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原爆「非人間的な苦難」 G7外相が広島宣言

2016年04月12日 | 国際政治
原爆「非人間的な苦難」 G7外相が広島宣言
対テロ、サミットで具体策
日本経済新聞 朝刊 1面 2016/4/12 3:30

 主要7カ国(G7)による外相会合は11日、核軍縮・不拡散を訴える「広島宣言」などを採択し、閉幕した。原爆投下で広島と長崎は「甚大な壊滅と非人間的な苦難という結末」を経験したと指摘。世界規模での核兵器削減の努力を訴えた。幅広い課題を示した共同声明では、テロ対策に協調して取り組む具体策を5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でまとめる方針を盛り込んだ。



 G7外相は11日、広島市の平和記念公園を訪問。平和記念資料館(原爆資料館)の視察に続き、原爆慰霊碑に献花し、原爆ドームも訪れた。

 外相会合では共同声明と広島宣言に加え、海洋安全保障に絞った「海洋安保に関する声明」、「不拡散及び軍縮に関する声明」も発表した。

 議長役の岸田文雄外相は閉幕後の記者会見で、広島宣言に関し「画期的な文書だ」と強調した。ケリー米国務長官は記者会見で「サミットが外相会合でつくった絆を積み上げて進歩すると信じる」と述べた。

 広島宣言で日本は当初、核兵器使用がもたらした惨状を「非人道的」と表現しようとした。核保有国が国際法の人道上の罪にあたると取られかねないと懸念し、「非人間的な苦難」を盛り込むことで折り合った。

 同宣言では核保有国に透明性を高めるよう求め、核兵器の弾頭数を明らかにしていない中国に暗に対応を促した。世界の各国の政治指導者らに被爆地の広島や長崎を訪れるよう呼びかけた。

 共同声明では相次ぐテロ事件を受け、過激派組織「イスラム国」(IS)などによる残虐行為や人権侵害を強く非難。テロに対抗するため「G7テロ対策行動計画」を5月26~27日の伊勢志摩サミットで採択する。国境警備やテロ資金対策などを検討する見通しだ。

 海洋安保の声明では、名指しを避けながらも中国を念頭に、東シナ海と南シナ海で海洋進出を強めている状況に懸念を共有。「現状を変更し緊張を高めうるあらゆる威嚇的、挑発的な一方的行動に強い反対を表明」と明記し、南シナ海での大規模な埋め立てや軍事拠点化の動きを自制するよう求めた。昨年のG7外相会合の文書よりも批判やけん制を強めている。

 領有権をめぐる紛争の当事国は国際法に基づき、拘束力のある裁判所の決定を完全に履行するよう要求した。

 核実験や弾道ミサイルの発射を強行した北朝鮮には「最も強い表現で非難する」とした。北朝鮮による日本人拉致問題を含む人権上の懸念に、直ちに対処するよう求めた。

声明・宣言のポイント
【共同声明】
○テロ対策に協調して取り組む具体策を5月の伊勢志摩サミットで策定
○北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射を最も強い表現で非難
【広島宣言】
○広島・長崎は原爆で極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難という結末を経験
○政治指導者は広島や長崎を訪れ、深く心を揺さぶられた。他の人々の訪問を希望
【海洋安全保障に関する声明】
○東シナ海や南シナ海の状況を懸念。現状を変更する一方的行動に強い反対
○紛争の平和的解決を追求し、拘束力を有する裁判所の決定の完全履行を要求


サウジ、強硬な「盟主」に サルマン国王即位1年 周辺国と緊張 原油安が打撃

2016年01月23日 | 国際政治
サウジ、強硬な「盟主」に
サルマン国王即位1年 周辺国と緊張 原油安が打撃
2016/1/23 3:30 日経朝刊

 【リヤド=久門武史】サウジアラビアのサルマン国王(80)が即位して23日で1年になる。この間に隣国イエメンに軍事介入し、対立するイランとは断交した。原油市場では自らのシェアを守るために高水準の生産を続け、結果的に原油安と財政難に苦しんでいる。「中東の盟主」に何が起きているのか。現地で探った。


