たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

阿能川岳は体力・神経ともに消耗する山だった。

2010年05月01日 | 谷川岳周辺
◎2010年4月30日(金)

 阿能川岳という山は群馬県の山ではないと思っていた。一年前は名前すら知らなかった。山好きにしては無知としか言いようがない。気になり始めたのは昨年の末頃から。積雪期以外はヤブ祭り・シャクナゲ天国の山だという。何としても残雪期に行ってみたいと思うようになった。ところが4月に入って、週末は天気が悪かったり、出張やらで気ぜわしく、いたずらに日にちとともに雪も融けていく。実は昨夜まで悩んでいた。阿能川岳はもうヤブ入り状態ではないのか。だったら、尾瀬にスキーにでも行った方が気が利いているのではないかと。となると、阿能川岳は一年後ということになる。ただ、行ける保証はない。いろいろと考えた末、最終的にダメもとで阿能川岳となった。しばらく歩いて、雪が出てこなければUターンだ。好きこのんでヤブ山を満喫したくもない。

(赤谷越)


 関越道は空いていた。今日の平日も1000円高速だった。家を4時半に出て、仏岩ポケットパークに着いたのは6時。他に車はない。除雪して集めた雪がうず高く積もっていた。準備をして6時15分出発。アイゼンはザックの中。外には杖2本、ピッケル、ワカンを括り付ける。ガチンガチンに固定したため、今度はザックの開封が不便になってしまった。案外、ヤブ続きで、雪用の道具は何一つ使う物がなかったりして。さて、途中までは吾妻耶山に行った時と同じルート。赤谷越からひたすら北に向かう。息切れのする林の登り。赤谷越6時55分。取り付きはここらしい。いきなり急そうな尾根の張り出しが目の前にある。よく見ると、右手に迂回路。体力は温存で、この迂回路、つまり鉄塔の巡視路を行く。うまいことピークを何度か迂回してくれる。ただ、巡視路の割には、どこにでもある巡視路よりも廃れた感じがするのは気のせいか。ところで、昭文社地図には、小出俣山は括弧付きで「赤谷山」と記されている。地図に記された小出俣沢は別名、赤谷とも言われているのだろうか。そうでないと、この赤谷越も赤谷山も関連のない名称になってしまう。

(ヨシガ沢山から)

(鉄塔から吾妻耶山)

(ヤブ入り)


 6時45分、1,117mピーク。ちょっとした草むらの台地。帰路で知ったが、木には「ヨシガ沢山」という山名プレートが打ち付けられていた。左手に小出俣山が見える。といっても、この時点では、これが小出俣山とは知らず、阿能川岳とばかり思っていて、小出俣山を探す始末だった。立派な山だねぇ。登って知ったことではあるが、阿能川岳という山は、冴えない容姿の山とは知らなかった。巡視路はここから幅広のしっかりした道になる。やがて1本左に分かれる。6時58分、鉄塔。西側の眺めがいい。そして、南に吾妻耶山。迷ったら、視界のきく時なら、吾妻耶山を目指して下りればいいわけだ。10分も歩いて、巡視路は右に下って行く。そのカーブに赤やピンクのテープ。ここから、ヤブへの突入だ。標高にして1,230mあたりだろうか。この時点で、雪にはまだお目にかかっていない。これでは、Uターンも現実的だな。まっ、しばらく行ってみよう。ウグイスが鳴いている。すっかり陽春の陽気。

(鍋クウシ山を過ぎて待望の雪。雪庇状になっている。)


 ヤブ道とはいえ、笹が繁ったところだが、繁茂しているわけではなく、踏み跡が下に覗いている。そして、うるさいぐらいのテープ。真北、かすかな踏み跡、そして多数のテープとなったら、迷うことはないだろう。こんな程度のヤブなら、年間を通じて歩けるんじゃないのなんて安易に考えたのもほんの束の間。この辺はまだ尾根幅もあり、意外と下り時に迷うところかもしれない。踏み跡とテープを追いながらしばらく歩く。7時40分、鍋クウシ山(1,314mピーク)を過ぎたあたりからヤブの様相も怪しくなってきた。まず、テープが半減した。ということは、残雪期なら、そろそろここから雪上歩きということだろうか。続いて、シャクナゲの出現。シャクナゲはまだ羽振りもよろしくないから大人しくしている。歩行に影響は少ない。問題は笹や灌木の幹が太くなり、背丈も高くなったこと。胸あたりまできている。これが次第に密になってきた。ザックのサイドに付けた杖の輪がやたらとひっかかってフェイントをかけられる。雪がようやく出てきた。ところが、この雪、尾根部は消え、痩せてきた尾根のヘリに残っているから、その先は雪庇状になっていたり急斜面になったりしている。へたに雪には乗れない。このあたりまで、雪があるのは東側だけで、西側は雪がなく、いち早くヤブになっている。

(小出俣山。まだ阿能川岳と信じ切っている。)

(天子山?)

