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くちなしと、素晴らしき当たり前

2008-05-09 04:20:53 | Cat 猫族の甘い生活
庭の鉢植えから、今年もくちなしが開花。
子供時代、くちなしについて書いた詩が 何かの文集に載った記憶があり、
旧い資料の箱を探っていたら、あったあった。小学4年生の時に書いた詩『くちなしの花』が―
  
  庭にくちなしの花がさいた。
  プーンと、お母さんのクリームみたいなにおい。

  学校に一りん、もっていった。 教室の中が明るくなった。
  先生は、「あ、これがくちなしの花か。」 とにおいをかがれた。

  去年もやっぱり、「あ、これがくちなしの花か。」 といわれたのに。
  
―ここに出てくる先生は、校内をサングラスで歩き回るような、ちょっととっぽい男性教師だった。
が、くちなしの花の匂いをくんくん嗅ぐ仕草は、子供心になんだかかわいいと思った(笑)
かくいう私も、子供時代からくちなしの香りが大好きだった。
一輪手折って、部屋に活けた。 ニキのいない部屋に漂う甘い芳香―

☆☆
今日も動物病院へ、入院3日目のニキの面会に。獣医と話し合い、夜間だけ家に連れ帰ることに。
症状が好転したわけでは決してないけれど、医学的延命だけがニキにとって幸福とは思えないから。

帰宅直後は少しふらふらしていたけど、用意しておいた大好物の真鯛のお刺身を出したら、
とたんにスイッチが入った! ↓@ニキ・リストランテ
 はぐはぐはぐはぐ
うーん相変わらずちゃっかり者(笑)。。でも食欲があるだけ、まだ生命力が残っている証拠。
正直、いつどうなってもおかしくない状態なのだけど、たったいまの生に感謝。

 ごろごろごろごろ…
いま、ニキが傍らで眠っている。コバルトブルーの点滴用包帯は獣医の指示でつけたまま。。
ギンガムチェックのスカートは私。右足からニキの体温がふっくら伝わってくる。
ずっとずっと当たり前だった感触。それがどれほど幸福であるかすら忘れていたほど、
ずっとずっと当たり前だった光景。

みなみなさまから、私も食欲がおちて憔悴しきっているのでは?…とご心配の声をいただくので、
夜通し看病に備え、夕餉には卵を3つ投入したオムライスをがっつり作っていただきました。

見た目はいまいちながら、味はレトロな喫茶店で食べるオムライスみたいな懐かしめの味で。

デザートには、レイちゃんウィーン土産のデメルチョコもしっかり。
猫の舌のかたちのチョコは昔から大好き。パッケージの猫画もキュート。

一緒にいただいたクリムト「接吻」の猫パロディしおりもナイス。

ウィーンではアルチンボルド展をやっていたそう。
この動物まみれのポストカードも、たまりません。


あ、ニキが寝返りを打った。当たり前の仕草が かわいくて仕方がない。
夜が明けて、診療時間になったらまた病院で点滴だけど、
束の間の“当たり前”を ありがたく享受。
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フォルツァ ニキータ

2008-05-07 23:59:53 | Cat 猫族の甘い生活
             GWの最終日、泣きながらみた通りすがりの薔薇。

初夏めいた暑気に包まれたGW最終日、ニキをビアンキの前籠にのっけて病院へ。
子供の日を境に、食事も水も受け付けなくなってしまったのだ。

めっきり元気のなかったニキも、陽の香りのする外気に触れ、
キャリー用トートから顔を出し、「ぁあん」

病院は連休ながら満員。ニキは犬に怯えるので、血液検査の結果を待つ間、病院裏の公園へ。
日暮れ前、むせ返るような新緑に包まれ しばし過ぎ去る濃密な一瞬。
 さわさわさわ...

大嫌いな血液採取の注射に暴れてぐったりしつつ、緑の息吹をそっと嗅ぐニキ。
ニキは緑がよく似合うね?
ヴィスコンティ晩年の傑作『イノセント』のラストシーンで、緑の庭園のなか 黒いドレスを翻し、
死んだ愛人の元から逃げ去るジェニファー・ジョーンズの後姿に陶然としたことがあるが
あの漆黒のドレスは、まるで一匹の優雅な獣のようだった。なぜかそんなことをぼーっと思いつつ。。

。。。悪い予感は的中。血液検査の結果は最悪で、生きているのが不思議なほどだった。
人なら90歳近いことを思えば、それも自然の流れなのかもしれない、、、けど!

涙一触即発の帰り途、帰路にある代々木八幡神社になんとなく寄り道。
境内に入ると、山手通沿いとは到底思えぬ凜とした静けさに抱かれる。

神社の奥には、昭和20年5月25日の空襲で焼土と化した近隣で拾われた
大小無数のお稲荷さんたちがまつられた祠がひっそりとある。中には猫そっくりなお稲荷さんも。
出世云々の赤い幟がそぐわないほど、かわいらしく清浄な空間となっている。


深い緑に覆われたささやかな社の前で 不意に涙袋が決壊した。
このうえなくへこんだとき、深い深い森の緑に帰りたくなる。
生まれてこのかた森に棲んだ覚えはないのだけど、なぜかそうなる。海ではなく、森。
幼い頃から大好きな山鳩のくぐもった啼き声、樹木に木霊する小鳥たちのさえずり―

そろそろ風も涼しくなってきたので帰ろうと、境内の階段を下りていくと、狛犬の下に黒猫が!

