たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

野反湖にニッコウキスゲを見に行った。目当てのカモシカ平には咲いていなかった。雨にあたり、泥だらけになって、いったい何をしに行ったんだか…。

2020年07月23日 | 近所じゃない群馬県の山
◎2020年7月16日(木)

キャンプ場入口駐車場(8:28)……エビ山登山口(8:54)……エビ山(9:52~10:09)……高沢山(10:55)……カモシカ平(11:21)……高沢山(11:54~12:06)……エビ山(12:35)……湖畔遊歩道分岐(13:21)……遊歩道(13:32)……駐車場(14:59)

 前回の芳ケ平のワタスゲ同様に、今回のニッコウキスゲも上毛新聞の記事ネタが半分。14日付けで「野反湖、黄色く染まる」の見出し記事。「中之条町観光協会によると、開花が例年より10日ほど早い。20日ごろまで楽しめるという」とあった。「記事ネタ半分」としたのは、それ以前からカモシカ平一面に咲くニッコウキスゲを見たいと思っていたからだが、当初は12日の日曜が晴れ日の予報で、その日に行くつもりでいて、急遽出勤になってオジャン。その代休を16日に取った。天気予報は、この日だけ日中の傘マークがなかった。その間に上毛新聞の記事を見たことになる。ニッコウキスゲのことを中之条の地元ではノゾリキスゲと呼ぶらしい。別に固有種ではなく、正式名称は「ゼンテイカ」。「ニッコウキスゲ」そのものが俗称とのことだ。以下、一般的なニッコウキスゲで統一表記する。
 ニッコウキスゲを見るだけなら霧降高原の方が近いが、もう終わってしまったようなので野反湖に目を向けたわけだが、どうせ見るならと山歩きを兼ねてカモシカ平を敢えて選んだ。今回の歩きコースは9年前、花とは無縁に9月に歩いたことがあり、それを元にした。その時は野反峠からエビ山、カモシカ平を経由して大高山まで行った。帰路は三壁山経由でキャンプ場。暑さもあったのかさすがに力尽き、湖畔遊歩道歩きの予定がバスに乗って峠に戻ったというオチが入る。今回は時期的に天気予報を真に受けるわけにもいかないところもあって、キャンプ場出発、戻りにした。
 結果はブログのタイトル通りということになる。新聞記事に惑わされず、冷静にカモシカ平の開花状況を調べてから出向くべきだったことが悔やまれる。12日に行った方のヤマレコ記事に「カモシカ平はまだ咲いていなかった」とあったことを知ったのは帰ってからのこと。上毛新聞の「20日ごろまで楽しめる」がカモシカ平を含めてのことと思い込んでしまっていた。これは後の祭り。この12日に行かれた方だが、また19日に行かれていて、やはりさっぱりだったとのこと。
 実はニッコウキスゲ以外に目当てがもう一つあった。野反湖に注ぐニシブタ沢に魚止めの滝というのがあって、これは落差も4~5m程度でかなりのマイナーな滝だが、ネット写真で見る限りは幅があって水勢がある。自分好みで、この滝を見たかった。滝の情報は極めて少なく、まして地図に滝マークはない。入渓からどれくらい時間がかかるかもわからない。よほどにそのまま沢登りでエビ山に出ることも考えたが、これはかなり無理があり、周囲の植生の様子からして、稜線下はササの密ヤブ続きになっていたようだ。それはともかく、汗をかいた後の単調な沢歩きの方が気持ち良いのに決まっているから、下山後に入渓することにしている。先行して、ヒルにでもやられてカモシカ平をあきらめることにもなりかねないし。

 そんなわけで、まずは野反峠の駐車場に車を入れる。車は数台。ここからなら整備されたキスゲ園地を手ぶらで簡単に楽しめる。上毛新聞に掲載された写真はここの園地のニッコウキスゲだったようだ。駐車場からは見えない。案内板も目に入らない。探し回っている余裕もないので、帰路に立ち寄ることにして、キャンプ場の駐車場に下った。とにかく雨が落ちてくる前にカモシカ平に行ってニッコウキスゲを見ておかないことには2時間半もかけてやって来た甲斐がない。

(駐車場から。案内所の左に黄色いのが見えた)


(キスゲ園だった)


(良い構図なのだが電柱と電線がねぇ。外すとニッコウキスゲが消えてしまう)


