マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

ジジイたちのスペイン旅行 4

2016-07-16 12:30:00 | スペイン日記

スペイン広場

 毎週アップしようと始めた旅の話ですが、毎日ヨーロッパカップの試合中継を見ていたので遅れました。ポルトガルの初優勝で終わりましたが、そのポルトガルがロナルドなしで勝ちました。もうPK戦になるだろうと思い、その前にトイレへ行っておこうと立ち上がったら!ゴール!! ポルトガルの粘り勝ちの決勝戦でした。ロスタイムの3分間の長かったこと。このハラハラドキドキがサッカー試合の魅力です。


 さて、旅の話を続けます。「セビージャはとても人間臭い街です。そこに住むセビジャーノス(sevillanos/セビージャ人)は狂信的な聖母マリア信仰で知られています。家庭はかかあ天下です」と書いても言葉で説明がつかないのが「大いなる田舎セビージャ」です。自分で来て匂いを嗅ぎ、その喧騒にうんざりしないと分かりません。何回も訪れている僕でさえ2日も居るとうんざりします。ボケとツッコミの吉本のお笑い芸人が一日中自分の隣で漫才をしている、と思ってください(大阪の人にはごめんなさい)。

回廊とスペイン各地の絵タイル

 橋を渡っていても、買い物をしていても、バルでも、レストランでも、セビージャはどこに居ても「やっかましいぃ!!」です。おまけに馬糞が臭い(今回は減っていました)。3日目には「二度と来るもんか」とマドリードへ戻りますが、このようにまた訪れてします。好きじゃないけど魅力ある街がセビージャです。自分に欠けているものがここにはあるのだと思いますが、その欠けているものは自分の嫌いなものでもあるようです。訪れるけど住む気にはなりません。


 セビージャで魅力あるのはトゥリアナ区です。セビージャ美術館でスルバランの作品を観てからブラブラとトゥリアナ橋を渡ってバルへ行きます。臭い・汚い・うるさい・の三拍子のトゥリアナ区だけど、タイル工房や家具工房を覗いてしまいます。近所のバルでは仕事着のオヤジたちが昼間から一杯やってます。僕もカウンターの端っこでマンサニージャをちびりちびりとやります。

焼き物の橋

 この地区はペスト死で住民が半数になった歴史があります。グアダルキビィル河の氾濫がペストを蔓延させました。生き残った人々の介護をしたのが修道士たちだったので信仰心が篤くなりました。マカレナ教会にある聖母マカレナはセビージャ人のお気に入りなので、ロウソクの火が消えることはありません。


 セビージャは観るよりは「舐める街」ですが、そうなるのは数回訪れてからです。初めての友達には、まずは観光です。昨日はグラナダでアルハンブラ宮殿を堪能したのでアルカサァル(Reales Alcázares)はパスして、スペイン広場(Plaza de España)と大聖堂(Catedral)をゆっくりと回りました。スペイン広場は半円型の回廊があり、その壁の絵のタイルにはため息が出ます。川の橋の青い焼き物も綺麗です。回廊の中の階段にある「黄金焼きの壁」は見る角度で虹のように輝きます。よくぞ、焼き上げたものです。

虹に輝く壁

 この広場は一日中ブラブラしていても飽きませんが、次の大聖堂へ向かいました。大聖堂には高いヒラルダ塔(Gíralda)があるので、それを目印に歩きます。セビージャへ来ていつも自分に言い聞かせるのは「時間にせっかちになるな」です。バルで生ビールを注文してもマドリードの倍の遅さです。だからスペイン人の友達は栓を抜くだけの瓶ビールのラッパ飲みです。


 大聖堂の入口は長蛇の列です。日本人はここで一時間近くの時間を無駄にする訳です。でもセビージャ人は違います。並んでる初対面の人ともおしゃべりを始め、最後には携帯の番号を交換し合うまでになります。超フレンドリーと言うのか、彼ら、彼女らにはじっと黙っている「時」などは存在しません。大聖堂の中は「こんなに豪華な装飾にしちゃってもいいの?教会でしょう」と驚くほどです。イスラム教徒の残したヒラルダ塔を登るとセビージャの街を一望できます。これだけに午前中を費やしました。

豪華すぎない?