(大岩は危なっかしく右から巻いた)


 ヤセ尾根が本格的になり、8時5分、天子山(1,399mピーク)。鍋クウシ山も、天子山も、山名標示を確認していないから、おそらくそうだろうと思ったピークなのだが(実際はあったようだが、帰りも気づかなかった)、天子山と思われるピークは極度にヤセた尾根状にあり、その尾根に太い木が3本ほどあって、無理矢理に登ったら、その先がない。元に戻って、左に迂回した。右を行けば、雪がスパッと落ちそうな状態。天子山から、こんなピークがしばらく続く。小ピークもまた岩場になった。たまに安心できそうな雪があれば、それに乗って迂回するが、ズルッといきそうで気が抜けない。こんなことを5~6回繰り返す。ヤブが濃厚になりつつあり、シャクナゲもうっとうしくなり始めた。トゲ付きの立木がないだけでも助かる。右手後方下に関越道の谷川岳PAが見えて来た。しかしながら、うんざりする状態が続いている。いつまでこの状態が続くのだろう。残雪が豊富な時期もまた岩場の乗り越えはこんなものなのだろうか。

(ようやくヤブから解放された)


 もうこれが最後の岩場ピークだろうと思ったのは、何となくこれまでの直感から。雪がようやく本格的に出てきたので、アイゼンを付けピッケルを用意する。木の根に座ってしばらく休憩。2時間、休まずに歩いて来た。腰が湿っぽく感じて立ち上がる。木も乾いていない。やはり、岩場のいやらしいピーク越えは予想どおりここで終わっていた。尾根も広くなり、雪庇の張り出しもない。右の東斜面は急なまま。展望もよくなる。谷川岳も顔を出す。雪質は悪い、気温が上がったら、ツボ足やアイゼンでは歩けないかもしれない。ワカンが必要だろう。さっきから気にはなっていたが、昨日、1人、ここを歩いたようだ。ずっとツボ足らしい。そして、さらにその前に、ワカンで歩いた方がいる。9時10分、三岩山。見たところ、別に岩が三つあるわけではなさそうだ。ここで、地形図を確認してあれっと思った。当初、阿能川岳と思っていた山は左手前方に鎮座し、まさに小出俣山の位置だ。ということは、阿能川岳は、あの正面右寄りに見える丘かよ。なんだかがっかりだな。威厳がない山だよ。

(向こうに谷川岳。手前が阿能川岳ピーク)

(山頂)

(谷川岳)

(小出俣山)


 上がるたびに、正面の展望が良くなり、谷川岳も全容を出してくる。右の沢の傾斜も緩やかになり、スキーで滑ったら気持ちいいかもしれない。雪が黒ずみ、薄汚れている。中国の黄砂かねぇ。9時35分、山頂。3時間20分か。普通の山のピークらしくない山頂。ただの平たい台地。眺望はすこぶるいい。曇りかけてはいるが、武尊山、尾瀬の山、谷川岳、越後の山々。吾妻耶山はかなり小さくなっていた。しばらく景色に見とれた。実は、ここまで意外に楽だったら、小出俣山まで行こうかななんて甘い誘惑があったが、今は、完全にその気分は消えている。とにかく疲れた。ヤブやらヤセ岩尾根には体力も気もつかってしまった。帰りがこれまで以上に恐い。雪も緩くなっているはずだ。もっと気にかかるのが空模様。陽は隠れ、雲が黒くなって、上空に停滞している。15分休んで下山。南東方向に台形状の上州三峰山が見える。低い里山なのだろうが、行ってみたい山だ。吾妻耶山に行った時以来、気になっている山。

(相変わらず不安定な雪)


 やはり、下りは天子山までは落ち着かなかった。あの岩場ピークの連続。1回、気を抜いたら、雪で滑ってしまい、瞬間、やばいと思ったが3mの滑落で済んだ。うかつに雪上は歩けない。となると、ヤブを選んで下ることになる。杖が何度もザックから外れて枝に引っかかる。気分的に、上りよりも長く感じた。天子山でアイゼンを外す。ようやく冷静になっていろいろと観察出来るようになった。同時に、いつの間にか聞こえなくなっていた鈴の音にようやく気づいた。どこかで引っかけてなくしたようだ。こんな残雪向きの山でもゴミが多い。ワンカップ酒のガラス容器やらジュース缶。そして輪のないストック。これは明らかに捨てたものだろう。ヤマダ電機のポリ袋が何で束であるの?どうせ人が来ない山だからといった感覚があるのだろうか。もしくは、こんな山に大勢で来て、気分も大らかになるのか。もっとすごいのは、赤谷越から鍋クウシ山までずっと続く大量のテープ。既にあるテープの隣にさらに目印を付けるのは理解に苦しむ。それから、倒木の少なさにも驚いた。普通、ヤブこぎ山には倒木も多いものだが、気付いた倒木はほんの数本で、それも歩行の邪魔にもならなかった。これが、日光や足尾の奥ではそうもいかないから苦労する。

