変化を受け入れることと経緯を大切にすること。バランスとアンバランスの境界線。仕事と趣味と社会と個人。
あいつとおいらはジョージとレニー




----------------------------------------------------------------
カテゴリの 『連載』 を選ぶと、古い記事から続きモノの物語になります。
----------------------------------------------------------------
 <目次>      (今回の記事への掲載範囲)
 序 章         掲載済 (1、2)
 第1章 帰還     掲載済 (3、4、5、6、7)
 第2章 陰謀     掲載済 (8、9、10、11)
 第3章 出撃     掲載済 (12、13、14、15、16)
 第4章 錯綜     掲載済 (17、18、19、20)
 第5章 回帰     掲載済 (21、22、23、24)
 第6章 収束     ○ (27:3/4)
 第7章 決戦     未
 終 章          未
----------------------------------------------------------------
第6章 《収束》  (続き 3/4)

 ブリタニアの大地は相変わらず瓦礫と焼け野原であった。王国空軍の偵察が来てもすぐにはそれと気付かれないように、ブルータスをはじめとしたルナの仲間がカモフラージュした滑走路と倉庫は、そこにルナ隊の基地があることを示すものを何一つ見せてはいなかった。そんな基地の地下壕の一室で、ルナとブルータスが今後について話し合っていた。
「多くを語る必要な無いと思うが、どうだ、ルナ?」
「親衛隊についてはそうだな。直接会って話しを聞いてみるが、彼らが仲間であることに疑う余地は無いと見ていい。」
「そうだな。さて、これからどうする?」
「俺達のローマ行きは、八方塞を打開する最後の望みだった。だが、策があったわけじゃない。」
「要はやぶれかぶれだったってことだ。」
「そういうことになる。だから俺一人で行こうとしたんだ。」
「ルナ、お前は一人じゃない。お前がどう思っていようとも、お前には皆が着いて来る。」
「認めるさ、ブルータス。お前だけじゃなくみんなの気持ちが俺に集まっているのを感じている。」
「そういうことだ。ただ、お前に着いて行こうとする理由は様々だぞ。お前が抱く未来像に同調する者は少数派とみていい。」
「だろうな。未来像といっても王権復帰という概念だけで具体性は俺にも未だ無いのが本当のところだ。」
「先が思いやられるぜ、全く。」
「そう言うな、ブルータス。こんな話ができるのはお前だけだ。」
「信用してくれるのは有り難い。これからも変わり無くたのむぜ。」
「こちらこそ、な。これからは今まで以上に働いてもらうことになる。」
「そのつもりだ。とりあえず、お前の元に皆が集まっている。今はそれだけでいい。事を成した後にお前が求心力を発揮してくれれば、集まった理由なんてどうでもよくなるはずだ。」
親交を深められてはいるが結論の出ない会話が続いていたその時、入室を請うノックが響いた。ブルータスがそれを待っていたように応じる。
「やっと来たか。」
言いながらドアを開けると、そこにはブリタニアの統領が立っていた。
「首尾はどうだい? 統領さん。」
気軽なブルータスの問い掛けを無視して、ブリタニアの統領がルナの前に進み出た。
「ルナ様、三つ報告せねばなりません。」
「聞こう。いい話か?」
「その判断はお任せします。」
憔悴しきった統領の顔から、彼では判断できない何かがあることを理解したルナは、敢えて穏やかな表情で続きを促した。
「民の怒りが静まりません。」
ブリタニアの民の動向を探っていたということのようである。怪鳥の攻撃以来、民は為政者の無能に怒っているのだ。それを確認し、収めようとしたのだろうか。
「生き残った民は、幾つかのコミュニティを設けて自活しております。接触を試みましたが、半数からは接触することすら拒否され、残りの多くについても殺気だっておりました。」
「ここブリタニアに拠点を築くことは難しい、ということか?」
「時間が必要です。併せ、民を納得させるモノが無ければなりません。」
「親衛隊が合流したんだ。王の拉致と暗殺をぶちまけて、ルナを救国の義士に仕立てることもできるだろう?」
ブルータスである。ルナもその手はあると思う。照れくさくはあったが、そんなことを言っていられる状況ではない。
「長期的には可能です。ただ、我々には今この時に力が必要なのです。」
統領の言っていることも正しい。明日にも王国の軍隊が再び攻め入って来るかもしれないのだ。ルナの足取りが偽の王に辿られるのは時間の問題でしかない。
「民の中から確保した同調者は少数ですが、良識ある彼らは各々の業界の実力者でもありました。我が軍は残り僅かとは言え全て参集しており、新たな同調者の参画で補給や整備に関する当面の問題は解決したと言えます。」
「しかし、戦争できる状態ではない。そう言いたいのだな?」
「残念ながら……。民の支援が無くしては戦えません。」
「もとよりさ。王国とブリタニアでは国力が違い過ぎる。正面からぶつかっても結果は見えている。うまい手を考えよう。」
一つ目の報告はこれまでのようだった。統領も彼なりにブリタニアの再建に動いてくれているのが伝わって来ていた。
「次は?」
「はい。今お話したブリタニアの状況は、予想できたものです。むしろ、少ないながらも有力な同調者を得たのは幸いと言うべきでしょう。」
「俺もそう思う。で?」
「ブルータスとも事前に相談したのですが、纏まった基盤を確保するのは難しいと思われます。」