 下の駐車場には車が5台ほど。皆、カモシカ平のニッコウキスゲ目当てかと思ったが、後で知ったことながら、大方は釣りだったようだ。天気はどんよりして薄暗く、いつ雨になってもおかしくない。出がけに念のためにチェックしたGPV気象予報では、少なくとも午前中は雲もかかっていなかった。ここで履物の選択を失敗。登山靴にすべきだった。ためらうことなく地下タビを選んで後悔することになる。
 案内所の裏手に黄色いものが見えた。寄り道すると、ニッコウキスゲの群生地だった。まとまって咲いているのを見たのは初めてかもしれない。なかなかいい感じだ。薄いピンクのガマ補のような花が混じって邪魔をしているところもある。これはイブキトラノオ。野反湖を入れて写真を撮る。どうしても電線と電柱が入ってしまう。自分としてはカモシカ平に期待をかけていたので、車を降りてすぐにここで見られるとは予想もしていなかった。ここは後でゆっくり回ろう。

(堰堤橋を渡る。正面にエビ山)


(チップを敷いた遊歩道)


(ニシブタ沢)


(対岸の釣り人たち)


 遊歩道を先に行く。橋状の堰堤を渡ると湖畔に釣り人が何人も見えた。そしてキャンプ場。何だ、ここまで車も入れるのか。それを知らなかったから、さっきのキスゲ畑も見ることができたわけだが。先にも第二キャンプ場があるようだ。地図看板には駐車場付近がバンガローエリア。この辺りはテントエリアとなっている。
 ニシブタ沢が右から入る。この沢はニジマスが産卵する沢ということで、禁猟になっている。この時期なのか、予想以上に水量があって勢いもある。だが、出口を見る限り、遡行に苦労するレベルではない。後のお楽しみにしてエビ山に直通する登山道に入る。

(早々に出会う)


(ノアザミがいたるところにあった。きれいとは思わないが、トンボや蝶の付きは他よりも多かった)


(登山道から野反湖。八間山の頭は隠れている)


(泥濘が多い。この辺が笹平)


(こうなった)


 左右のササが高い登山道だった。二人並んで歩くには狭い幅。ササが含んだ露を衣類がたっぷりと吸い込む。すぐに上下ともにグッショリとなった。今さら合羽を着ても遅い。いずれ乾くと思っている。やがて泥濘があちこちに出てきて、布の地下タビが泥水を吸い込み、タビの中がグショグショになり、水が溜まってガボガボと音を立てる。不快極まりない。ただマシなのは、風が通り抜けていて、メガネが曇らないことだが、梅雨時ゆえに蒸し暑いことに変わりはなく、頭から流れる汗がメガネに落ち、その都度に手拭いで拭う。これが長時間ならお手上げだ。登山口からエビ山までは一時間コースとあったから我慢の範囲内。さらに幸いしたことは、まとわりつくはずの蚊、アブ、羽虫の類はいず、まして、頻繁に足元を見ていたがヒルもいないようであることか。もっとも、しっかりと虫除け、ヒル除けはスプレーした。今日は、これらの害虫には最後まで縁がなかったし、うっとうしいクモの巣にたかられることもなかった。
 いくらか平らになって笹平。ササは相変わらず高い。地下タビは泥んこになり、ヨレヨレになったトレパンは見るからにみすぼらしい。ここはやはり登山靴にスパッツスタイルが正解だった。
 視界が良くなった。すっきりではないが樹の間に野反湖と八間山が見える。そういえば、野反峠から下る途中にある八間山登山口に10人ほどのハイカーがたむろしていた。同じグループと思われるが、全員がオッサン。10人もいて色気のない山歩きだ。あの時間だし、白砂山は無理だろう。

(野反峠をアップで。画面の小さな半島の向こう側が黄色に染まっている)


(エビの見晴台)


(野反湖の眺め)


(草津白根山方面)


 視界が開けてきて、左側のササが幾分低くなると展望地に出た。ここがエビの見晴台だった。ニッコウキスゲがポツンポツンと咲き、その間にノアザミ。そして何だか知らない白や黄色の白い花(ハナニガナとシロバナニガナ)。相変わらずすっきりしない天気だ。これから晴れるようでもあり、黒い雲が浮かんでもいる。草津白根の山腹は見えるが上は隠れている。雲は薄雲だから、向こうは晴れるかもしれない。野反峠の駐車場が見えた。20台ほどの車が見える。随分と増えた。ニッコウキスゲ目当ての観光客だろう。地下タビのガボガボはなくなっていた。けっして乾いたわけではない。泥濘が消えたので、歩いているうちに水気が外に排出されただけのこと。気にしないでいられるだけでもよいが、足は相当にふやけているはずだ。だが、ここで泥濘が消えたわけではない。この先、湖畔の遊歩道に出るまで続いた。

