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2016針路を聞く (4)指導国不在、紛争増える 米国際政治学者 イアン・ブレマー氏

2015年12月31日 | 国際政治
2016針路を聞く (4)指導国不在、紛争増える
米国際政治学者 イアン・ブレマー氏
2015/12/31 3:30 日経朝刊




 ――過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)のテロが頻発しています。

 「ISは史上最強のテロリスト集団だ。原油や人質の身代金、遺跡からの出土品といった潤沢な資金源を持つ。構成員が若く、IT(情報技術)の習熟度も高い。国際社会にとって、ますます手ごわい敵になる」
 「ところが米国やロシアなどの足並みがそろわず、掃討作戦が機能していない。強い疎外感を抱くISを、軍事行動だけでは排除できないという問題もある。状況はさらに悪化するだろう」
 ――地政学リスクが高まるのはなぜですか。
 「主導国を欠く『Gゼロ』の傾向が強まっているからだ。米国は世界の警察官を引き受ける意欲を失いつつある。欧州は様々な形で分断され、影響力が低下している。中国は国力を増したが、国際秩序の空白を埋める意思も能力もない」
 「米国が主導してきた国際秩序は、創造的破壊の時を迎えた。その行く末がまだ見えず、いまは空位の状態にある。政治や経済の価値観を共有しない20カ国・地域(G20)の枠組みは機能しない。地政学上の紛争はこれからも増える」
 ――米国と中国、ロシアとの対立をどうとらえればいいでしょう。
 「中国はいまのところ、軍事面で米国に対抗するつもりはない。米国にとっての脅威は経済面での挑戦だ。中国が米国にサイバー攻撃を繰り返すのも、産業スパイの意味合いが大きい。米中経済は相互依存関係を深めており、それが決定的な衝突の防波堤になる」
 「米ロの緊張も『新冷戦』とは呼べない。ロシアを孤立させる力が米国にあっても、現実の政策にはなり得ない。ロシアの力も限られる」
 ――近著「スーパーパワー(超大国)」では、国際問題に関与せず、自国の再建に専念する米国を選ぶと書いています。
 「米国はいまだ唯一の超大国だ。それはしばらく変わらないが、超大国の役割を選択すべき時が来ている。冷戦後の外交・安全保障政策は支離滅裂だった。米同時テロへの過剰反応がアフガニスタン・イラク戦争を招き、米国を大いに傷つけた。同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。国内問題に集中するという選択は好きになれないが最も可能性が高いシナリオに見える。米国が世界で指導力を発揮するのは一段と難しくなる」
 ――米大統領選の展開をどうみていますか。
 「イスラム教徒を締め出すとか、メキシコとの国境に壁を築くという、信じがたい発言がまかり通っている。パリの同時テロもあって排外的な風潮が広がり、他国が尊重してきた米国の価値観を損なうのは問題だ」
 ――日本は世界でどんな役割を担えますか。
 「人口が減っても経済は発展し、立派なインフラや社会保障制度がある。日本の将来像を描くとすれば、それは大きなシンガポールだろう。とても豊かで透明性が高く、米国と良好な関係を保ちつつ、中国からの投資も呼び込める国だ」
 「日米同盟の重要性は増している。軍事面の協力というよりも、経済成長や法の順守、人権の擁護といった面での連携がより強く求められるだろう。環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉妥結は、日米関係を強固にした。オバマ米大統領の最も重要なレガシー(政治的な遺産)になる」
(聞き手はワシントン支局長 小竹洋之)



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