Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

40TH ANNIVERSARY GALA (Tues, Apr 3, 2007)

2007-04-03 | メトロポリタン・オペラ
ラ・ボエームでの行き過ぎた自己主張(12/05/06)といい、
清教徒での歌詞うろ覚え、といった甘えた態度(01/11/07)といい、
(歌詞をうろ覚えで、どうやってその裏にある感情を表現できるというのでしょう?)
私を今シーズン、著しく失望させてきたネトレプコ。

今日も”アンナとローランド”なんていって、二人のイベントなものだから、
またしても勘違いな態度を見せられるのではないかと不安だったのですが。。

ネトレプコの声のコンディションそのものは絶好調ではなかったのですが、
それがもしかすると幸いしたか、久しぶりに真摯な、役を大切にした歌唱が聴け、
そのうえにヴィラゾンが好調で、大変充実した、楽しいガラを見る/聴くことができました。

ネトレプコについては、
ベルカントの役がそろそろ厳しくなっているのは、かなり明らかで、
従来の彼女のレパートリーからすると、意外にも、愛の妙薬が一番、声楽的には弱かったと思います。
そのかわり、ラ・ボエームのミミが、前回より著しくよくなってました。



役の掘り下げも深くなったというか、今回はより上品な、ややお姫様ちっくなミミとして演じていました。
そういえば、ミミはロドルフォと別れた後、他の男性と一緒になったり、
またお針子(当時のフランスでは、半分売春婦を兼ねていたそう。。)で身をたてていたりしたわけですから、
フレーニ、スコットあたりから脈々と続いている、気のよさそうな気さくなお姉さん(おばさん)というミミ像ばかりが必ずしもどんぴしゃではない気もします。
姫ミミ、なかなか新鮮でした。
前回の演奏でも同じアプローチだったのかも知れないのですが、
きゃぴきゃぴしたところがあまりにも押し出されていて、引いてしまいましたし、
なんだか、別れの場面とのつながりがちぐはく。
ボエームは悲劇ですから、どんなに楽しい場面でも、その悲劇の影が見えてほしい。
その点、今日は一幕だけの演奏でしたが、二人の出会いのシーンから、
そこはかと、悲しみが底流にながれているというか。。。
これなら、この後、二人の別れ、ミミの死へというシークエンスも、
非常に自然に流れると思われ、ぜひ、この雰囲気で、全幕見てみたかったです。
ヴィラゾンの”冷たい手を”が、声のパワーでごり押しする歌唱とは対照的な、
温かみのある歌唱でよかった。
その後を受けたネトレプコの、”私の名前はミミ”も、
以前に聞いたときよりもふくよかな響きが出てきていて、
声の一層の変化が感じられて、興味深かったです。

マノンの修道院のシーンは、
ネトレプコの歌唱もなかなかよかったし、声質、役のキャラクターにもわりと合っていると思うのですが、
少し疲れたか、不調のせいか、途中、声が軽く空洞化して聞こえる部分があって、ひやりとしました。
しかし、ヴィラゾンの好サポートもあり、全体としては、大変見ごたえのあるシーンに。

最後の愛の妙薬は、ヴィラゾンのあまりにも、あまりにものはまり役ぶりに、
笑いが止まりませんでした。
こちらは、テノールの大抵の人が太っているという事実も手伝って、
パヴァロッティを代表とする、太くてのろまなネモリーノというのが、定番になっていますが、
ヴィラゾンの、棒っきれのような体型に、くしゃくしゃ頭(多分かつらと思うが、
地毛の可能性もあり。)、
ぽかんと宙にうかんだ視線といい、まさにうすのろ!!
ヴィラゾンが以前メトのラジオ中継の休憩時間の余興として、
クイズ大会の司会を担当したとき、おしゃべりが本当に面白くて、感心した覚えがあるのですが、
こういうコミカルな役において天下一品なのも納得。
彼のネモリーノを相手にしては、ネトレプコのアディーナすら添え物のように思えてくるほど。
パリの公演では、あまりの喝采に二度歌ったという”人知れぬ涙”は、
やはりパヴァロッティの存在感に一歩も二歩も譲るも、
どちらかというと、そのようにアリア一個だけを取り上げて比べるなどという無粋なことはせず、
全体としての役作りの見事さを賞賛したいと思います。
ああ、今思い出しても笑いがこみあげてきます。

ネトレプコが久々にきちんと役を重視した歌唱を聞かせてくれて、大変満足。
以前ドン・パスクワーレで見せていたような、
アクロバティックな歌唱よりも、実は、
この人の強みは、超高音よりも少し下のレンジで、弱音から中くらいの間の声を出したときになんともいえない響きがでる点ではないかと思います。
ぜひ、無理をしない範囲で、リリックな役をゆっくりと開拓していってほしいです。

話が少し横道にそれますが、今日は、まわりに座っている方々もよかった。
特にガラのようなシチュエーションでは、社交的な雰囲気もシーンの一部ですから、
隣に座っている人が、感じわるい人だと、大興ざめです。

今日の左隣はご夫婦で、サブスクリプションの会員
(メト版、回数券。10ほどの演目を一年を通して、同じ曜日、同じ座席で見るシステム。
私も来シーズンのこれに申し込んでおきました。)、かなりのオペラ通。
右隣は私と同じく一人でいらっしゃった(ここが私と同じ)、年配の(ここは私と同じでない)女性。
4人で今シーズンすでに見に行った演目について意見を戦わせると、
この女性、上品かつ大変丁寧な物言いながら、なかなか鋭い意見をおっしゃる。
この女性が、その後、Hvorostovskyが好きで、エフゲニー・オネーギン(Eugene Onegin)を、
5回(!)も個別で見に行ってしまって。。とおっしゃたのには上には上がいるものだとびっくり。
かつ、初めて目の前で、Hvorostovskyが好き、と断言した方を見つけて、
”ついに捕獲!”と、常日ごろから、”彼のファンをとっつかまえて、どこがよいかじかに聞いてみたい!”
と鼻息の荒かった私ですから、ここは、彼女を問い詰めて。。なんて考えたのですが、
そこでシャンデリアの灯りが落ちて、愛の妙薬がスタート、志なかばにして断念。
よって、今も、なぜHvorostovskyの評価が高いか?という謎は未解決のまま。。
残念!!!


40th Anniversary Gala - Anna & Rolando Celebrate the Met

La Boheme Act 1
Manon Act 3, Scene 2
L'Elisir d'Amore Act 2

Anna Netrebko (Mimi, Manon, Adina)
Rolando Villazon (Rodolfo, Chevalier des Grieux, Nemorino)
Samuel Ramey (Count des Grieux)
Alessandro Corbelli (Doctor Dulcamara)
Mariusz Kwiecien (Marcello, Sergeant Belcore)
Oren Gradus (Colline)
Patrick Carfizzi (Schaunard)
Conductor: Bertrand de Billy
Production: Franco Zeffirelli (La Boheme), Jean-Pierre Ponnelle (Manon), John Copley (L'Elisir)
Dr Circ Box 5 Front
ON
***40周年記念ガラ 40th Anniversary Gala ネトレプコ Netrebko ヴィラゾン Villason***