(エビ山近く。ササは低くなってはいるが、道はかなりグシャグシャ)


 今度はクルマユリが出てくる。こういった花の名前は大方、発行元はよくわからないが持参した『野反湖周辺ガイド』のパンフレットに出ていた。花を見ながらパンフを広げて花の名前を知る。なければ後で調べる。そしてすぐに忘れる。殺風景なササ原続きでは飽きてくる。花でもあれば歩く気分はまた違う。ただ、前回同様に、自分のブログにやはり花は似合わない。後は適当に、アバウトに記すが、間違っているのもあるだろう。前述のイブキトラノオ、ハナニガナ、シロバナニガナしかり。オレが知っているわけがない。

(花が閉じているのが随分とあった)


(エビ山)


 花が途切れてササだけになった。ニッコウキスゲは閉じているのもあって、これからの咲きだろう。この辺は開花が遅いのだろうか。ふと気になる。カモシカ平のキスゲは大丈夫だろうか。エビ山と標高は同じくらいだ。アヤメを見てエビ山に着いた。このエビ山の山名は恵比寿様に由来している。「恵比山」の山名板も「エビ山」の標柱もある。野反峠側の弁天山には弁財天の石像と石祠があったが、ここには石像も祠もない。記憶の違和感が気になり、9年前の写真を帰ってから見ると、山頂には公的なエビ山の山名板も標柱もなく、手書きのエビ山標識は添えられているだけだった。それでいて、この先の標識にはしっかりとエビ山の標示が今同様にあった。この稜線コースも、ニッコウキスゲだけではなく花のスポットとしてメジャーになりつつあるのだろう。まして、この先には、最近開通した「ぐんま県境稜線トレイル」がある。自分としても、この県境トレイルには興味のあるところだ。
 草津白根の方は明るくなってきているのに、こちらは相変わらずに薄暗い。いつ雨が降ってもおかしくはないと、一服している間にやはり雨が音を立てて落ちてきた。ここまでも霧雨程度はあったが、晴れれば衣類も乾くと思っていたのは甘かった。濡れてまでもカモシカ平には行きたい。それが目的だ。どうせハイキングコース歩きだ。ここに至って仕方なく合羽を着た。下半身は濡れた状態だし、肩に下げたカメラもあったので、雨除け代わりの中入れが必要だったので上だけは合羽にした。ついでにザックカバー。ザックにはストックを両サイドに結わえていたので、そのままではカバーもかけられず、この先はストック歩きになってしまった。
 余談だ。合羽は7~8年ほど前に数万円したモンベルのを持っているが、使うことも数回で(もっとも、合羽を着込むのは嫌いだったし)、使った後は必ず乾かしてはいたが、先日、たまたま広げたら、縫い目の内側の長いカバー部分の接着が剥がれていた。これでは縫い目から水も入り込んで使い物にならないだろうと、ワークマンで4900円で買った合羽を早々に使うことになった。着た瞬間にやけに涼しいなと感じた。雨粒は浸み込みもせずに丸い粒になったが、果たして何回使えるのか。激しい雨になったら傘を出した方が無難かもしれない。少なくとも防寒としては使えそうにない。

(高戸山)


(その下のカモシカ平。後で会ったオバチャンは、ここから黄色く見えたとおっしゃっていたが)


(草津白根の雲は大分上がってきた)


 高戸山までのコースタイムは45分。これのクリアはまず無理だろう。エビ山は1744m、高戸山は1906m。下って登ることになる。それよりも気になるのが、高戸山からカモシカ平に下って、その帰りの登り返しだ。前回はその先まで行ったから、高戸山に戻ってさらに三壁山に行くのにバテた。まして今は雨。慌てると体力を消耗する。その雨の中、高戸山の先にカモシカ平が見えた。黄色に染まったところは見えない。やはりハズレだったかなぁとがっかりする。この黄色の染まり具合については、後でちょっと首を傾げることになる。

(高沢平)


(この辺は花もなく)


(高沢山)


