事にもなるだろう)

(ワイヤーロープの残骸)

(惜しい。こちらが日陰になってなかったらなぁ)

(アップなら何とか)

(沢音が高くなったのでそろそろ終わりかなと思ったら)

(やはり。ここは急斜面で、先端部でさらに傾斜が増している。まともに下れもするだろうが、用心して、幾分緩そうな左にトラバースして下る)

(こちらにもあったか)

(いろんな色が混在している)

(これで尾根の紅葉見物は終わり)

(沢に出た)

飽きることはなかった。そのうちに沢音が聞こえてくる。そして、まだ紅葉見物にうつつを抜かしていたが、例外なく次第に明瞭な尾根型は消えて行き、急斜面の下に長手沢が見えた。はて、ここはどうやって下ろう。直進すればヘタをすれば転げ落ちそうだ。沢を見ていると、上流に小滝がちらりと見えた。あの小滝を目標にしようか。対岸にはドラム缶も見えている。もしかしたら、あれが林道かなと思ったりもした。直進の急斜面は避け、左に慎重にトラバースしながら下って沢に出た。ただ、沢を渉れそうにはなかった。いや、登山靴なら簡単に渉れたかもしれないが、スパイク地下足袋では石に引っ掛けて転倒する危険もあるので、用心して下流まで足を運び、ここならといったところを無事に飛び跳ねて対岸に出た。小滝を見に行こうとしたはいいが、かなり下流に出ていたので、対岸側から上流に向かったものの、確認はできなかった。残念。
(ドラム缶。思うに、このドラム缶はここで使われたのではなく、上の林道から転がしたのだろう)

(小滝というには無理があるが)

(長手沢下流方面。11年前にここを下っているが、その時、もうこの辺になると、石が多くて飽きていた。フィニッシュでハイトス氏の水浴になる)

(窪みがあったのでここを登ったが、急で、右下は沢なので緊張した)

(緩やかになって一枚)

(林道に出た。入口は知っているが、横切ったのが一回のみ)

ドラム缶の場所に行った。林道はなかった。道らしきものもない。一升瓶が埋もれていた。とりあえずは沢沿いを上向きに行けばいいのかと先を見たが、沢に落ち込む急斜面になっていて横切れそうにはない。左を見上げると、平らな直線になっているところが見え、あれが林道だろうか。急斜面の方向に向かい、危なかっしく木につかまりながら左に上がると、ようやく林道に出た。ほっとした。しかし、かなり緊張した。
(林道歩き。逆向きになったカーブミラーもあった)

(林道沿いで)

(この辺もなかなかいいじゃない)

(気持ち良く歩いている)

(赤はないのかなと思ったが)

(あった)

(記念に撮ってみた。下の黒っぽいのが自分)

(林道をまだ先に行っているが)

(この辺で、行き過ぎていることに気づいて戻る)

現役でも使えそうな幅広の林道だった。崩れや陥没もない。この林道沿いもまた紅葉は盛りで飽きることはない。ただ、紅葉には近づかない方が無難で、間近に見る葉はかなり焼けたり穴あきだったりする。敢えて記すが、ここまでに記す「紅葉」、この先もまたしかりだが、あくまでも見た目の紅葉であって、質の面ではかなり劣っている。これは出発してから変わりはなく、遠目からの色づきの感想でしかない。ただ、東尾根から先は何とか楽しめる紅葉だった。
しばらく林道を歩いたが、気になってGPSを確認すると、登山道に上がる予定のコースよりも先に下っていた。戻る。このまま林道を歩いても旧道には出られるが、その後がきつくなる。適当なところから登山道に出た方がいい。
(ここから登る。左は急な尾根になっている。行き着くところは同じだろうが、谷側が楽に思えた。実際はそうでもなかった)

(ここでも足止めを食らう)

(切りがないねー)

(ようやく登山道らしい横切りが上に見えた。直下がきつくて写真どころではなかった)

(登山道に出た。左から上がって来た)

ここから先がくたびれた身体にはつらかった。左は急な尾根で、右手は緩そうな谷。細い水が流れている。ここは谷側の歩きを選んだ。シカ道だろうが、踏み跡らしいのもあった。ここの谷間もまた明るく、紅葉は豊富だ。しかしきつい。スマートには登れない。シカ道は散乱したので、歩きやすいところを登る。地下足袋の中の指がもつれて歩きづらく、さらにスパイク付きでも湿っていて滑る。ようやく、上に登山道が横切っているらしい景色が見えた。傾斜は増した。ハーハーしながら、樹を手がかりに、あそこで休んで、次はあの樹と目標にした。この繰り返しでようやく登山道に出た。
(細尾峠に下る)

