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福井利佐の切り画と影絵考

2008-04-13 19:10:48 | Art
                       ⓒ risa fukui/phil

週末、水天宮での打ち合わせ後、浅草に足を延ばし、
昨年末インタビューした切り画作家 福井利佐さんの個展へ。(↑案内葉書より)
最終日目前になってしまったが、駆けつけた甲斐あり。
江戸末期築の重厚な二階建て土蔵を改装したGallery efのずっしりした空間に、
細密かつ生命力漲る福井ワールドが怖いほど合致していて、ある種の妖気すら呈していた。

迷路のように入り組んだ「切り画」の原本を目の当たりにすると、“鶴の恩返し”みたいに
篭って作業に没頭すると云っていた彼女の息遣いが聴こえてくるような気がした。
切り画を駆使した幻想的なアニメーションも新鮮で、
アイヌ民謡を採り入れたという音楽と相俟って、土蔵全体を霊妙な空気が満たしていた。

彼女をインタビューした記事が掲載されている『モダン・インテリア』vo.11

会場では福井さんご本人ともまたお話できて幸い。
この人はたぶん、海外でブレイクするのでは、という気が。

☆☆☆
前にblogキリコ的影法師の誘惑でもちらと書いたけど、
私は昔から影をよく撮影しており、影絵的な表現に魅かれる傾向がある。
きりりと際立った鋭角の影、何かを際立たせる静謐な影、どこまでも深い暗黒の影。。

たとえば中原淳一のこんな画。(昭和23年発行「ひまわり2月号」より)
 ⓒJUNICHI NAKAHARA 
お菓子の家に誘われるヘンゼルとグレーテル(画の原題は「ハンセルとグレテル」)
ディテールが黒く塗り潰されているゆえ、かえってわくわく想像力をかきたてられる。
ふたりの顔の造作は? 森にはどんな生きものたちが潜んでいる? お菓子の家の素材や造形は?

影絵とは異なるが、楳図かずおの画も、想像力をじわじわ刺激する
黒の面積が圧倒的に多い。
ⓒ楳図かずお/小学館 「蝶の墓」より
学生時代、卒論の一環で楳図かずおの表現を採り上げていた先輩のアーティストタケミさん
「楳図かずおの描くコマの多くは隅々が黒く、ギャグマンガでも怖い印象を与えるのはそのせい」
といった指摘をしていて、なるほどーと思った記憶が。
ちなみに、本人には否定されたけど、彼は楳図かずおに少し風貌が似ている(笑)
(あ、余談ながら、話題になっていた楳図かずおの赤白ストライプハウス、かわいいけどなぁ??
景観を壊すというなら、空を覆う超高層マンションをむしろ規制すべきじゃないのかなぁ??)

少々飛躍するけど、影絵的な表現で大好きなのが、ブルーノ・ムナーリの『霧の中のサーカス』。

これは、その昔、児童書の編集をしていた時、飛び出す絵本みたいなポップアップを作るのが
天才的に上手な先輩むらかみさんからいただいたもの。見れば見るほど、美しい絵本。

霧で視界が曖昧になる情景を、トレーシングペーパーみたいな半透明の紙と
モノクロームの影絵的な手法を用いて、非常に映像的に表現している。

飛翔する鳥の向こうにバス、バスの向こうに車、車の中に猫、その向こうにバイク、
そしてサーカスのカラフルなページが挿入され、再びモノクロームの霧にけぶる影絵で終わる。

その曖昧模糊とした霧の影絵模様は、今日みたいにくぐもった花曇りの日曜、
なかなか起きられずにみる夢にどこか似ている。                      サバラ
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