 ゆるやかな下りで鞍部からしばらくは平ら。まだ泥濘が出てきたりする。ヘリを歩いたが、タビへの浸み込みは避けられない。高沢平の標識を確認。ここから登りになる。登って行くと、陽が出てきた。わざわざ合羽を着ずとも傘で十分だった。この先、駐車場に戻るまで、霧雨にはなっても本降りの雨にあうことはなかった。結局、ワークマンの合羽の威力はわからずに終わった。
 休み休みで登る。傾斜は緩い。ササも低くなったが、泥状のところが多くなった。足型は付いていず、今日、ここを歩いているのはオレだけのものだろう。高沢山到着。45分を46分。まぁ上出来だ。
 立ち休みしてコンビニサンド一切れ立ったままで食べてそのままカモシカ平に下る。今の晴れ間も信用できない。先を急いだ方がよいだろう。合羽は脱いでザックカバーも畳んだ。ストックも戻す。

(県境稜線の分岐。左から来て、正面を行く)


(カモシカ平。黄色エリアは見えないが)


 下りの先は長野県との県境になる。右に行けば三壁山、地蔵峠、愛宕山、白砂山となり、左は大高山、赤石山、横手山となる。俗な横手山にこだわっているのもその辺にある。つまりは県境稜線。
 正面にカモシカ平が見え、草原の中を道が登っている。どう見ても緑のササ原であって、ノゾリキスゲの黄色は見えない。ダメかと思いながらもカモシカ平に下る。途中でニッコウキスゲはいくつも見かけた。早いとか遅いのか、開花せずに閉じたままのもある。キャンプ場のキスゲ畑ほどではないものの、量の過多はともかく、開花しているのを楽しめるだけでもありがたい。

(カモシカ平への下りで1)


(カモシカ平への下りで2)


(カモシカ平への下りで3)


(カモシカ平への下りで4)


(カモシカ平から)


(カモシカ平)


 カモシカ平の鞍部まで下った。この先に黄色い花はなかった。何度見回してもなかった。やはりダメかと引き返すことにするか。一面がガスならともかく、しっかり見晴らせる。低いササの間に黄色の花はない。上に行って見降ろすとあるかもしれないといったことはあり得そうもなく、ササヤブを漕いで探し回っても仕方がない。群落でもあれば、ここからでも目に付くはず。帰ろう。期待したのにがっかりだ。そもそもモンキーバナナ状のツボミそのものがあまり見当たらない。終わったということはあるまい。あるいは不作なのだろうか。

(戻りで1)


(戻りで2)


 戻り登りになる。道端のニッコウキスゲを改めて写真撮りして行くと、上から嬌声が聞こえてきた。自分よりは確実に年上のオバチャン2人(A、Bとする)。女性の嬌声は若く聞こえるもので、少しばかり惑わされた。足元が悪かったから滑って声を出したのだろう。目的は自分と同じのようで、カモシカ平のニッコウキスゲ。キャンプ場から三壁山を経由し、帰りはエビ山からキャンプ場に戻るとのことだ。よせばいいのに咲いていなかったと言ってしまった。とはいっても、ここからでもカモシカ平の様子は一望だ。しばらく躊躇していた。それを見やって自分は高沢山に戻ったが、どういうわけか話し声がずっと聞こえ、もしかしたらオレの余計な情報でカモシカ平まで下らなかったのではないのかと気になったが、咲いていない以上は仕方がない。

(カモシカ平のアップ。後で思うに、薄い茶色が黄色に見えなくもないか)


 分岐に近づいてカモシカ平を振り返る。あれっ、黄色く見えるところがある。カメラをズームにして撮って見てみると、ササが枯れたか薄茶に変色したところだった。果たしてニッコウキスゲの群生だったらどうしたろうか。おそらく戻りはしないだろう。

(カモシカ平に向かうオバチャンたち)