(細尾峠に帰着。日陰で寒かった)

真上に送電線が通った開けた所だ。雨量観測所の下になる。ここを「防火帯」と記されている方もいるが、送電線(とはいっても、電柱の電線レベルだが)の下を通っているからには広い巡視路とすべきかと思う。そんなことはともかく、登山道を下る。すぐに樹林帯に入り込み、テープが賑やかになったところで細尾峠が見えた。登山道区間がやけに長く感じた。
峠に置いてある車は自分の一台だけだった。到着は13時40分。4時間40分の歩きだった。短時間歩きのわりにはくたびれたし、神経も使った。とにかく、林道からの這い上がりがきつかった。逆から歩いてみたら、おそらくは、今、直後からだとしても無理かもしれない。林道に下ったとしても、東尾根に取り付くまでにかなりのストレスが加わった労力を使いそうだ。
(旧道に車をとめて)

(同じく。よほどに東に延びる別林道のいつものスポットに行きたかったが、前回、クマに出会ったことと、くたびれていたこともあってやめた)

旧国道を下っての帰り道。紅葉は続いている。道はカーブになり、その路肩に車が一台。この車は来る時にもあった。その先には、件の林道が続いている。あの青年の車だろうか。ヘルメット=沢歩きとすれば、林道終点から沢歩きをして、早々に東尾根に登ったとも考えられる。まぁ、他人様のことはどうでもいい。あの青年の車とは限らない。ただ、ややこしそうな下りになってしまったが、東尾根を上りで使うとすれば、この林道分岐から歩いて、長手沢を渉り、どこでもいいから、尾根が見えたらそこを上がり、東尾根に乗り上げるのが無難で安全な歩きかもしれない。
来年以降の話だ。今回の歩きで、ツツジの時季に南尾根と東尾根を結んで歩いてみたいと思った。もう記憶はうっすらだが、9年前に南尾根を歩いた際に、細尾峠から今回の林道を横切り、地蔵滝の駐車場まで尾根伝いに下っていた。あの時は、地図を確認することもしなかったが、何で、こんなところに林道があるのだろうかと不思議に思ったものだ。ここで今さらながらに納得した。
国道に入った。いつもなら紅葉でキラキラしていた通りも、陽を浴びているのにくすんでさっぱりだった。
(今回の歩き)

(この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
以前から地図を見ては気になっていた。細尾峠の西側、つまりは長手沢の左岸側に実線が通っていて、おそらくは林道だろうが、始点は旧国道(50年前に日足トンネルができるまでは、ここの細いクネクネ道を日光・足尾間を往来するバスが通っていた)の途中から分岐して北上し、終点は、地図上の水線は下流で切れてはいるものの、実際は流れのある長手沢の上流付近に接している。2013年にハイトス氏と長手沢を源流から地蔵滝まで下った際に気にかけていたが、GPS軌跡上は林道末端部に接してはいたものの、もう少し上だったのか、林道らしき道を見つけることはなかった。それでいて、沢沿いにドラム缶が散乱していたことだけは記憶に残っている。以来、いつかこの林道を辿ってみたいと思ってはいたが、それきりになっていた。林道歩きをしたところで、その先をまた沢歩きをする気持ちもなく、つまりは、長手沢はさほどに面白くはなかったということになる。さりとて手ごろに取り付けそうな尾根がありそうもないのでは、ただの林道歩きで引き返すことになるかも知れず、自己満足で終わりそうなところもあった。
今回の茶ノ木平行きについては、あくまでも、終わりかけのはずの紅葉見物が目的ではあったが、どうせなら、その林道の様子を少しでも見ておきたいという目論見もあった。下からでは無理かも知れないが、上からなら、ハイキング道から外れた1575m標高点から東に下る尾根を使い、下部の地形はややこしそうだが、長手沢を越えれば、林道に出られそうな感じがした。問題は、林道先の途中から林道を離れて細尾峠にすんなり行けるかどうかだ。林道をそのまま下れば、始点の旧道に出るだろうし、それらしい分岐場所も知ってはいるが、舗装された旧道を細尾峠まで登り返すのはつらそうで避けたい。幸いにも、林道から離れるあたりの等高線は緩そうだし、ヤブ漕ぎで適当な歩きになったとしても、上を目指せば登山道には出て細尾峠に戻れるだろう。
地形図を見ながらだけの偉そうなことを記した。いつも特別な目的意識を持って山歩きをしているわけではないが、今回は、それなりに満足するはずの紅葉の後に、久しぶりにバリ歩きを加えてみたいといった気持ちがあって、少なからずの気負いが出てしまった。
家からの出発が遅れ、大間々の通勤混雑にはまり、細尾峠に着いたのは8時45分。峠には車が2台あった。おそらくは薬師岳方面の紅葉見物だろう。今日は新品のスパイク地下足袋にした。新品のゆえか、コハゼの差し込みに手こずり、出発は9時ちょうど。余談だが、一切経山へのシモフリ新道歩きで懲りたワークマンの4500円の登山靴を前回の西沢渓谷でも履いてみた。やはり、履いた瞬時にくるぶしの上が痛くなり、最後まで痛みがあって、自分には合わないようなので、もう履くことはあるまい。貧乏性ゆえ、潔くゴミ出しということはないだろうが。
(細尾峠から茶の木平方面へ)