ニキがもしオヤジだったらこんな感じなのかも(笑)
そっと触れても逃げようとせず、背中の温かさにじーん。。

☆☆
そして本日、昨日の動揺で仕上げられなかった原稿を昼過ぎに整えてメールした後、
ニキのお見舞いに。自転車の前籠が、昨日より物足りないほど軽い。。

病院では、例によってニキはしゃーしゃー怒っていたけど、持って行った缶詰も大好物のチーズも
不自由なエリザベスカラーをものともせず、完食! その惚れ惚れするような食べっぷりに見とれ、
2時間近くもゲージの前で過ごした。おでこや耳の後ろを掻いてあげると気持ちよさそうにすりすり。
刹那の気休めかもしれないし、明日はどうなるか判らないけど、その瞬間の幸福にうそはない。

それにしても。ニキを見舞っている間中ずっと、はす向かいのゲージで巨大な兎がボリボリ餌を
食み続けていた。でもって、周囲のゲージには「○山カインちゃん」とか「○野オーギュスタン君」
といった国籍不詳の名札が(笑)。まあ、「○田ニキータちゃん」ていうのも、相当笑えるんだけど。

帰りに、また代々木八幡神社に寄ってみた。と、またもや狛犬の下で昨日の黒猫と遭遇!


しかも、どこからともなくもう一匹、三毛猫も。
舐めあったりして、すごく仲良しそう。

この黒猫はオーバーコートの黒毛が薄く、アンダーコートのグレーの毛が透け見えているので、
ぶち猫みたいにも見える。(ニキも表面の毛は艶やかな黒だけど、内側の毛はみっしり灰色)

吉本隆明は『なぜ、猫とつきあうのか』で「病気のときはとくに猫を人間化しちゃう感じ」と
云っているが、老猫の延命治療をするのも、自然の摂理に反したエゴなのかも。。ジレンマ!
なぜ、猫とつきあうのか (河出文庫)
吉本 隆明
河出書房新社

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レントゲンネコと黒猫夜話

2008-03-22 06:29:34 | Cat 猫族の甘い生活
ニキ、1泊入院の末、金曜の夜に祝!退院。励ましてくれた方々に感謝!

ニキ初のレントゲン写真を公開。名づけて、ニキボーン↑ (結石などもなくて ほっ)
ふだん、ふわふわの被毛に紛れてついゆるい感じの輪郭を思い浮かべがちだが、
そこはやはり けもの。以前、朝倉彫塑館で猫の骨標本を見たことがあるけど、
猫の骨格って、精緻で流麗なマシンのよう。(胴体だけだと流線型の魚みたいにも見える?)

それにしても。病院に行くと豹変する(豹も猫ながら)ニキをよくレントゲン撮影できたなあ。。
私なんて、病院で再会した瞬間、ニキに「×∞★*!(放送禁止用語)」と
右手を本気噛みされ(いまだにPC打つ手がずきずき…)、
さらにキャリー用トートに入れる瞬間、右頬に痛烈な猫パンチ!
獣医さんにその場で消毒してもらい、今も私の右ほっぺには絆創膏が。。

でも、帰宅したとたん けろっといつものゆるゆるしたニキに。(ある意味)化け猫。

ヴィヴィッドなピンクのアームカバーは、今春のキャットお洒落アイテム
ではなく、24時間点滴の痕に巻かれた止血用包帯。痛々しい(涙)。。。
。。けど、ショッキングピンクがなにげに似合うねニキ。

☆☆☆黒猫夜話

ニキは、黒ペルシャの父と、シャム×チンチラ×日本猫のハイブリッド母の間に生まれた。
ニキ母と二キ兄弟をチラ見したことがあるが、みんなふわふわの白チンチラもどき猫だった。
私が初めてニキに逢った時、ニキはまるで、赤い金魚の群れの中で
微妙にあぶれて所在が無い黒出目金みたいな感じだった。


ティアラをつけて藤田嗣治に抱きしめられ、コクトーにちょっかいを出されそうになっている
このふわふわ黒猫卿。ニキ父って、こんな風貌だったのでは、と勝手に妄想(笑)

フジタもコクトーも 猫好きにしか描きえない猫名画の数々を残しているが、
アラーキーも 愛すべき猫観察者にしか撮りえない天才的猫ショットをたくさん撮っている。
(名作『さっちん』の子供たちも、私には戯れる仔猫たちのようにみえてしかたがない)
←アラーキーの『東京猫町』より。
東京の猫をひたすら撮りためた写真集『東京猫町』は、表紙をはじめ珠玉の黒猫スナップが多々。

私もニキと出逢うもっとずっ以前から、無意識によく黒猫を撮っていた。
←中野で出逢った黒猫一家。
黒猫って、ぱっと見、妙に深遠でミステリアスに見える。
(よくよく付き合うと、案外おばかだったりして。そこがまた魅力なんだけど)

子供の頃は、ポーの『黒猫』の影響もあり、黒猫がなんだか怖かった。
魔女裁判が盛んだった中世ヨーロッパでは、黒猫は魔女の手先として駆逐されたかなしい歴史も。
今でも黒猫は不吉という汚名のもと、虐待されることもあるという。それに抗議し、
昨秋、ローマで動物愛護団体が主体となって「黒猫の日」なるイベントが開かれたよう(Bravo!)

