まきた@VetEpi

酪農学園大学をベースに、発展途上国と日本の獣医疫学に取り組む獣医師のブログです。

15と50

2006-02-04 08:09:26 | 異文化
2月3日(金)。

今週は、あっちへ行ったりこっちへ行ったりとバタバタした週でした。
その理由は二つあって、一つは妻の姉が持って来てくれた新しいパソコン(ラップ・トップ)を自分の仕事用にするため、システムを変える必要があることで、もう一つは歯医者で今年の検診をしてもらうためです。ウガンダで歯が痛くなったらどうしようもないので、前もって検診に行っておくのです。

昨日、歯医者に予約していた時間どおり、9時50分に行ったら、
「何でこんなに遅く来たのよ?」
と先生の奥様に怒られてしまいました。
「何って、今完璧に9時50分じゃない!?」
「私は9時15分って言ったのよ!」

まじですか。フィフティとフィフティーン。

忙しい時期なので、とんだ時間の損をした、と急ぎ足で大学で向いました。歩きながら、英語を作った人々が、まずなんでそんな紛らわしい名前を二つの数字に付けたのか、腹が立ちました。
日本語、中国語、チベット語は数の呼び名が似ていて、15は10と5、50は5と10を順番に言います。フランス語では15はカーンズ、50はサンカーントゥと言いいます。
ネパール語、ヒンディー語、ウルドゥ語では15はパンドラ、50はパチャースで全然違う。
ウガンダのルガンダ語、バソガ語でも、15は10(クミ)+5(ターノ)、50はアターノで、聞き取り違いをすることは考えにくい。

おーい、英語、まぎらわしいのはお前んとこだけじゃないかよー。と腹が立ったけれど、初歩的な間違いで恥ずかしいので誰にも言えないまま、歩いているうちに気がおさまりました。

そして今日、再予約をした10時半に行くと、今度は奥様は笑顔で迎えてくれました。治療が終わって診療室から出ると、奥様は予約の電話を受けていて、その時彼女ははっきりと言ったのです。
「オーケー、イレヴン・フィフティーン(11時15分)ねー!」
と。

これはスコットランド訛りとはいえ、はっきりとした発音だ。聞き取り違いしようがない・・・。
素直に負けを認めました。未だにそんなこともあるんですねー。

一年経って

2006-02-02 10:11:27 | 学業
2月1日(水)。

仕事の話ですいません。
先週から、主に東アフリカにおける、動物の伝染病についての論文をたくさん読む作業に入っているわけですが、今日中に読む予定を夕方6時半にクリアしたとき思いました。

変な話ですが、獣医のくせに、入学から1年4ヶ月経って、初めて獣医学的な論文を読み漁る生活に入ったのだなあ、と。

思い起こせば、最初に指導教官に、「獣医師でも発展途上国の貧困削減や、人々の健康の向上に役立ちたいのです。」と、研究内容を考える最初のミーティングで言ったのが始まりでした。自分で方向性を決めたこともありましたが、指導教官はコメントにいつも手を抜かなかったと思います。

最初は社会学でした。電話帳の厚さ位論文を読み、ちょうど昨年の今頃、2月4日に最初のレポートを提出しました。ブログを見てみると、昨年の2月2日には一度、研究に集中するため、ブログ閉鎖のお知らせをしていました。皆さんの応援で再開したわけですが。

社会学の次は、医学と医療制度の方向に進んでいきました。1415あるヒトの病原体のうち868ある動物と共通の伝染病について、しらみつぶしに調べていきました。ウガンダにおける医療制度の変遷も、なかなか手ごわかった。
これと同時に、これから自分の専門とする疫学の本を2冊、研究デザインのために読んでいきました。英語で複雑な数式混じりの説明を読むのは、初めは非常に骨が折れました。

そしてウガンダへ。実際の研究を野外で始め、3ヶ月。

長い、長い一年でした。もう5年くらい経ったような気がします。
先週のミーティングで、指導教官に、今までよく頑張った。さて、あなたは獣医師だし、ここも熱帯獣医学センターだ。今度はウガンダの全人口、都市人口から、研究の重点を、畜産農家のための獣医学に移してみよう、と言われました。なんと広い範囲のことを、しかも深く、3年間で学ばせるのか、と驚きました。しかし、畜産には長く携わってきたので、ようやくもと居たところに帰るという安心感があります。

長くなりますがそれは置いておいて、ウガンダにいる時、疫学者のY先生から、執筆された本をイギリスに贈っていただいてあったので、この年末年始に読んでいました。やはり日本語は頭に入りやすいし、特にこの本には、一冊に必要なことがコンパクトにまとまっていました。それもあって、冒頭に書いた読む作業も、非常にリズムよく進んでいるのです。調べなくても理解できるわけですから。

夜遅くまで仕事しない、というのも、体で覚えたコツでした。
一年経って振り返ってみると、なんとまあ長い道のりを歩いたことか、と感じます。もちろん人によっては、もっと一生懸命やっているのだろうけど、自分は自分でいいのです。今月から研究の舵も、大きく新しい方向に向けられることでしょう。
しかし大変だとは考えずに、これからまた一日一日、リズム良く進んでいこうと思っています。