(早速出てきたが、光の関係か疲れ気味に見える)

(豪勢な群がりだが、足を止めるほどでもない色合い)

(貧弱な送電鉄塔。帰路では右から上がって来た)

細尾峠から薬師方面はともかく、峠から茶ノ木平方面に登るのは14年ぶりになる。それだけのブランクがあれば、勝手を知ったコースとは言えず、歩きながら、そういえばと、記憶に残る風景に出会う程度だった。出発からして、いきなりの急登だったような気がしていたが、緩やかな道が続いていた。14年前の記憶の先入観は捨てた方がよさそうだ。
そんな緩い道なのに、早速、足の具合がおかしくなった。これまで愛用の同メーカー、同サイズの地下足袋なのに、親指以外の4本の指が中でもつれて遊んでしまい、どうもフィットしない。歩いているうちに足が膨張して、こんな懸念も消えるだろうと楽観していたが、足指のもつれはずっと解消せずにちょっとしたストレスだった。次回は靴下かインソールでカバーした方がよいだろう。
(ようやく始まったか)

(すぐにこうなった。つまりはまばら)

(右の谷筋は光が当たって、幾分きれい)

(逆光になったが薬師岳)

(数日前だったら良かったかも)

(あれに上がらなきゃいけないのか)

(やはり、アップはいけないねぇ)

(右側を見ながら歩くしかないか)

(日光市内が見えてきた)

(これで一応は満足とする)

(アップも何とか堪えられる)

さて、出だしから紅葉は見られたが、ごちゃ混ぜの紅葉だった。盛りらしいのもあれば、濃過ぎたり、すでに枯れたり、はてまた青葉のままだったりで、早いのか、遅過ぎなのかさっぱりわからない。概してきれいな紅葉ではないことは確かだ。場所によっては、葉をすべて落とし、四方、ただの薄茶の世界だけというところもあり、その時は、元よりこの辺は紅葉のきれい所ではなく、先を期待して、篭石を過ぎれば、足を止めてしまうところも出てくるだろうと思っていた。つまりは、暗に、茶ノ木平も日光の山のうち。紅葉は素晴らしいだろうと根拠のない期待をしていて、予定では、茶ノ木平に行く前に、明智平方面にも下って紅葉を楽しむつもりでもいた。
(もうダメか)

(東からの稜線に乗った)

(日光連山の一角が見えた)

(あるにはあるが、焼けた感じ)

(ぎりぎりのアップ)

(篭石に到着。気になることがある。ここを篭石としているが、地図上の記載は少し東側になっている。そちらに行ったことはない)

(不動様と首欠け石仏は左の四角い岩の上に鎮座していると思ったが…)

(奥の岩に石仏の胴体部だけらしいのが2基。以前には、この岩の上には何もなかった)

(お札が2枚)