リヤド市内の随所にあるサルマン国王の肖像写真



 首都リヤドの巨大な商業施設は、午後10時を回ってからが最も活気づく。原油高だった2年前と変わらず、豊かな国民が高級ブランド店で消費を楽しんでいる。しかし、歳入の大半を原油に頼るサウジ経済の変調は、隠しようがない。
 「サウジ側から説明もなく突然止まった契約交渉がある」。日系進出企業の幹部は語る。渋滞解消の切り札として、2018年の完成をうたい建設中の都市鉄道「リヤド・メトロ」は、ひっそりと計画が縮小された。
 サウジは16年予算で10兆円以上の財政赤字を見込み「緊縮」にカジを切った。補助金削減に踏み切り、15年末に燃料や電気料金が一斉に値上がりした。ガソリンは50~67%上がった。
 同国の大手投資銀行ジャドワ・インベストメントのチーフエコノミスト、ファハド・アルトゥルキ氏は「製造業や運輸業、建設業への打撃は大きい」と指摘する。国際通貨基金(IMF)は19日、サウジの16年の経済成長率を下方修正し、過去14年で最低の1.2%と予測した。原油安の影響は広がっている。
 ガソリンを含む光熱費への手厚い補助金には、国政選挙がない国民の不満の芽を摘む面がある。そこにメスを入れるという歴代国王にも難しかった改革を断行したのが、ムハンマド副皇太子(30)だ。経済政策の意思決定機関のトップであり、国防相も兼務。保守的なサウジで経済改革を目指す一方、15年3月に踏み切ったイエメンへの軍事介入を主導している。
 父の国王が即位直後に抜てきし、この1年で軍事から経済、石油政策まで急速に権限を集めた。15年末にはイスラム圏諸国でつくる対テロの「軍事連合」を発表。内相のムハンマド皇太子(56)が担うはずのテロ対策にまで手を広げた。
 イランでサウジ大使館が襲撃された直後の今月3日、サウジはイランと断交した。中東の緊迫を一気に高めた決定に、国王や副皇太子の意思が働いたのは間違いない。
 イランは緊張緩和をアピールするが、サウジは批判を緩めようとしない。「聞く耳を持たないサウジ」を印象づけるのがイランの狙いだとすれば、サウジは術中にはまる可能性がある。
 「穏健路線のアブドラ前国王だったら、こうはならなかった」。サルマン体制によるイエメン介入やイランとの断交について、こんな声が外交関係者の間では多い。核問題の決着で経済制裁を解かれたイランは自信を深める。同国のザリフ外相は皮肉った。「サウジはパニックに陥っている」
 19日、リヤドを訪問した中国の習近平国家主席を、サルマン国王は異例の厚遇で迎えた。サウジ伝統の剣舞に習氏を呼び入れ、並んで剣を振りかざす姿まで写真に撮らせた。
 かつて蜜月だった同盟国の米国は核問題でイランに接近し、サウジとの間にはすきま風が吹く。中国との急速な接近は、強気を貫くサウジの不満と不安を映している。