(巡視路に合流)


 天子山11時10分、鍋クウシ山11時26分。上りでは意識しなかったが、かなりアップダウンの多いルートだ。その証拠に、鍋クウシ山を過ぎたら、久しぶりに、両股の内側に痙攣の兆しが出た。何とかごまかしながら歩いたものの、足にもかなり応えたようだ。天子山から小雪が散らつき、鍋クウシ山に着いたら、小雨に転じてしまったが、ヨシガ沢山(12時5分)まで何とか持ってくれたからよかった。本降りになり、ガスが出たら迷ったかもしれない。やがて巡視路に出て、ヤブ歩きから解放される。ほっとした。ヤブこぎとはいっても、今日のヤブの状況はまだまだ序の口だろう。あと2週間もすれば、雪の下で寝かされていた笹やらシャクナゲが雪融けで勢いづき、かなりの四苦八苦の歩きになるだろう。今日がぎりぎりだったかもしれない。東側にヤブが出ていたら、もう手も足も出ない。淡々と無感情のまま下る。やがて空模様も好転した。林の中の沢には、コゴミがかなり芽を出していた。

(ポケットパーク)


 12時35分、ポケットパーク到着。6時間20分か。車は1台もない。吾妻耶山を歩いた人もいなかったのだろうか。腹が空いてどうしようもない。東屋で餅入りの出前一丁を食べる。かなりまずく感じた。疲れだろう。谷川温泉の湯テルメにでも寄るつもりでいたが、水上の町に入る手前に仏岩温泉・鈴森の湯という日帰り温泉を見つけ、ここに入った。新しくて清潔なのだが、650円は先日の三陸の温泉よりも高いし、湯がぬるかった。気持ちは良かったが。さて、連休中にどこかまた1つくらいは行きたいな。遠出は車が混むし、近場の山ということだろうな。

コメント (4)    この記事についてブログを書く
« 三陸の五葉山は吹雪いていた | トップ | グミの滝から予定外の大平山... »

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
阿能川岳拝見しました。 (ハイトス)
2010-05-03 03:25:09
こんばんは。
4月の末の本当にギリギリだったようですね。
まさかこの時期に行かれるとは驚きです。
読んでいて自分たちが行ったときの場所が思い出されて、あそこがこのように雪が少ないとさぞかし・・・と思う場面が有りました。
たそがれさんが、「体力・神経ともに消耗する山だった」と言われるくらいの状態なのでたぶん文章で表される以上の難儀をされたのではないかと思います。
お疲れさまでした。
しかしその割には6時間20分と言うスピードには恐れ入ります。

我々はたそがれさんが2年前に行かれた景鶴山に途中まで同じくケイズル沢ルートにて登ってきました。
幸い雪が多くそれほど難儀せずに登頂は果たせたのですが、たそがれさんと同様に戻りはグダグダになってしまい、最後の鳩町への登りが長く感じたことといったらたまりません。
疲れはてました。
返信する
ハイトスさん (たそがれオヤジ)
2010-05-03 08:47:32
ありがとうございます。
やはり、阿能川岳はハイトスさんが歩かれた時期が最適ですね。ヤブが出始めると、精神的にもまいります。
そもそも、阿能川岳にどうしても行きたいと思うようになったのは、ハイトスさんのホームページの記事でした。あれがなかったら、おそらく行かなかったでしょうね。きっかけをつくっていただいだハイトスさんに感謝しております。
返信する
Unknown (ぶなじろう)
2010-05-04 10:38:50
こんにちは。

生意気にも、雪のある間に阿能川岳に行こうと計画を立てていましたが、計画倒れになっていました。
今回の記事を見て、とてもおいらには無理だということがわかりましたです。
返信する
ぶなじろうさん (たそがれオヤジ)
2010-05-04 16:34:15
何をご謙遜なことを。
私でも何とか登れた山です。ぶなじろうさんにも無理ではありませんよ。
これからのヤブの時期にいかがですか?きっと人生観が変わりますよ。
行かれるなら、3月末から4月上旬ですね。実は、4月中の天候不順で、残雪期も延長になったと期待していた面もあったのですよ。ところが、でしたね。
返信する
ぶなじろうさん (たそがれオヤジ)
2010-05-04 16:38:30
何をご謙遜なことを。
私でも何とか登れた山です。ぶなじろうさんにも無理ではありませんよ。
これからのヤブの時期にいかがですか?きっと人生観が変わりますよ。
行かれるなら、3月末から4月上旬ですね。実は、4月中の天候不順で、残雪期も延長になったと期待していた面もあったのですよ。ところが、でしたね。
返信する

コメントを投稿

谷川岳周辺」カテゴリの最新記事