情況は好転せず、くすんだ紅葉を見ながら篭石に到着。この先の期待は持てなくなった。せめて、ここにある石仏だけでも拝めれば幸いと、周辺を眺めたが、見慣れた岩ではない奥の岩の上に、石仏に見えなくもないような石が2基乗っているだけで、他には何もない。14年前、そして9年前にもここを通過しているが、その際の記憶では、石仏と首欠けが2体あったはず。現に、帰ってから、その時の写真を確認すると、不動様と首欠けの2体が写っているし、今回見かけた石碑まがい2基が乗った岩には何も写っていなかった。何らかの事情で手が加わったことは確かだ。下に転げ落ちたのかと岩の下を覗き込んだが、それらしき塊は見えなかった。担ぐには重過ぎるだろうし、いったいどういうことになったのだろう。もしくは自然崩壊? 新らしげなお札が2枚、重なって横に倒れていて寂寥を誘ってしまう。
ところで、ここの篭石までが『山と高原地図』に記されたコースタイム1時間50分とばかりに思っていた。いつものように休み休み、ゼーゼーで登りながらも1時間半もかからず、今日は元気かなと思っていたが、同地図をよく確認すると、1時間50分とは明智平分岐までのタイムと知ってがっくり。14年前は、篭石までは1時間、分岐までは1時間15分で歩いていた。往時の歩きぶりでは、すでに三角点も過ぎ、分岐に至っている時間だ。嘆いたところでどうしようもない。現実の体力がそれなのだから。
(茶ノ木平へ)

(茶色に近い黄色)

(1618m三角点)

石仏にがっかりして茶ノ木平に向かう。空腹で腹が鳴っているのに、別に休憩したい、食べたいといった気分にはならず、水を一口飲んだだけでこのまま歩き続ける気力だけはある。
ほどなく1618m三角点に到着。空きっ腹も限界そうなので、標石に腰かけて無理におにぎりを食べていると、反対側からやって来たオジサンが指差しでどいてくれとのこと。何のことかわかりかねたが、標石を撮るらしい。そういうことかと傍らの草むらに移動した。オジサンの話を聞くと、「今年の紅葉はさっぱりダメ」とのこと。何やら、気象学的な理由を並べていたが、左から右へと流れていった。自分には、この先がどうなのかの結果が一番の関心事であり、不作の原因はどうでもいい。オジサンは明智平から登って来たが、明智平方面も茶ノ木平もさっぱりだったとのこと。栃木言葉なまりのイントネーションだったから、歩き慣れた地元の方だろう。言うだけ言ったら、さっさと元来た方に戻って行った。三角点標石の撮影で寄り道するとは律儀な方だ。しかし、聞いた話の内容からしてそういうことか。やはり、紅葉は期待できないなと改めて思った。
(明智平分岐。そちらに行ってみた)

(期待できそうにはなかった)

(戻って茶ノ木平へ)

(日陰の道には霜柱)

明智平分岐から、少しだけ下ってみた。確かに、尾根の周辺に黄色やら赤の色彩は先にも確認できなかった。展望台まで200m下って、撮った写真は華厳の滝と中禅寺湖だけでは寂し過ぎるし、相応の見返りを得られそうにもない200mの登り返しもまたつらい。明智平への寄り道はやめにした。正直のところ、オジサンから情報を聞いて幸いではあった。紅葉が輝いていたとしても200mはきつそうだと思っていただけに、体の良い理由付けになったことは確かだ。ただ、オジサンの目が肥えていたとしたら、逆に損した感じになったかもしれない。今になって、自分の目で確かめるべきだったかなと思ったりもしている。
(標識に合わせて茶ノ木平に向かうが、展望広場も含めてこの辺一帯が茶ノ木平ではなかろうか)

(この中に石祠があるはず)

(展望広場。正面に男体山)

色のない殺風景な景色の中を、こんなものかと思いながら茶ノ木平に向かって歩いているとふと思い出した。2年前のこの時期、とはいっても10月19日のことだが、歌ヶ浜から茶ノ木平に出て半月山に行った。あの時、茶ノ木平には豪勢とまではいかないが、赤も入った色づきが確かにあった。今年は紅葉が遅れていたとはいっても、少しは居残りを含めてあってもおかしくはない。視界にそれすらない。かろうじてシラカバの黄色が目に入ったが、陽があたっているにも関わらず、鮮やかさからは程遠い。確かにオジサンのおっしゃっていたとおりなのかもしれないし、来るのが遅過ぎたのかもしれない。もう、頭の中には、紅葉への期待と執着は薄れ、初めて歩く林道への尾根下りのことしかなく、それも、ここまでのレベルからして、紅葉への期待はなくなっている。
淡々と平坦な道を歩いて茶ノ木平の展望地。だれもいない。男体山は中腹に雲がかかってはいるものの真正面に見えている。篭石の石仏がダメなら、ここまでは、お粗末ながらもこれを見られただけでもラッキーかもしれない。日光修験の石祠に覆いかぶさったコケはさらに分厚くなっている。剥がしてしまいたい衝動にかられたが、それをやったらバチあたりになるかも知れず、そっと手を合わせた。
(戻って半月山方面へ)