 高沢山に戻った。ここで休憩しよう。ザックからシートを出して倒木に敷いて腰をかける。用足しをしようと立ち上がってトレパンを下ろしかけるとオッサンがやって来た。中断して上げる。オッサンもまた三壁山の方からだ。これからカモシカ平に行くとのこと。また余計なことを言ってしまった。ここまで来たから行くとのこと。そんなやりとりの間に、オバチャンCとDがエビ山の方からやって来る。そしてオバチャンA、Bが到着。やはり、カモシカ平には行かなかったそうだ。ここでオバチャンDがAにスマホを預けて高沢山の標識をバックに写真撮りなんかしている。Cにカモシカ平のニッコウキスゲは咲いていなかったと言うと、そんなことはないと反撃された。エビ山からカモシカ平に黄色に染まったところが見えたそうだ。強く出られるとそれ以上のことは言えなくなるし、言い争ったところで大人げない。二人とて、オレ同様にカモシカ平のニッコウキスゲを楽しみに来たのだ。目前にして残念ながら咲いていませんよではCが不快になっても当たり前。ああそうでしたか。だったらよく見ればよかったです。失敗しましたねと流した。
 だれもいなくなった。高沢山でいきなり5人に出会った。ようやく一服つけて菓子パンを食べる。用足しは引っ込んでしまった。ここから三壁山経由で下るのが普通かと思うが、ニシブタ沢の滝やら、湖畔の歩道ならニッコウキスゲの群落も見られるかなと、予定通りにエビ山に戻ることにする。
 先で賑やかな声が聞こえた。先行するA、Bのようだ。抜いてしまえば後ろの気配が気になる歩きになる。どうしようか迷っているうちに姿が見え、感づかれてしまい、「お先に」となってしまった。

(エビ山)


(一旦、エビ山に戻った)


 エビ山に戻った。雨は上がり、陽が出てきて一気に暑くなり、汗でじっとりする。空は青空も出てはいるが、草津白根は一瞬見えてすぐに消えた。この先は弁天山方面に南東に下り、鞍部の1533mから北東に続く破線路で野反湖に出て、湖畔西側コースの遊歩道をキャンプ場に戻るつもりでいる。実はこの破線路、『野反湖周辺ガイド』の裏面にある<ガイドマップ>にも出ていて、何ら疑問も持たなかったが、後で地理院地図を見るとそんな破線路はなく、ハイキングコース歩きだからと舐めてかかり、地理院地図を持参しながらも、このガイドマップと古いカシミール地図を頼りにしたばかりに余計な不安を抱くことになった。後で調べると、2008年までの地図には1533mと南西の1498mを結ぶ破線路があって、その先に湖畔に出る道はなく、弁天山まで出るしかなかった。

(弁天山と八間山)


(鞍部の溝状のところが湖畔道に続く道と思っていた。実際には、上に細く見える道で野反湖に出た)


 いつの間にか黒い雲はなくなった。これまでとは違って開けたところを下って行く。贅沢な景色だ。ササも低い。正面には野反湖を挟んで八間山。八間山にはニッコウキスゲが咲くのかと気になって『周辺ガイド』を広げる。山頂付近にはアズマシャクナゲ、クルマユリ、ハクサンシャクナゲとあり、山腹はクルマユリ、登山口の少し先にシラネアオイ、コマクサ、ナエバキスミレ、クルマユリとあった。ニッコウキスゲはないようだがクルマユリの宝庫らしい。
 鞍部から野反湖に続く平地には溝状のものが通っている。おそらく、あれを通ることになるのだろうが、さらに上にも道状のものがあり、湖畔遊歩道に続いている。もっとも、これは、撮った写真を後で拡大して見てわかったことで、この時点では手前の溝状の道らしきものしか見えていない。

(様子がおかしい。)


(入ってすぐに追い返された)


 景色や珍しい蝶を見ながら鞍部に着いた。湖畔遊歩道への標識は見なかった。溝と思えたのは確かに溝だが道ではない。ササヤブが密な溝。標識もない。先に行くと、弁天山への登り調子になる。ここでGPSを出す。このGPS地図も古いようだが、ここではそんなことは知らない。分岐はすでに過ぎている。もしかして標識に気づかなかったのかと戻る。エビ山への登りになってしまい、やはり分岐標識も踏み跡も見あたらない。GPSを拡大して確認する。すでに分岐は過ぎていた。
 また戻った。どうも溝が怪しい。GPSの破線起点に溝が通っている。強行突破しようと入り込んだ。すぐに引き返した。とんでもないササヤブで、あっさりと背丈を越えた。これだけならまだいい。溝の、上からでは見えない地面は凹凸が激しく、水も溜まって、すぐに足をとられて転倒。この先を行くのは無理。自然への復帰が極端過ぎる。
 途方にくれた。野反湖まで直線距離で200mもない。ふと前方を見ると、半島部を下る小尾根(1570m標高点のある尾根)があり、ササは低い。トラバースしてもいいが、登山道を弁天山方面に行った方が無難だろう。

(何ということはない。先から下りられた)


(湖畔遊歩道へ)