台湾総統選

2016年01月20日 | 国際政治
春秋
2016/1/20 3:30 日経朝刊

 日本の男性アイドルグループの解散騒ぎは大山鳴動しただけで収束に向かったようにみえる。対照的なのが、台湾出身の韓流女性アイドル、周子瑜さんをめぐる騒動だ。16日の台湾の総統選挙と立法院(国会に相当)選挙に影響を及ぼしたうえ、なお波紋を広げている。
▼発端は昨年の11月。韓国のバラエティー番組に出演した周さんが、台湾の「国旗」とされる青天白日満地紅旗を手にしていたことだ。これをもとに「台湾独立派」だと決めつける書き込みが登場し、反発した中国大陸のネットユーザーたちがボイコットを呼びかけた。周さんが所属する韓国の芸能事務所の株価は急落した。
▼そして先週末。総統選などの投票前日に、その動画は公開された。黒い衣装でこわばった表情の周さんが「両岸(中台)のネットユーザーの感情を傷つけた」と反省する謝罪文を読み上げたのである。「中国はただ一つ」「両岸は一体」とも語った。これを受け中国共産党系の新聞は「台湾独立派に完勝した」と宣言した。
▼今度は台湾の人たちが怒った。結果として、独立志向が強いとされる民進党に追い風が吹くという、皮肉な効果をもたらした。中国と台湾の間に働く力学は微妙で、横たわる問題は複雑だ。そんな難しい政治問題について、選挙年齢に達していない少女が立場の表明を迫られたことに、いたたまれないような気分を覚える。

→ 台湾総統選挙でこんなことが起きていたとは知らなかった。

イスラム国の誕生はイラク戦争に原因ある

2016年01月18日 | 国際政治
初歩からの中東 スンニ派とシーア派
利権や権力争い結びつく
2016/1/18 3:30 日経朝刊

 中東に暮らす人の多くが信仰するのがイスラム教だ。この宗教には
大きく分けると2つの宗派がある。神の言葉が伝えられた預言者ムハンマド
の後継をめぐる争いから、7世紀以降に宗派が分かれたのがきっかけだ。
別々の信仰の形や考え方をとるようになった。



 たとえばスンニ派は偶像崇拝を原則禁じており、肖像画を掲げるのも
タブーだ。一方、シーア派の国では宗教指導者の巨大な肖像画を見かける。
 イスラム教徒全体はスンニ派が9割を占める。イスラム教が生まれた
現在のサウジアラビアやカタール、アラブ首長国連邦(UAE)などに
多い。シーア派はイランやイラクなどに広がる。
 基本的に多くの信者は他の宗派を敵視しているわけではない。
ではなぜ、宗派対立が問題になるのかというと、それが経済の利権や
政治の権力争いに結びつくからだ。
 1980年代のイランとイラクによる戦争では、スンニ派のサダム・フセイン
政権が、ペルシャ湾の石油利権を狙うとともに、シーア派イランの弱体化
を図った。
 現代でもさまざまな国で宗派対立が表面化している。今年に入ってから
スンニ派の王室が支配するサウジアラビアが、国内でシーア派の宗教指導者
を処刑したことから、シーア派のイランが激怒した。イランにあるサウジ
大使館が襲われる事件に発展し、サウジが国交の断絶を発表した。
 シリアではシーア派に近いアサド大統領と、スンニ派の反政府勢力の内戦
が続く。イエメンではスンニ派の大統領と、イランが支援するシーア派の
民兵組織が対立し、サウジなどが軍事介入した。

→ 上記は、スンニ派とシーア派の解説である。今、問題になっているイスラム国
について言及する必要がある。
イスラム国の問題についていえば、アメリカのイラク戦争が非常に大きな要因
となっている。
米国主導で行われたイラク戦争では19万人(実は50万人、60万人ともいわれる)
のイラク人が殺害された。
米国は、イラク戦争はまったく取材させなかったので事実が伝わっていないが、
米軍がイラク戦争で使ったデイジーカッターという兵器は、ベトナム戦争のときの
ナパーム弾よりはるかに広い範囲を焼き尽くす火炎爆弾で、イラク軍が「アメリカ
はイラク戦争で原爆を使った」という表現をしたくらい破壊力があった。
結局、米国は、イラク戦争でフセイン政権を倒したのであるが、サダム・フセインは
少数派のスンニ派であり、なぜイラクにおいてスンニ派政権ができたのかを考える
必要がある。
サダムフセインは米国と蜜月であり、米国は、武器を与えて支援してきたのであった。
同氏は、戦争という対外的な国家的危機を絶えずつくり出して国民をまとめあげる
手法をとってきた。
しかし、フセインが米国の言うことを聞かなくなる。決定的だったのは、2000年に
フセインが原油の輸出でドルではなくユーロをつ使うことを宣言したことであった。
ドルが原油取引で使用されるのは、基軸通貨としての地位を低くするものであり、
米国の逆鱗に触れたのであった。
結局は、サダムフセインを拘束して処刑することになるのであるが、アメリカの
占領政策は、軍隊を解体し、国営企業を民営化して職を奪うとともに、シーア派を
登用する一方、スンニ派を徹底的に排除したのであった。
アメリカは250億㌦を援助して今のイラク政府軍を創設したが、イスラム国に
対して非常に弱体で、イランなどの支えでもっている状況である。