(わかりにくいが、八丁出島が見える。ここからでは色付きは感じない)

(半月山だろう)

さて、ここからが次の目的の林道への尾根下りになる。あそこからだろうなという見当はついている。これまで、三角点オジサンとしか会うことはなかったが、軽装の男女と出会った。欧米系の外人さんだった。先方からコンニチワと声をかけられた。おそらく、半月山の駐車場から登って来たのだろう。続いて単独さん。この方は東南アジア系の外人さん。山中で出会った方々はオジサンを含めて4人だけだった。いや、この先のおかしなところで青年にも出会った。
半月山方面に下る途中で右手に中禅寺湖が見えた。樹間を通してだからすっきりはしないが、八丁出島も見えた。新聞やらに出る定番の紅葉写真とは別物で、ただの白茶けた半島にしか見えず、これが半月峠からの展望なら、いくらか間近で色彩も感じられたかもしれないが、ここから見る限りでは、それもまた微妙かもしれない。現に、下野新聞は知らないが、毎年のように写真掲載される全国紙に今年の掲載はなかったと記憶する。国政選挙やらアメリカ大統領選挙があった。悠長に一面に八丁出島の紅葉でもあるまい。
(南尾根や東尾根はここから直進。長手沢を遡行した際にも、普通はここに出る)

ハイキングコースはやがてカーブになった。ご親切にも、ここには直進しないように以前からロープが張ってあり、標識まで置かれている。ここを越えて直進するわけだが、これを越えたのは過去に2回。11年前にハイトス氏と手焼沢、茶ノ木平、長手沢を周回した時。そして、9年前にアカヤシオ満開の手焼沢左岸尾根を歩いた時。一旦、1575m標高点を目指すが、11年前の時には1575mを経由せず、ストレートにロープゲートに出て茶ノ木平に寄って下っている。つまりは、1575mに出るのは今回が2回目となる。ヤブとはいっても、シカ道なのかは知らないが、低いヤブの中に細い踏み跡もあって、何ら問題なく歩ける。
(1575mピーク)

(男体山。雲が停滞している)

(日光白根山方面)

(そして半月山)

1575mからの眺望は良好。半月山は左寄り正面で、日光白根山や錫ヶ岳も見える。少し白くなっているようだから今年の初冠雪かもしれない。ただ、白根山はいつでも白く見えるから断定の自信はない。ここまで歩いた限りでは最高の展望地だった。
さて、ここから東に下る。9年前は南の尾根からここに登って来た。南尾根は部分的に踏み跡も明瞭で、テープもかなりあった。果たして、東尾根はどうだろう。派生分岐する尾根がいくつかあるので、間違ったらややこしい歩きになってしまう。林道下の長手沢にコンパスを合わせた。沢に出られれば何とかなるだろう。
(南尾根。この先で東尾根が分岐する)

(東尾根に下る。敢えて記すが、南尾根も東尾根も1575mピーク起点での自分の勝手な呼び名だ)

(役立たずながらも、あれば安心するテープ)

(薬師岳方面。尾根の紅葉をこの時点では期待していない)

下ろうとしたら、ヘルメットをかぶった青年が登って来た。普通なら、こんなところで人に出会うのはまずあり得ない。南尾根から来たのか、東からなのかはわからない。尾根が分岐するのはこの少し先だ。沢歩きで手焼沢か長手沢からでも登って来たのだろうか。挨拶しただけで、その辺は聞いて確認もしなかった。おそらく、青年も驚いたろう。
歩きやすい尾根だった。ヤブは薄い。踏み跡らしいのを見かけたが、散らばって一本道になっているわけではない。おそらくは気まぐれなシカ道だろう。意外なことに、ボロボロになったピンクテープを見つけた。こんなところを歩く奇特な方もいたようだ。この先、テープをいくつか見かけたが、紛らわしいところに取り付けられているわけでもなく、無意味なテープといえばそれまでだが、ここを歩いた人もいるのだなと思えば安心してしまう。先で2度ほど、尾根分岐で判断がつかなかったが、コンパスの示す方に下った。
ツツジの紅葉が出てきた。見られたものではない色づきだが、南尾根同様に、この東尾根もツツジが多いようで、その時期に改めて歩いてみたいものだ。ただ、結果としてのことだが、この東に下る尾根は下る分にはよいが、上り使用となると、取りつき部分の視界内の尾根型は不明瞭で広く、かなり迷うかもしれない。いずれは集約されて一本になるが、それまでは不安が付きまとうだろう。
(出てきた。この程度でも、あれば良しとするが)

