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夏至の灯、モレイラ、ミヌー

2009-06-22 01:16:12 | Tokyo 闊歩・彷徨・建築探偵
The time to hesitate is through  No time to wallow in the mire
Try now we can only lose  And our love become a funeral pyre
(The Doors [Light My Fire]より)

先週18日は1年と1カ月目のニキの月命日。19日は桜桃忌。そして21日は夏至。
1年中で昼が1番長く、夜が1番短い日(南半球は逆だけど)。
日にちのかわる深夜、ハートの蝋燭に火を入れてみた(あ、妖しい儀式とかじゃなく..笑)。

蝋燭は5年程前にコロンボの雑貨屋さん取材で見つけたもの。長らく書棚の隅に置いたままだったが、
先月のニキキにふと火を点けてみて以来、2度目の灯火。
夏至未明、小さな獣のように呼吸する焔。


あいにく夏至の日は曇天で、日の長さを愉しむにはあまりにもまったりと湿っぽい空だった。
気まぐれに、誕生日にもらった砂時計をくるっとひっくり返してみた。
さらさら零れていく砂は、実は細かく粉砕された硝子の粒なのだとか。
音もなくおちていく硝子の砂の向こうに、ジム・モリソンの歌声が重なる。
♪The time to hesitate is through  No time to wallow in the mire.....


先週は取材&原稿三昧。とはいえ、楽しいお誘いには、つい尻尾ひらひら。。。
まず火曜の夜は、メグ千鶴子さんが’80年代に贔屓にしていたという根津の「モレイラ」へ。
「モレイラ」とは、サンバランソトリオのドラマー、アイアート・モレイラから命名したのだそう。
ちなみに、あのブラジル代表ロナウジーニョも本名はロナウド・デ・アシス・モレイラなんだとか。
さすが千鶴子さん秘蔵の店だけあり、あえて冠した「コーヒー&スナック」とは名ばかり、
実態は秘密にしておきたいほどマニアックでおいしいビストロ。

マスターはシネフィルらしく、カウンターの奥には映画のポストカードがびっしり、
見上げれば天井にもポスターが隙間なく。。私の頭上には奇しくも大好きな『ニキータ』が。
マスターはB級アクションと悪役のニコール・キッドマンがお好きなのだとか。

奥の壁にはマスター手描きの酒瓶ポストカードがいっぱい。コピーもなかなかなお味。



隣席には、根津にある外国人御用達宿「澤野屋」に泊まっているというフランス人カップルが。
熱々のお手製ブルーベリーソースをたっぷりかけたナッツ入りアイスをマスターが出すと、
それまでひっそり話していた彼らが初めて満面の笑みを見せた。
ちょっとスプラッターな雰囲気のこのアイス、くせになる美味しさ。いっぱい食べたー。

トレビア~ン&ボンボヤ~ジ


その二日後、私はこのブルーベリーアイスを 再び「モレイラ」でちゃっかりいただいていた。
というのは、マスターに紹介された根津で上演中の演劇を観に行き、その帰りに寄った次第。
演劇会場は芸大前にある明治40年築の市田邸。演目は「厩横丁くろにくる」(気まぐれ倶楽部公演)。
「築110年以上の文化財なので、くれぐれも襖や柱には寄りかからないようご注意ください」と
上演前に脚本&演出の山下まさる氏自らが汗を拭き拭きアナウンスしていたのが可笑しかった。

お座敷は縁側まで超満員で、配られた団扇で扇ぎながらの観劇だったけど、面白さに時間を忘れた。
江戸、明治、昭和、平成を貫く谷根千を舞台にしたオムニバス年代記で、笑いの奥に、
この地に根ざす歴史の紆余曲折が見事に織り交ぜられていた。もちろん猫噺もさりげなく。
演劇は場の磁力にことのほか左右される空間芸術。まさにどんぴしゃな会場選択だったのでは。



金曜は、原稿が煮詰まっているさなかの夜9時頃、文化村にいるというキムリエさんから電話があり、
二つ返事でビアンキを飛ばして一緒にゴハン。さらにNEWPORTで夜更けまで話し込み。
原稿さえなかったら、また朝まででも話していたかった。

土曜は夕方に日本橋で再び文学博士シャウマン・ヴェルナー氏と俳人の方の対談取材。
シャウマン博士は思春期に自我に目覚めて日記文学に興味を持ち、その時に選んだ書物が
「土佐日記」や「徒然草」だったそう…! 卒論は、偶然にも私が先日谷中でお墓を見つけた
猫々道人こと仮名垣魯文研究だったのだとか。なんとも いとをかし な博士でした。

取材後、銀座のボザール・ミューで開催していた米田民穂さんの個展へ。
私はほのぼのファンシー系の猫絵は苦手だけど、米田さんの描く決して媚びない猫たちの
ふてぶてしい面構えにはいたく惹かれる。どれも実際に出逢った猫をモデルにしているそう。


これは新作ミヌーの油彩。ミヌーとはフランス語で“かわいい仔猫ちゃん”みたいなイミらしい。
ますますふてぶてしいお嬢貌猫。なのに妙にコケティッシュ。パリ留学中に出逢った猫がモデルとか。
ぬいぐるみバージョンもやぶにらみが効いてていい。


実は、米田民穂さんという名や作風から女性とばかり思い込んでいたら、にゃんと男性でした。
えーーっ?! 米田氏いわく「みなさん、本人を見てがっかりして帰っていきます(笑)」

たみほ ではなく、本名はたみお だそう にゃ。


これは米田さんの作品..ではなく、帰りにメトロの日比谷駅通路で見た「世界こども図画コンテスト」
受賞作品のひとつ。ロシアの7歳の子が描いた「水そうのそばのねこ」。
子供の絵には、巧い下手を超越して、大人には描き得ない極みがある。


これは東京の9歳の少年が描いた「猫と宇宙」。宮沢賢治の童話の挿絵にでもなりそうにシュール。


スリランカの9歳の子の「お母さんのおっぱい」。猪熊弦一郎画といっても通りそうな?!


インドネシアの6歳児作品「ぼくのドラゴン」。ミロもクレーもびっくりよ。


ポルトガルの少年が描いた「いつも1番の選手」。…てことは、これはクリスティアーノ・ロナウド?



☆追伸

ここのところ朝日新聞の夕刊で連載していた「この1枚の物語」が面白かった。
東松照明、長尾靖、森山大道、荒木経惟、藤原新也、蜷川実花、岩合光昭――
エポックな写真で独自の世界観を切り拓いた日本の名物写真家たちを採り上げたコラムなのだが、
写真家各々の生成流転が、無駄を極限まで省いた文体で語りおろされており
そのいかにも新聞らしい ごつごつ骨太で濃密な書きっぷりが小気味よかった。


速報性じゃネットの足もとにも及ばず、いずれ新聞はなくなると断言する輩も多いし
私も忙しい時には全然読まずに溜め読み(しかも飛ばし読み)する人だけど、
新聞というアナログなメディアをなぜか未だやめられない。


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