「イスラム国」を構成しているのは主にスンニ派で、サダム政権時代の官僚とか
軍人たちが多い。「イスラム国」はフセイン政権の崩壊がなければ誕生しなかった
のである。

2016針路を聞く (4)指導国不在、紛争増える 米国際政治学者 イアン・ブレマー氏

2015年12月31日 | 国際政治
2016針路を聞く (4)指導国不在、紛争増える
米国際政治学者 イアン・ブレマー氏
2015/12/31 3:30 日経朝刊




 ――過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)のテロが頻発しています。

 「ISは史上最強のテロリスト集団だ。原油や人質の身代金、遺跡からの出土品といった潤沢な資金源を持つ。構成員が若く、IT(情報技術)の習熟度も高い。国際社会にとって、ますます手ごわい敵になる」
 「ところが米国やロシアなどの足並みがそろわず、掃討作戦が機能していない。強い疎外感を抱くISを、軍事行動だけでは排除できないという問題もある。状況はさらに悪化するだろう」
 ――地政学リスクが高まるのはなぜですか。
 「主導国を欠く『Gゼロ』の傾向が強まっているからだ。米国は世界の警察官を引き受ける意欲を失いつつある。欧州は様々な形で分断され、影響力が低下している。中国は国力を増したが、国際秩序の空白を埋める意思も能力もない」
 「米国が主導してきた国際秩序は、創造的破壊の時を迎えた。その行く末がまだ見えず、いまは空位の状態にある。政治や経済の価値観を共有しない20カ国・地域(G20)の枠組みは機能しない。地政学上の紛争はこれからも増える」
 ――米国と中国、ロシアとの対立をどうとらえればいいでしょう。
 「中国はいまのところ、軍事面で米国に対抗するつもりはない。米国にとっての脅威は経済面での挑戦だ。中国が米国にサイバー攻撃を繰り返すのも、産業スパイの意味合いが大きい。米中経済は相互依存関係を深めており、それが決定的な衝突の防波堤になる」
 「米ロの緊張も『新冷戦』とは呼べない。ロシアを孤立させる力が米国にあっても、現実の政策にはなり得ない。ロシアの力も限られる」
 ――近著「スーパーパワー(超大国)」では、国際問題に関与せず、自国の再建に専念する米国を選ぶと書いています。
 「米国はいまだ唯一の超大国だ。それはしばらく変わらないが、超大国の役割を選択すべき時が来ている。冷戦後の外交・安全保障政策は支離滅裂だった。米同時テロへの過剰反応がアフガニスタン・イラク戦争を招き、米国を大いに傷つけた。同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。国内問題に集中するという選択は好きになれないが最も可能性が高いシナリオに見える。米国が世界で指導力を発揮するのは一段と難しくなる」
 ――米大統領選の展開をどうみていますか。
 「イスラム教徒を締め出すとか、メキシコとの国境に壁を築くという、信じがたい発言がまかり通っている。パリの同時テロもあって排外的な風潮が広がり、他国が尊重してきた米国の価値観を損なうのは問題だ」
 ――日本は世界でどんな役割を担えますか。
 「人口が減っても経済は発展し、立派なインフラや社会保障制度がある。日本の将来像を描くとすれば、それは大きなシンガポールだろう。とても豊かで透明性が高く、米国と良好な関係を保ちつつ、中国からの投資も呼び込める国だ」
 「日米同盟の重要性は増している。軍事面の協力というよりも、経済成長や法の順守、人権の擁護といった面での連携がより強く求められるだろう。環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉妥結は、日米関係を強固にした。オバマ米大統領の最も重要なレガシー(政治的な遺産)になる」
(聞き手はワシントン支局長 小竹洋之)