(消えた)

(復活。黄色が加わる)

(黄赤のコラボ)

(今度はオレンジか)

1450mあたりから紅葉が目に付くようになった。結構賑やかで、細尾峠からの出発からここまでの区間の中、初めて足が止まるようになった。紅葉見物は何度もあきらめていたが、気分的に楽しくなってきた。ただ、群れて密集しているわけではない。樹々がさほどに多くない疎林帯では致し方がない。いずれにしても、茶ノ木平に期待してがっかりした紅葉は少なからず挽回した気分だ。
傾斜がさほどにきつくもない尾根を紅葉を楽しみながらゆっくり下った。尾根そのものは広いながらも明瞭で、あっちに行っては覗いて見たりといった歩きになっている。紅葉の主体は赤と黄だが、オレンジ色も加わる。この時期としては、この尾根のこの付近が紅葉ピークなのかもしれない。やはり紅葉見頃の標高は下がってきている。
(ちょっと濃過ぎて好みではないとしながらも撮っている)

(周囲の風景が明るく色づいている)

(賑やかだねえ。茶ノ木平とは別の世界だ)

(唯一の細尾根箇所。危険はまったくなし)

(これは絵になる)

(また真っ赤)

(真っ黄色になるにはもう少しかな)

(紅葉がちょっと寂しくなった)

(これは陽の当たり具合で見事にもなるだろう)

(ワイヤーロープの残骸)

(惜しい。こちらが日陰になってなかったらなぁ)

(アップなら何とか)

(沢音が高くなったのでそろそろ終わりかなと思ったら)

(やはり。ここは急斜面で、先端部でさらに傾斜が増している。まともに下れもするだろうが、用心して、幾分緩そうな左にトラバースして下る)

(こちらにもあったか)

(いろんな色が混在している)

(これで尾根の紅葉見物は終わり)

(沢に出た)

飽きることはなかった。そのうちに沢音が聞こえてくる。そして、まだ紅葉見物にうつつを抜かしていたが、例外なく次第に明瞭な尾根型は消えて行き、急斜面の下に長手沢が見えた。はて、ここはどうやって下ろう。直進すればヘタをすれば転げ落ちそうだ。沢を見ていると、上流に小滝がちらりと見えた。あの小滝を目標にしようか。対岸にはドラム缶も見えている。もしかしたら、あれが林道かなと思ったりもした。直進の急斜面は避け、左に慎重にトラバースしながら下って沢に出た。ただ、沢を渉れそうにはなかった。いや、登山靴なら簡単に渉れたかもしれないが、スパイク地下足袋では石に引っ掛けて転倒する危険もあるので、用心して下流まで足を運び、ここならといったところを無事に飛び跳ねて対岸に出た。小滝を見に行こうとしたはいいが、かなり下流に出ていたので、対岸側から上流に向かったものの、確認はできなかった。残念。
(ドラム缶。思うに、このドラム缶はここで使われたのではなく、上の林道から転がしたのだろう)

(小滝というには無理があるが)

(長手沢下流方面。11年前にここを下っているが、その時、もうこの辺になると、石が多くて飽きていた。フィニッシュでハイトス氏の水浴になる)

(窪みがあったのでここを登ったが、急で、右下は沢なので緊張した)

(緩やかになって一枚)

(林道に出た。入口は知っているが、横切ったのが一回のみ)

ドラム缶の場所に行った。林道はなかった。道らしきものもない。一升瓶が埋もれていた。とりあえずは沢沿いを上向きに行けばいいのかと先を見たが、沢に落ち込む急斜面になっていて横切れそうにはない。左を見上げると、平らな直線になっているところが見え、あれが林道だろうか。急斜面の方向に向かい、危なかっしく木につかまりながら左に上がると、ようやく林道に出た。ほっとした。しかし、かなり緊張した。
(林道歩き。逆向きになったカーブミラーもあった)

(林道沿いで)

(この辺もなかなかいいじゃない)

(気持ち良く歩いている)

