The collection of MARIBAR 

マリバール 文集・ギャラリー

運動オンチ

2004-11-28 23:18:17 | 文章道場
 子供の頃私はデモに動員されていた。親に連れられ、握りこぶしを揚げ、何を主張しているのかわからないが、一緒に何かを叫びながら歩いた。普段は危険だからと遊ぶことを禁じられた、広い道路を大勢の人と進んでいくのが楽しかった。

 それから二十年以上の時を経て、メーデーに行かされたり、選挙応援をしたり、首相退陣を迫る座り込みをしたり、集会やパレードみたいなデモに参加したりした。政治信条があって、社会的問題を解決するために積極的に行動したわけではない。

 運動のスタイルは変わらぬオールドファッションで、格好良くはないけれど面白そう。近所の祭を見に行くようなものだ。踊り手に混じってちょっと踊ってみたりして。

 ここ数年、盗聴法、住民基本台帳法、個人情報保護法など、国家が個人の管理を強めようとする法案が次々成立した。反対する市民運動はその都度あったが成果は全く無かった。

 市民運動が歴史や制度を変えたことがあったのか。薬害エイズや北朝鮮拉致事件などの問題では市民運動がそれまでの流れを変えたかのように見えた。「命、家族を救え、守れ」というフレーズは感情に訴えることができ、わかりやすい。

 日々の個人の自由な活動が脅かされ、直接被害を受けるのは意図の見えにくい法律の方だ。しかし多くの人は、どうせなら流れを変えそうな運動に参加して、「みんなで一致団結して得た成果は大きかった」と感じたいのだろう。
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