ネルソン・マンデラの言葉

2015年12月22日 | 国際政治


南アフリカのネルソン・マンデラ氏
の言葉で感銘深い次のものがあります。

「人間として、何もせず、何も言わず、
不正に立ち向かわず、抑圧に抗議せず、
また、自分たちにとってのよい社会、
よい生活を追い求めずにいることは、
不可能なのです。」

「刑務所に入らずして、その国家を真に
理解することはできない。
国家は、どのように上流階級の市民を
扱うかではなく、どのように下流階級を
扱うかで判断されるべきだ。」


米中の「密約」と日本

2015年12月20日 | 国際政治
風見鶏 米中の「密約」と日本
2015/12/20 3:30 日経朝刊

 米中は切っても切れないパイプで結ばれ、日本は何も知らされていない。こんな証言を米国の中国専門家から聞いた。長年、米中の秘密協力にかかわり、「裏の裏」を知るマイケル・ピルズベリー氏(70)だ。

 1970年代以来、中央情報局(CIA)や国防総省の対中政策にたずさわってきた。いまも同省の顧問だ。そんな彼の著作が今秋に邦訳された(『China 2049』)。
 中国はいずれ米国の味方になると信じ、台頭を助けてきた。だが、中国は初めから2049年までに米国を出し抜き、覇権を奪うつもりだった。その戦略はなお進行中だ――。実体験や中国文献をもとに、本でこう警告している。
 彼に最初に会ったのは10月下旬。冷戦以来、米国がどれほど中国を助けてきたかを列挙し、だまされた、と悔やんだ。ならば、米政府も気づき、米中関係は冷えていくのではないか。こう質問すると、とても意外な答えが返ってきた。
 「米中は対立しない。(米中で秩序を仕切る)G2だってあり得る。両国には長い秘密協力の歴史があるからだ。しかも、米国は一切、その実態を日本に教えてこなかった」
 米中がG2に向かうという説は、米国内ではもはや少数派に思える。中国が米国の覇権に挑めば、緊張が高まるからだ。
 実際、複数の米政府高官は「G2など考えられない」と断言する。著名な米戦略家に聞いても「米中の対立は深まり、米国の対中政策は厳しくなっていく」(エドワード・ルトワック氏)との分析が多い。
 なぜ、ピルズベリー氏の読みはちがうのか。11月下旬に再来日した彼にもう一度会い、疑問をぶつけてみた。すると、こんな趣旨の説明が返ってきた。
 次期大統領候補は選挙中には中国をたたくが、就任後、秘密協力の実態をCIAから知らされれば、中国と折り合おうと思い直す。中国側も、強大になるまでは米国との協力が必要なので、本気で怒らせるほどには挑発しない――。
 彼によると、ブッシュ前政権当時、タカ派のチェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官ですら「中国に、過度に強硬に接すべきではない」との認識を示したという。米同時テロや北朝鮮問題で、中国との協力は無視できないからだ。
 では、どちらの予測が正しいのか。カギをにぎるのは、ピルズベリー氏がいう「米中秘密協力」が、どれほどのものなのかだろう。彼はその現状は明かさないが、一端は想像がつく。
 たとえば、アフガニスタンの和平交渉では「米中が水面下で連携している」(国際機関幹部)。朝鮮半島政策やイランの核問題でも、日本が知らない大国ならではの貸し借りが成り立っているかもしれない。
 だが、これらは国家の命運をかけてソ連に対抗した冷戦中の大戦略提携とはちがう。米政府内からも「米中の協力が深まっても、もっと深刻な戦略的対立を中和するのは難しい」との声が聞かれる。あるいは、あっと驚くような密約が米中にあるのだろうか。
 「日本に少し、罪悪感を感じているんだ」。ピルズベリー氏は最後にこうつぶやいた。組むべき友人は、日本ではなく中国だというキッシンジャー元国務長官らの対中重視路線に乗り、日本を軽視してきてしまったからだという。
 南シナ海やサイバー問題などをめぐり、米中の攻防は強まっている。その舞台裏でどんなやり取りがあるのか。両国が対立を深めていくとしても、忘れてはならない視点だ。
(編集委員 秋田浩之)