(赤はないのかなと思ったが)

(あった)

(記念に撮ってみた。下の黒っぽいのが自分)

(林道をまだ先に行っているが)

(この辺で、行き過ぎていることに気づいて戻る)

現役でも使えそうな幅広の林道だった。崩れや陥没もない。この林道沿いもまた紅葉は盛りで飽きることはない。ただ、紅葉には近づかない方が無難で、間近に見る葉はかなり焼けたり穴あきだったりする。敢えて記すが、ここまでに記す「紅葉」、この先もまたしかりだが、あくまでも見た目の紅葉であって、質の面ではかなり劣っている。これは出発してから変わりはなく、遠目からの色づきの感想でしかない。ただ、東尾根から先は何とか楽しめる紅葉だった。
しばらく林道を歩いたが、気になってGPSを確認すると、登山道に上がる予定のコースよりも先に下っていた。戻る。このまま林道を歩いても旧道には出られるが、その後がきつくなる。適当なところから登山道に出た方がいい。
(ここから登る。左は急な尾根になっている。行き着くところは同じだろうが、谷側が楽に思えた。実際はそうでもなかった)

(ここでも足止めを食らう)

(切りがないねー)

(ようやく登山道らしい横切りが上に見えた。直下がきつくて写真どころではなかった)

(登山道に出た。左から上がって来た)

ここから先がくたびれた身体にはつらかった。左は急な尾根で、右手は緩そうな谷。細い水が流れている。ここは谷側の歩きを選んだ。シカ道だろうが、踏み跡らしいのもあった。ここの谷間もまた明るく、紅葉は豊富だ。しかしきつい。スマートには登れない。シカ道は散乱したので、歩きやすいところを登る。地下足袋の中の指がもつれて歩きづらく、さらにスパイク付きでも湿っていて滑る。ようやく、上に登山道が横切っているらしい景色が見えた。傾斜は増した。ハーハーしながら、樹を手がかりに、あそこで休んで、次はあの樹と目標にした。この繰り返しでようやく登山道に出た。
(細尾峠に下る)

(細尾峠に帰着。日陰で寒かった)

真上に送電線が通った開けた所だ。雨量観測所の下になる。ここを「防火帯」と記されている方もいるが、送電線(とはいっても、電柱の電線レベルだが)の下を通っているからには広い巡視路とすべきかと思う。そんなことはともかく、登山道を下る。すぐに樹林帯に入り込み、テープが賑やかになったところで細尾峠が見えた。登山道区間がやけに長く感じた。
峠に置いてある車は自分の一台だけだった。到着は13時40分。4時間40分の歩きだった。短時間歩きのわりにはくたびれたし、神経も使った。とにかく、林道からの這い上がりがきつかった。逆から歩いてみたら、おそらくは、今、直後からだとしても無理かもしれない。林道に下ったとしても、東尾根に取り付くまでにかなりのストレスが加わった労力を使いそうだ。
(旧道に車をとめて)

(同じく。よほどに東に延びる別林道のいつものスポットに行きたかったが、前回、クマに出会ったことと、くたびれていたこともあってやめた)

旧国道を下っての帰り道。紅葉は続いている。道はカーブになり、その路肩に車が一台。この車は来る時にもあった。その先には、件の林道が続いている。あの青年の車だろうか。ヘルメット=沢歩きとすれば、林道終点から沢歩きをして、早々に東尾根に登ったとも考えられる。まぁ、他人様のことはどうでもいい。あの青年の車とは限らない。ただ、ややこしそうな下りになってしまったが、東尾根を上りで使うとすれば、この林道分岐から歩いて、長手沢を渉り、どこでもいいから、尾根が見えたらそこを上がり、東尾根に乗り上げるのが無難で安全な歩きかもしれない。
来年以降の話だ。今回の歩きで、ツツジの時季に南尾根と東尾根を結んで歩いてみたいと思った。もう記憶はうっすらだが、9年前に南尾根を歩いた際に、細尾峠から今回の林道を横切り、地蔵滝の駐車場まで尾根伝いに下っていた。あの時は、地図を確認することもしなかったが、何で、こんなところに林道があるのだろうかと不思議に思ったものだ。ここで今さらながらに納得した。
国道に入った。いつもなら紅葉でキラキラしていた通りも、陽を浴びているのにくすんでさっぱりだった。
(今回の歩き)