(遊歩道に出た)


 歩いて間もなく標識が現れた。直進は弁天山だが、左はキャンプ場となっている。別に新しい標識ではない。文字はかすれている。キャンプ方面は湖畔に向かった道になっている。ここで、1533mからの破線路は廃道になったことを知った。弁天山に登り返すのが嫌なばかりに余計な神経を遣ってしまった。
 細い道を行く。周囲にはニッコウキスゲ。他にイブキトラノオ、カラマツソウ、クルマユリ、ノアザミ、ハクサンフウロ、シシウド、ハナニガナ、しおれかけたハナショウブ…。全部後でネットで調べたが、詳しい人もいるものだとつくづく感心する。これとあれ、どこが違うのが、素人にはさっぱりわからない。蝶も同じようなもの。すべてまとめてアサギマダラやらモンシロチョウ、蛾とは言えまい。全然、違う。余談だが、今回のカモシカ平のニッコウキスゲだが、関連するネット記事を眺めると、何と花に詳しい人が多いのだろうとつくづく感心する。皆んな自信を持って花の名前を記している。中には科名まで添えられている。すごいものだと思う。自分には、花の名前を知るよりも英単語を覚える方が楽だ。芳ケ平でもそうだったが、ここではだれもが目にするギンリョウソウを見ることはなかった。これだけでも、花にはど素人を誇れるには十分だろう。
 湖畔遊歩道に出た。看板地図と板のベンチがあった。乾いていたので腰をかけておにぎりを食べ一服する。さっきのトラブルが気になっていたので、ここでようやく地理院地図を出した。1533mから湖畔に向かう破線路はなかった。やはり廃道。代わりに、先の弁天山に向かう途中に2本の破線路が湖畔に向かっている。手前寄りの破線路を歩いてここに来たようだ。なまじ地図読みの知識がなければ、1533mから北東に湖畔に出るようになっている<ガイドマップ>には疑問も持つまい。

(野反湖と八間山を眺めながら。エビ平)


(ちょっとした花街道だった。蛇帝ガ原)


 ここからニシブタ沢までどれくらいの時間がかかるかわからないが一時間は遊歩道歩きになるだろう。天気は持ちそうだし、整備された遊歩道をゆっくり行こう。ここはエビ平という中間点スポットらしく、標識には、富士見峠(=野反峠?)とビジターセンター(=駐車場?)までそれぞれ2.5kmになっている。
 しばらくハナニガナ(かと思う)の道が続く。ササは相変わらずだ。ニッコウキスゲは見あたらない。やはり、こちらの西側コースよりも東側コースの方に集中しているのだろうか。ノアザミとニッコウキスゲのツボミが出てきて蛇帝ガ原。どういう由来なのか知りたいところだ。弁天、恵比寿と一連の関係はあると思うのだが。

(テン場のお花畑1)


(テン場のお花畑2)


(テン場のお花畑3)


(テン場のお花畑4)


 立ち止まって黄色くなった湖畔側斜面を眺めている方がいた。高沢山で出会ったオッサンだった。これから野反峠に戻るとのこと。エビ山から下山したらしい。ということは、一部は山中ながらも、ほぼ野反湖を一周したことになる。少なくとも10km以上にはなる。もう少しだから頑張ってくださいと別れる。
 しばらくニッコウキスゲのお花畑を眺めていた。おそらく、野反峠側の園地の方がもっと広くてきれいだろうがここにはだれもいず、自分にはこんな程度でも満足だ。ベンチがあったので腰かけてタバコを吸いゆっくりとした。ここが「テン場のお花畑」らしい。

(キャンプ場)


(ここにも)


(こちらはバンガロースペース)


(大分、雲が低くなってきた)


 その後2~3人と会ったろうか。山歩きには見えなかった。やがてキャンプ場エリアに入った。炊事棟が見える。人の気配はない。エビ山への登山口に気づかずのままにニシブタ沢の入口に出た。この期に及んでどうしようか悩んでいた。お花畑で休んだ際、改めて魚止めの滝の情報をスマホで見ると、片道45分というのがひっかかった。往復1時間半か。せいぜい往復30分程度と思っていた。今2時半だ。4時戻りではキスゲ園地はかろうじて見られても、帰り道に予定している摩耶の滝と小倉の滝は厳しくなる。それでなくとも欲張ってのチャツボミゴケ公園はあきらめている。ましてヒルにでもやられていたらさらに時間もかかる。やめるか。機会があるかどうかはわからないが、今日のところはやめておこう。
 まだ釣りをしている人が結構いる。じっとしていたら蚊にでも刺されるような気がするが。