今回の件があるまで、ブルータスと統領に面識は無い。質は違うが、他人を疑うことを真髄とする役目の両者が、ルナ抜きで事前に打ち合わせをしていたという。緊急事態にあって、人は持てる能力を発揮するものなのか。あるいは、普段は猜疑心と謀略に包まれ、持てる力の発揮場所や方向を間違えているのか。ルナはそんな余計な感慨を持ったが、すぐに本題に頭を切り替えた。
「皆が俺の元に参集してくれていることに感謝している。やぶれかぶれの行動に出られないというのも理解している。だからこそ基盤が必要で、基盤が無ければ何もできないぞ。」
「おっしゃる通りです。私どもも基盤を作らないと申し上げているのではありません。」
「ブリタニア以外の地に、ということか? この地を捨てろと?」
明らかに不機嫌になって行くルナを見て、ブルータスが割り込んだ。
「統領さんはそうは言っていないぞ、ルナ。ここだけじゃ攻めも守りも不十分だって言っているんだ。」
「そうです。纏まった基盤が持てないのなら、分散させれば良いわけです。」
「そこで、俺と統領さんで相談して、基盤に成り得る他の場所を探したわけさ。」
「結論から申し上げます。西ケルトです。」
ブルータスが補足する。
「今あそこは大変なことになっている。西ケルト公爵を王に仕立てて、神聖同盟から独立しようとしているんだ。」
状況を知らないルナが反論する。
「独立だと? そんなことは不可能だ。神聖同盟が認めないだろうし、力で押さえ込まれちまう。」
「そうでもないのです。事実、神聖同盟の現地総督は殺されました。」
「神聖同盟は、王国との戦争準備でケルトに軍を派遣できない。帝国もあいかわらず他国には干渉しないと格好を付けている。」
「なら、独立できるじゃないか。王権の乱立は俺としても認められんがな。」
「そんなに簡単ではないようです。ケルト内部が分裂していて、無政府状態に陥っています。」
「それに、神聖同盟だってただ黙っているわけじゃない。斥候やら何やらを派遣して、分裂を煽っているようだ。」
「状況は分かった。だが、なぜそこが俺たちの基盤になるんだ?」
「親衛隊からの情報では、西ケルトは独立に動き出した時点で、王国に対して神聖同盟との共闘を求めて来たということです。王室はそれどころではなく無視しているようですが、ルナ様が名乗りを上げれば、少なくとも今は分裂している西ケルトの各派閥から、半数は参集することでしょう。」
悪い話ではない。しかし、ルナの不機嫌顔はあいかわらずである。
「ケルトにも基盤を持ったとして、それでどうなる? 俺にゲリラになれと言うのか?」
「万事は大きな目的のためです。手段を選べる状況ではありません。」
「もう話は進めているんだな? 俺が何と言おうと。」
「時間がありません。事は急を要します。」
暫く考え込んだルナは、おもむろに態度を急変させた。
「分かった。よくやってくれた。それしか無いのなら、それで行こう。それで、実際のところ西ケルトはどうなんだ?」
「信用できる者を派遣してあります。今までに入っている報告では、既に幾つかの派閥が同調して来たということです。」
「いいだろう。そっちは任せる。ブリタニアとケルト、ニ箇所の基盤を持ったとして、さて、どうするかだな。」
「ルナ、慌てるな。報告は三つと言ったはずだ。親衛隊を部屋に入れるぞ。」
ブルータスの招きに応じて、親衛隊の代表が入って来た。
「殿下、お会いできて光栄です。」
「その『殿下』はやめろ。俺は皇太子じゃない。」
「は。我々としましては、今後『陛下』とお呼びさせて頂きます。」
そういうことなのだ。今回の件でルナの元に参集する者全ては、ルナを王、あるいは皇帝として擁立しようとしているのだ。そしてルナの目的もそうすることによって成就する。ルナは王権そのものに興味は無かったが、陛下の称号で呼ばれることを頷いて了承した。
「こちらの親衛隊の方々にお話を伺ったところ、親衛隊の隊長と一部は王宮に残っているそうです。」
「聞いている。分裂したのではないんだよな?」
ルナの言葉を継いで親衛隊の代表が応えた。
「王室の連中に我々の翻意が悟られぬように、決死の覚悟で残ったのです。」
ブルータスが付け加える。
「王宮に残った親衛隊、見殺しにするのは惜しいよな、ルナ。」
ブルータスの言わんとすることを悟ったルナが後を受けた。
「王国の中には、王宮に残った親衛隊の他にも俺達の同調者がいるんだな?」
「親衛隊の隊長に連絡を取った。ルナがここにいることを確認して、彼等はルナに忠誠を誓って見せたさ。そして、既に同調者の確保に奔走している。」
「彼等にはどんな役割を?」
「王国の指揮系統を混乱させる。俺達が帝国に向かうにあたり、背後を心配しなくていいようにするためだ。」
「後は帝国に対してうまい奇襲策を考えればいいってことか。」
「そうだ、ルナ。」
「その通りです、ルナ様。」
「そこに妙案を、陛下。」
部屋の中にいる各々が熱い眼差しでルナを見つめていた。ルナも何とかなるような気がして来ていた。この連中とならやり遂げられる。いや、やり遂げねばならない。既に多くの犠牲が出ているのだ。これで成功させねば犠牲者が報われない。
「ところで、親衛隊は兎も角として、ケルトに派遣したヤツは大丈夫なのか? 大役だぞ。」
「心配するな、ルナ。お前の命の恩人が行っているんだ。」
確かにルナには驚異的な強運と実力があるが、それでもこれまでに助けられたことは数え切れず、多くの人に支えられてきたことは認めねばならない。ブルータスが信用できると言うのだから、それ以上は追求する必要はないだろう。今は先に進むことだけを考える時である。

<そろそろ纏めに入らないと。>

とりあえずクリックをお願いします。
    ↓
にほんブログ村 その他趣味ブログへ
ブログランキング
人気blogランキングへ


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



« アウト! よよいのよい♪ »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。