 ここで食事をしていたら夕方になるので、ホテルへ戻り荷物を車に積んでともかく出発をしました。リスボンまで500キロ近くあるので56時間はかかります。でもスペインとポルトガルは時差がありポルトガルは1時間遅いので、セビージャの午後1時はリスボン時間ではまだ12時です。ドライブルートはミシュランガイドでネット検索をしました。


 3コースが出ました。一つは斜めに行く最短コースですが、一般道なので時間がかかります。二つ目は高速を使ってセビージャから地中海沿岸に沿ってポルトガルに入り、大西洋沿岸に沿って北上します。三つめも高速を使いますが、セビージャからポルトガルの国境に沿って北上します。高速5号線(A-5/ 皆「ポルトガル街道」と呼びます)とぶつかったら西へ向かいポルトガルに入り、高速でリスボンまで行きます。二つ目も三つめも距離数や時間も大差はありません。


 僕らは三つめのルートを使いました。みみっちい話ですが、ポルトガルの高速道路は有料です。国境沿いのスペイン高速道路はタダで、ガソリン代はスペインの方が安いからです。それとマドリードとリスボンを結ぶ幹線道「ポルトガル街道」には有人の料金所があります。ポルトガルの有料道路は無人料金所が多いので、プリペイドカードを買っておくか、自動支払機をセットするかでスペイン人には不評です。

ヒラルダ塔から見たセビージャの街

 また道を間違えながらもセビージャを出て、ルタ・デ・プラタ(Ruta de Plata/シルバーロード)と呼ばれる国道A-66号線でローマ遺跡の街・メリダ(Mérida)まで北上しました。途中で運転の交代と食事に高速を降りドライブインを探しました。あったのは田舎のバルで、作業服の若い兄ちゃん達や農夫のおっさんたちが昼定食を食べていました。豆の煮込み料理なので、ドライブには胃がもたれます。僕らはスペイン版サンドイッチのボカディージョ(bocadillo)にしました。バゲットを半分に開いて、中に生ハム、ソーセージ、腸詰などを挟みます。デカすぎたので食べ残りはアルミホイルに包んでもらい、おやつにしました。


 再び数キロを戻り高速に入りました。ほんと馬鹿らしくなります。アンダルシア州を出てエキストレマドゥラ州(Extremadura)に入ると一面麦畑の単調な風景です。居眠りをしそうになります。メリダの手前で「ポルトガル街道」に合流して国境の街・バダホス(Badajoz)へ向かいました。国境には何もなく、道路わきに「良い旅を、スペイン」と書いた看板があり次に「ようこそ、ポルトガルへ」と書いた看板がありました。これでポルトガルへ入りました。

 

 

 有料道路IP-7はガラガラでたまに大型トラックを追い抜くくらいでした。でもスペインの高速と違い道路わきにドライブインがあります。これが当たり前です。麦畑や野原や牛の繰り返しの風景に飽きたので、ドライブインにコーヒーを飲みに入りました。ポルトガルは昔から美味しいコーヒーが飲めたので、スペイン人も良くコーヒー豆を買いに来ました。ポルトガルは北部も中部も南部も旅したし、リスボンへは車、飛行機、列車などで何回も来ています。


 「マドリード―リスボン夜行寝台」のロマンチックな響きにつられてそれにも乗りました。個室寝台には小さい洗面台もついていました。しかし夜行寝台での旅は一人でするものではありません。窓の外は真っ暗なので退屈極まりないです。おまけにあまりにも早朝のリスボン駅着だったので、カフェはまだ開いておらずコーヒーにもありつけませんでした。

425日橋

 車でのポルトガル旅行が多かったのですが、格安便が飛ぶようになってからは飛行機が増えました。ポルトガルのタクシー代は安いので、その二つを使うほうが楽です。昔のことを思い出していたら、テージョ河(Rio Tejo)に架かる赤い「425日橋」が見えてきました。ガタガタとうるさい橋ですが、渋滞時間帯になりつつあるのか、久しぶりに車の列に出くわしました。橋を渡り北進を続け標識に従ったらマルケス・デ・ポンバル広場(Plaza de Marques de Pombal )に出ました。