(改めて駐車場近くの園地で)


(電柱を隠したが電線が…)


(これでは野反湖が入らない)


(もういいか。未練がましいが、今回は山歩きではなく、峠も含めてドライブがてらの花見が正解だったようだ)


(駐車場に着いた)


 駐車場に到着。人が少しばかり多くなっている。といっても視界に入るのはせいぜい15人くらいのもの。暗くなり、薄暗い雲が低く垂れ込めている。まずは出がけに急いで見たニッコウキスゲの群生地に入った。やはり電線が入ってしまう。トイレを済ませて車に戻る。雨が落ちてこないうちに野反峠のキスゲ園地を見ておきたい。
 バスが入って来た。時間的に、9年前に自分が乗って野反峠に戻ったバスかもしれない。そんなことを思いながら地下タビを脱いで靴下を履き替える。足はやはりかなりふやけていた。
 バスよりも先に出ないことにはとあせりながら車に乗り込むと、さっきまでポツリポツリだった雨が本降りになってしまった。しばらく様子を見ていたが止む気配はなく、さらに強くなっていく。これでキスゲ園地見物はダメになった。それどころか四万温泉の滝見にも行く気がなくなった。
 今日は、目当てのカモシカ平には失敗したが、群生地を二か所見られた。それだけでも良しとしよう。

(今回の軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」

【今回見た花やら蝶】

  

  

  

  

  

  

  

  

以上。

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4 コメント

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Unknown (候酔)
2020-07-23 20:50:46
 お久しぶりです

来週、釣りに行きます

野反湖、満水ですねぇ
朝一に二、三時間やったら八間山行って来ます

野反湖は雨の日がいいんです。(釣りの話ですが)
返信する
侯酔さん (たそがれオヤジ)
2020-07-25 05:57:30
侯酔さん、こんにちは。
私には野反湖が満水なのかわかりかねるところですが、これで満水だとしたら、侯酔さんはよく野反湖に行かれるのでしょうか。
釣り人の写真を載せましたが、その他にも、西側の湖畔の空地に車を止めて入り込む、単独の釣り人を結構、見かけましたよ。釣りは門外漢ですが、野反湖ではいろんな魚が釣れるようで、楽しみですね。
八間山には過去に二回ほど行ったことがあります。以前、地蔵峠を経由して白砂山に行った際、何だこんなものかと思ったものですが、下りで八間山経由にしたら、周囲の景観となだらかさに満足したことを覚えていて、今度は反対周りで堂岩山まで行きました。
そんな満足も、晴天であればこそのことで、来週、果たして天気はどうなのか。調べると相変わらず、連日のように傘マークがありますね。
返信する
カモシカ平 (みー猫)
2020-07-25 18:42:48
こんばんは。
カモシカ平はどうしちゃったんでしょうね。那須の沼ッ原は鹿の食害により、縮小しているそうですがこちらもなんでしょうか。最近たそがれさんがこの方面に多いようなので、出かけてみようかと思っておりましたが、また雨!うまく行かないですね。
返信する
みー猫さん (たそがれオヤジ)
2020-07-27 06:44:43
みー猫さん、こんにちは、
カモシカ平のニッコウキスゲは期待して出かけたばかりに、落胆も大きかったですね。
そうですか。あちこちで鹿の食害ですか。草だけではなく花まで食べてしまうとはねぇ。
今回は、現地でがっかりする前に、事前にしっかりと情報を確認してから出かけるものだと思いましたよ。
あちら方面の歩きが続いたのは、これまで滅多に行くことがなく、アクセスが遠いというだけの理由なのですが、県内なのに、高速を使っても2時間半は確かに遠いです。そんなに足繁く通うわけにもいかないですが、いざ行ってみると、滝見も含めて、結構、今度はあそこに行って見たいと思うところがあって、せめてあと何回かは行くことになるでしょう。上毛新聞の情報も、どういうわけかあちらの方面の取材が多いといったところもあるのですが。
この長い梅雨、どうにかならないですかね。すっきりと晴れて風通しがよい中を気持ちよく歩きたいものです。柄にもなく、せっかくの花の時季もこのままで終わりそうですね。沢歩きもまた一人ではどうも不安なところもあるしね。
返信する

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