トランプ氏発言に批判噴出 「イスラム教徒入国禁止を」

2015年12月09日 | 国際政治
トランプ氏発言に批判噴出 「イスラム教徒入国禁止を」
「国にとって有害」「不快」 大戦時の日系人権利制限挙げ反論
2015/12/9 15:30 日経夕刊

 【ワシントン=芦塚智子】米共和党の大統領候補指名争いで首位に立つ不動産王ドナルド・トランプ氏(69)が、カリフォルニア州でのテロなどを受けてイスラム教徒の米入国の全面禁止を提案したことを巡り、党派を超えて批判が高まっている。トランプ氏は8日、米メディアのインタビューで、提案について第2次世界大戦中の日系人らの権利制限と比較し「他に選択肢はない」などと反論。一歩も引かない構えを見せている。







 アーネスト大統領報道官は8日の記者会見で、トランプ氏の発言について「国にとって有害だ」と非難。大統領が就任する際には米憲法を守ることを宣誓すると指摘し「昨日の発言により、トランプ氏は大統領になる資格がなくなった」と指摘した。宗教を理由にした差別が憲法に反するとの見方を示唆した。
 大統領報道官が他党の大統領候補指名争いに口を挟むのは異例。アーネスト氏は、共和党はトランプ氏が指名を獲得しても支持しないと明言すべきだと主張した。
 国防総省のクック報道官は記者会見で、トランプ氏の発言への直接的な論評は避けた上で「過激派組織『イスラム国』(IS=Islamic State)の主張を補強し、米国をイスラム教と対立させるような言動は、米国の価値観だけでなく国家安全保障にも反する」と警告した。
 こうした非難に対し、トランプ氏は8日、ABCテレビのインタビューで「私がやっていることはルーズベルト元大統領と変わらない」と語り、イスラム教徒の入国禁止を、同大統領が日米開戦直後に指示した日系人やドイツ系住民らの権利制限と比較して反論した。
 ただ、共和党からも厳しい声が噴出している。同党のライアン下院議長は、トランプ氏の提案は「共和党を代表するものでも、米国を代表するものでもない」と強調。他の同党大統領候補も「トランプ氏は錯乱している」(ブッシュ元フロリダ州知事)、「彼の不快で奇妙な発言をする癖は米国を団結しない」(ルビオ上院議員)など一斉に発言。タカ派として知られるチェイニー前副大統領もラジオ番組で「我々が信じる全てのものに反する」と批判した。

人民元、第3の国際通貨に IMF採用決定、円上回る比重

2015年12月01日 | 国際政治
人民元、第3の国際通貨に
IMF採用決定、円上回る比重
2015/12/1 15:30 日経夕刊

 【ワシントン=河浪武史】国際通貨基金(IMF)は30日の理事会で、通貨危機などに備えてIMFが加盟国に配るSDR(特別引き出し権)に中国・人民元を採用することを正式に決めた。世界的に決済や投資に使われる国際通貨のお墨付きを与えたかたちで、実際の組み入れは2016年10月。元はドルや円などに次ぐ5番目の通貨としてSDRに加わるが、構成比でみると巨大な経済規模を映して円を上回る3位に一気に浮上した。