 ここから港まで続くのがリスボンのメインストリート、リベルダーデ通り(Av. da Liberdade)です。ホテルが集中しています。広場近辺には新しいホテルが多く、ガレージ付きです。部屋はマドリードのホテルよりも広くて明るいです。車で来たときは中心地に入り込むと迷うのでこの辺のホテルに泊まっていました。バルやレストランが集中するアルファマやバイシャへは下り坂なので行きはよいよい帰りはこわいです。リスボンは坂の街で、道は石畳です。その石畳の凸には丸みがないので歩きにくいです。だから帰りはメトロかタクシーになりました。

タラ料理ですがポテトとサラダに隠れてます。

 今回は2泊するのでホテルはバイシャ地区と決めました。ところがガレージ付きのホテルが極端に少ないので困りました。スペインのホテル・ネットでホテル・ド・シアード(Hotel Do Chiado)を見つけましたが空き部屋は1泊分だけで2泊できません。日本のホテル・ネットを試したら2泊取れましたが、宿泊料金は日本円払いです。僕のカードはユーロなので為替手数料もとられました(くそー)。


 そんな訳で今回は旧市街へ入ることになりました。リベルダーデ通りをコメルシオ広場(Plaza do Comercio)方面に南下をしてバイシャ地区へ入りました。ホテルの通りに出ましたがホテルが見当たりません。客待ちをしているタクシーに聞いたら、目の前でした。建物の平らな壁にホテル・ド・シアードの文字プレートがあるだけで、全世界のホテルの共通シンボルである万国旗はありません。初めての客は戸惑う隠れ家ホテルで、玄関はブティックの入口みたいです。これでは隣のショッピングモールと間違えますよ、まったく。

イワシの丸焼き

 車を前に置いたらドア・マンが出てきたので預けました。フロントでの会話は僕がスペイン語で話し、ポルトガル語で返ってきます。まぁ、似たような言葉なので、簡単な会話にはノープロブレムです。どうも文化人向けのホテルのようで、壁には現代絵画が沢山並び、インテリアは現代家具です。それらの間に数点散らばしたクラシックな机や鏡がアクセントになっています。トイレの男女のサインまでもクラシックな絵でお洒落です。我々の部屋はスイートルームなので、3人には十分すぎる広さです。その階は全てスイートのようで、専用の階段でレストランやバーへ上がれました。


 バーにはテラスがあり街が一望できるので、すでに若者のグループがビールを飲んでいました。夕飯を食べるため外へ出たら寒いので驚きました。昨夜のセビージャの暑さが嘘のようで、ツーリストはジャケットを着ていました。僕らはリスボン人のオヤジのように長袖シャツでした。坂を下りコメルシオ広場へ行ったら、海風でいっそう冷えました。客引きがうるさいので、ホテルを出る前にガイドブックでレストランに当たりを付けておくべきでした。

サケの鉄板焼き

 地元の人が食べているカフェみたいなレストランに入りました。三人とも喉が渇き腹ペコだったので、まずはビールで「無事リスボン到着」に乾杯をしました。ポルトガルはバカラオ(干しタラ)が美味しいです。生のタラがあったので、それとイワシとサケを焼いてもらいました。ワインはスペインのアルバリーニョに似ているアルバリノ(Alvarinho)にしました。白ワインです。


 料理が来て、そうだ!ポルトガル料理は一皿の量が多い!ことを思い出しました。二皿を三人でシェアしても十分でした。シンプルな焼き魚料理なので味は普通で、サカナ用のソースよりも醤油が欲しかった。旅には持参するのに今回は忘れました。ソースは付け合わせのサラダにも合いましたがバカラオは干しタラの方が美味しいです。

白ワイン、アルバリノ

 食べ終わってからコメルシオ広場の近くはツーリスト相手のレストランの多い場所だったのを思い出しました。ホテルのあるバイシャで食べるかロッシオ広場へ行くべきでした。セビージャ同様に今夜も“ハズレ~”でした(ヤレヤレ)。ホテルへ戻りリスボンの夜景を見ながらバーのテラスで飲みました。風が強くなったので中へ移り、ラストオーダーと支払いを頼みました。体が温かくなったので片付ける音を聞きながらうつらうつらしてきました。寝るときにうっかりと部屋のエアコンを切り忘れました。

リスボンの夜景

コメント
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