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真冬の雨、ジョアンとブライス

2007-12-28 23:58:52 | Scene いつか見た遠い空
昨年の年賀状に一部使用した写真(↑)。冬空の小鳥たちが音符のように見えて思わず撮影。
ちなみに、今年の年賀状のテーマは「雨の中の噴水」by三島由紀夫。

雨の夜更け、年賀状をせっせとプリントアウトしたりしているなさか
不意に ジョアン・ジルベルトの歌声が、遠い海鳴りのように聴こえてきた。
このしんしんと冷える真冬の真夜中に、私の頭をよぎっていったのは、よりにもよって「Estate(夏)」。

16の夏、ひどい夕立が降りしきるなさか、学校から帰ってくるやいなや、濡れた制服を着たまま
ベッドにぐったりと倒れこみ、寝転んだまま ものぐさにラジオをつけた時、偶然流れてきたのが
ジョアンの「Estate」だった。その時は、ジョアンが誰であるかさえ全然知らなかったから、
「Wave」や「Besame Mucho」などが次々と流れてくるなか、このおそろしく心地よい音楽は
いったいぜんたいなんなんだろう…?と、夢うつつで陶然と聴き入っていた。
遠い真夏のナチュラルボッサトランス(笑)。

♪Tornera un altro inverno Caderanno mille petali di rose
La neve coprira tutte le cose E forse un po di pace tornera

(やがて冬が帰ってくる 薔薇の花びらもみんな散り 雪はすべてを隠す 
そうすれば たぶん ほんのすこし平和が戻るのかもしれない)
※勝手に意訳してます。もし訳が違っていたら、ごめんなさいー。

雨の夜更け、私のなかを不意によぎったのは、このフレーズ。
ジョアンがポルトガル語訛りのイタリア語で歌う「Estate」の儚く深いサビ。
無数の薔薇の蕾が ゆっくりゆっくり咲き開いていくようなジョアンの歌声は、
冷たい雨がおちる寒い夜、熟んだ真夏の夢うつつへといざなう。

☆☆☆


今週は、各社仕事おさめで、打ち合わせに忘年会、取材、〆切がぽこぽこ立て込んでいた。
まさに、猫の手も借りたいほど。…とはいえ、ニキの場合は
おせちの黒豆みたいな肉球を投げ出し(↑)傍らで爆睡しているだけだったりするんだけど。

↓この子たちの方が、よほど役立つかも。

右のパンダ着ぐるみのプチブライスはお誕生日に、左の黒猫プチブライスはクリスマスに
盟友えとさんがプレゼントしてくれた逸品。ディテールまで凝ったつくりでびっくり!

数年前にパルコのCMでブレイクしたブライスのオリジナルは、
米国ケナー社から1970年代に限定発売された幻のお人形。
タカラから近年発売され、さまざまなブライスが登場しているが、
そのマニアックなファッションは、昔のピチカートファイブみたいなのもあり、ほんとかわいい。
大きい「ネオブライス」は、目の色がグリーンやピンク、オレンジなどに変化する。
「プチブライス」は、目の色は変わらないけど、横たわると、ふさふさ睫毛の瞼がそっと閉じる(溜息)。

☆☆☆
昨日は外苑前で、切り画作家・福井利佐さんのインタビュー。彼女もお人形のように
チャーミングなルックスのひとだった。
細密なデッサンを切り画で表現した彼女の作品は、それが紙を切り抜いたものであるとは
にわかに信じられないほど ディテールがこまやか。それでいてまっすぐ力強い生命力にあふれている。
仕事場は自宅にあるそうで、リビングでお茶を飲んで寛いでいたかと思うと、不意に切り画に向かう
―という風に、ON・OFFの空間を自由に往き来できる状態が不可欠なのだとか。

その感覚は、私もまったく同じかもしれない。ことばは、日常の隙間から不意におりてくる。
原稿が煮詰まったら、シャワーを浴びながら一考したり、
コーヒーを淹れながらグッドアイデアを思いついたり。
つい先日も、オーガニックの玉葱をたくさん買ったので、シチューをつくることにしたのだが、
キャッチコピーをあれこれ考えながら剥いていたら、ふと気付くと10個近くも刻んでいた。
その楽しいコピー内容とはうらはらに、玉葱が眼にしみて涙が真夏の夕立みたいに溢れて困ったが。。

雨が、まだまだやみそうにない。でも、分厚い古着のニットをもこもこ着込み、
ポットいっぱいの熱いジンジャーティーを何杯もおかわりしながらチョコをつまみ、
あたたかくした部屋で真夜中に聴く冬の雨音って、案外きらいじゃない。
もしこれが雪になっても、雪の降り積もる音を、私はなんとなく聴き分けることができる。
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