 IMFがSDRの通貨構成を見直すのは現在の仕組みが発足してから約35年ぶり。中国が世界第2位の経済大国に台頭したことで、元も主要通貨にふさわしい貿易量や取引の広がりがあると判断した。日米欧の主要先進国が主導してきた戦後の国際通貨体制は、大きな歴史的節目を迎える。
 SDRに入っていないスイスフランやカナダドルでも現実には準国際通貨としての機能を持つ。SDRになるとIMFからいつでも換金可能な「自由利用可能通貨」とみなされる点で信用度が高まる利点がある。
 5大主要通貨に位置づけられることで貿易・投資で中長期的には元の利用に弾みがつきそうだ。ただ、中国の金融資本市場の改革は道半ばで、SDR入りに伴い、通貨取引の自由化や市場の透明性向上など厳しい課題をつきつけられる。
 IMFのラガルド専務理事は理事会後の記者会見で「中国当局は数年にわたって通貨・金融制度を改革してきた」と一定の評価を示した。
 一般の投資家らは実際に市場でSDRを購入できない。IMFは一定の比率で加盟国にSDRを配分し、もしある国が資本収支危機などに陥ったら、手持ちのSDRを米国や日本などに持ち込んで現金に換えてもらい、外貨繰りをしのぐ。
 ドル不足などに見舞われた際にこうして主要通貨国から現金を「引き出せる」仕組みから、加盟国の間で有事に備えて取り決めておく一種の「通貨の請求権」の性格をもつ。現行はドル、ユーロ、円、英ポンドの主要4通貨で、ここに来年10月から元が入る。
 SDRには国際準備通貨としての象徴的な意味合いも濃く、採用されてもただちに元の取引市場が拡大したり、使い勝手がよくなるわけではない。それでもSDRに入ることで外国政府の外貨準備への元の組み入れが増え、市場シェアが伸びる可能性がある。加盟国はSDRとの交換に備え、構成通貨を積み増す傾向があるためだ。
 通貨ユーロの発足で構成を見直した01年を除けば、新しい通貨の採用は1981年1月からの現制度で初めてだ。

 採用審査をクリアするうえで「貿易量」と「通貨取引の自由度」の2条件を満たす必要がある。課題だった「自由度」を巡っては、中国が欧州やアジアで元建て商品に投資できるよう自由化を徐々に進めるなどした取り組みを評価した。
 SDRの価値はドルや円など構成通貨を組み合わせて決める「通貨バスケット方式」で計算する。30日には来年10月以降の新たなバスケットの構成比も公表し、ドル(41.73%)、ユーロ(30.93%)、人民元(10.92%)、円(8.33%)、ポンド(8.09%)とした。人民元の構成比は3位に入った。



ロシア、イランと協力 首脳会談、アサド氏巡り米欧けん制

2015年11月24日 | 国際政治
ロシア、イランと協力
首脳会談、アサド氏巡り米欧けん制
2015/11/24 3:30 日経朝刊

 【テヘラン=久門武史】ロシアのプーチン大統領は23日、イランの首都テヘランで同国の最高指導者ハメネイ師と会談した。両国は過激派組織「イスラム国」(IS)と戦うシリアのアサド政権を支え軍事介入しているが、シリアに外国が政治的決定を押しつけるべきでないとの認識で一致。アサド大統領の退任を求める米欧をけん制した。
 ハメネイ師は会談で、ロシアのシリア介入を歓迎。米国の中東政策について「ロシアとイランにとって脅威だ」と述べ、影響力拡大を阻む必要があるとの認識を示した。
 ロシア大統領のイラン訪問は8年ぶり。プーチン氏は同日テヘランで開かれたガス輸出国フォーラムに出席。ロウハニ大統領とも会談し、IS掃討の協力強化などを確認するもようだ。