(この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
久しぶりのバリ歩き、お疲れさまでした。
数年前に篭石の石像の写真を撮ろうとして、かなり撮りずらくておかしいなと思っていました。以前は簡単に写真が撮れたのに。やはり位置が変わっていたのですね。それに不動明王の首も無くなっていて。
茶ノ木平は元々紅葉する木が少なかったと思いますが、東尾根では当たりましたね!「切りがない」の写真はとても綺麗です。
1575mは来年にでもツツジ見物で行ってみようかなと思っていたところです。もちろん立ち寄りで。東尾根なんて無理ですから。
篭石の石仏に関しては、事情がよくわかりません。奥の岩に乗っかってしまった不動明王らしき石碑は目鼻立ちもはっきりせず、果たしてあの不動明王だったのかは疑問です。それ以前に、手前から奥に移動させる必要があったのか。移動させたとして人力では無理ではないでしょうか。いったい何があったのでしょう。
東尾根の紅葉は、茶ノ木平に落胆し過ぎての反動のようなもので、きれいに見えましたが、ぶなじろうさんのよう、日光芦沢に立て続けに行くような、目の肥えた方には物足りなく思えるかもしれません。自分には意外感もあって楽しめました。
南尾根のアカヤシオは、1155m標高点あたりからチョボチョボと始まりますが、本格的になるのは1450m付近からでした。圧巻は、やはり1575mの直下からですね。立ち寄りで行かれるのでしたら、少しは下ったみることをお薦めします。
東尾根は、足尾側から行った場合、細尾峠に向かうカーブの途中で林道入口が左に見えますから、何も、細尾峠から危ない思いをして行くよりも、林道を20分も歩いて、長手沢を渉って小高い斜面を登って行けば、次第に尾根も明瞭になります。東尾根もまたアカヤシオが楽しめそうな雰囲気でした。
ブログいつも読ませていただいておりますが、コメントするのは初めてになります。
細尾峠界隈の地味尾根が好きでよく歩いています。過去にはたそがれさんの小保木沢林道の記事など、とても参考にさせていただきました。
さてこの日、標高点1575m付近ですれ違ったのは・・・私です。たそがれさんも思ってらしたように私も「まさかこのルートでは人に会うこともあるまい」と思っていたものですから、前方から熊鈴の音と共に木陰から登山者が現れたのに驚いてしまい「こんにちは!」とあいさつするのが精一杯でした・・・まさかその方が「たそがれさん」だったとは思いもよらず・・・もっとお声掛けすればよかったと後悔しています。
私の行程は、たそがれさんご推察の通りでして、長手沢林道入口へ車を止め、終点まで歩いて沢を徒渉して東尾根に取り付きました。たそがれさんとは逆回りコースでした。
沢からの取り付きポイントは確かに急斜な場所が多いですよね・・・私は「ふみふみぃ」さんの過去記事(2019.7.27)を参考にさせていただき、林道終点の先の尾根へ取り付きました。
今回たそがれさんにお会いできて大変光栄です・・・またいつかお会いできる日を楽しみにしております。
ここのところブログへのコメントがすっかり少なくなり、まめに確認することもなく、返信が遅れましたことをお詫びいたします。
しかし、あの時のヘルメット姿の方からのコメント、まして、たそがれオヤジのつまらないブログを読んでいただいていることも含め、かなり驚いております。実は、おかしなところを歩く方もいるものだなと、去り行く後姿を写真撮らせていただきました。
そうでしたか。あの林道入口に置かれた黒い車は水の森さんのものでしたか。はっきりとは記しませんでしたが、おそらく間違いはあるまいと思っていました。ただ、ヘルメット姿でしたから、どうやって、どこから長手沢に入られたのか気になっていました。
参考にされたのはふみふみぃさんの記事でしたか。いつも、さらっと眺めては、相変わらずにマニアックな歩きをされているものだと感心し、記憶には残っていなかったため、改めて読みなおししました。なるほど。ツツジの季節には、南尾根とつなげて歩いてみるつもりでいますから参考になりました。
水の森さんは細尾峠周辺がお好きとの由。私には久しぶりの細尾峠でしたが、今回、歩いてみて、松木沢方面を歩く自信もなくなっていたところでしたから、細尾峠の界隈をもう少し地図を深読みしては歩いてみたいと思っています。
自分には、足尾の山のマニアック歩きをされている方に、俗っぽい表現ですが、つい好感を持ってしまいます。いずれ、どこかでお会いできますことを楽しみにしております。