2016/8/12 9:24 日経新聞
【ワシントン=川合智之】米民主党の大統領候補、ヒラリー・クリントン前米国務長官(68)は11日、中西部ミシガン州での集会で経済政策について演説した。環太平洋経済連携協定(TPP)について「私は反対する。選挙後も大統領として反対する」と明言し、大統領就任後はTPP賛成に転じるとの見方を否定した。米国によるTPPの承認は極めて厳しい状況に追い込まれている。
クリントン氏は7月の大統領候補指名の受諾演説ではTPPに直接触れなかったが、今回の演説ではTPPに言及したうえで「雇用を減らし賃金を下げる全ての貿易協定を止める」と強調した。
共和党の大統領候補、不動産王ドナルド・トランプ氏(70)もTPP反対を訴えており、次期大統領の有力候補がそろって労働者層の支持拡大をにらみ、TPP反対で足並みをそろえている。
現職のオバマ大統領は11月の大統領選後、自身が退任する来年1月までの「レームダック国会」で関連法案を審理し、承認を得たい考えを示している。だが野党・共和党だけでなく、与党・民主党でも賛成票がまとまっていない。日米が中心となって交渉を進めたTPPだが、肝心の米国の承認が得られるかどうかは一段と不透明になった。
クリントン氏は「中国の不正な貿易慣行と戦ってきた」と述べ、中国の為替操作や知的財産権侵害に対抗すると強調した。不正貿易を摘発する「取締官の人数を3倍にする」と表明した。
一方で、クリントン氏はトランプ氏の経済政策を厳しく批判した。トランプ氏が提唱する減税案を「大企業や億万長者、ウォール街の金融機関幹部に何兆ドルもの減税をもたらそうとしている」と断じ、富裕層優遇の「抜け穴だ」と非難した。育児費用の所得税の控除案についても「多くの勤労家庭にはわずかな利益しかない」と語った。
トランプ氏に対しては、共和党内の反発も歯止めがかかっていない。米メディアによると、元議員や高官ら70人以上が11日、共和党全国委員会に対し、トランプ氏への資金援助を中止し、大統領選と同時に実施する上下院選挙に集中すべきだとする公開書簡に署名した。「民主党の地滑り的勝利の恐れがある」と指摘した。