↑これはローマの遺跡アレア・サクラ(ブルータスが殺された神殿跡)で以前撮った黒猫。
ここには400匹以上の捨て猫が、愛猫団体の保護のもと アンタッチャブルな遺跡のしじまを
特権的に悠々と闊歩している。「Area Sacra(聖なる空間)」という名の通り、
奇しくも猫の聖地になっているのだ。ローマの喧騒の只中に、ふっと存在するその光景は、
まさに異次元のサンクチュアリ。私がローマに魅かれてやまない理由の一つでもある場所。

☆☆
「黒猫でも白猫でも、鼠を捕る猫がよい猫だ」と云ったのは、確か小平。
ニキは「指が月をさすとき 愚者は指を見る」を、まさに地でいく猫。
明け方、西の空に浮かんでいた橙色の満月を指さした時も、その指をじっと。。
指が月をさすとき、愚者は指を見る―世界の名科白50
四方田 犬彦
ポプラ社

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白い影法師の誘惑

2007-12-21 23:58:22 | Cat 猫族の甘い生活
冬の午後、あわい陽だまりでころころまどろんでいる猫をみると、
決まって「白玉さん」とその子供たちのことを思い出す。

白玉さんは、10年ほど前に出逢った野良猫。
小学校の裏のプールに面した細い路地でよく見かけたスレンダーな白猫だった。
初めて逢った夜、闇のなかにふっと浮かび上がるその姿は、まるで白い影法師のようだった。

まだここへ越してくる前、かつての池袋モンパルナスにほど近い場所に住んでいた私は、
ちまちました住宅地のしじまを縫う細い路地をわざと選んで歩くのが好きで、
白玉さんと出逢った路地は、勝手に「プール小路」と名づけていた。

桜が散りかけた或る春の夜、私は茶とら猫と楽しげに路地をギャロップしていく白玉さんを目撃した。
その年の初夏、彼女はプール小路の小さな駐車場に5匹の仔猫を産んだ。白黒、茶白、茶とら等など
柄もさまざまなら、缶詰をあげても、すぐに突進してくる仔から、塀の隙間から顔を半分だけ覗かせ、
いつまでも内気な転校生みたいにいじいじ様子を窺う仔まで、性格もさまざまだった。

白玉さんは、ミルクをあげると、授乳期には仔猫を差し置き一気飲みしていたが、
やがて仔猫が育ってくると、仔猫にすべてを譲り、寡黙なサッカーコーチよろしく
少し離れたポジションで、一部始終をじっと見護るようになっていった。しかし彼女は
誰よりも警戒心が強く、撫でようとしても、毛一本とて触れさせてはくれなかった。

快い秋風が吹くころ、毎晩プール小路を通りかかると、猫好きと思しき人々が、思い思いに遊ぶ
綿毛みたいな仔猫たちの姿をぽっと眺めたり、餌をあげたりしているのをしばしば見かけた。
が、冷たい木枯らしが吹きすさぶ頃になると、様子は一変していった。
同じ頃、「迷惑なので猫に餌をやらないでください。」と書かれた紙が、駐車場に張り出された。
その頃から、白玉さんの姿だけ、ごくたまにしか見かけなくなった。

供給される餌が減った仔猫たちは、飢えに加えて毎晩の寒さによる鼻水や著しい目ヤニ、
ノミや猫ダニによる引っ掻き傷の血痕で、日に日に薄汚れていった。
私は以前より大きな缶詰をこっそり持って、毎晩プール小路に立ち寄った。
飢えた仔猫たちは、私の気配を察知するや、まるで『ウエストサイドストーリー』のダンサーみたいに
闇からぴょ~んと一斉に飛び出してきて、いつもせつなくなるほどはしゃいだ。

師走の声を聞いた或る凍える晩、2匹の仔猫が私のあとをどこまでもどこまでも追ってきた。
いつもは缶詰に夢中で私が帰るのに気付かないのに、その時はとうとう家まで着いてきてしまった。
一晩でも温かな宿を貸してあげたかったけれど、うちには既にニキが居た。ニキは他の猫をひどく
嫌うし、もし家に招き入れれば、仔猫たちの風邪やノミやダニをニキに感染させることになる。
獣医にもその危険性についてはきつく警告されていた。やむなく缶詰とミルクだけ外に置き、
命を選ぶ自分の残酷さに打ちのめされながら、ドアを閉めた。

――翌朝、ドアを開けると、2匹がすぐさまきゃきゃっともつれるように駆け寄ってきた。
冬晴れの日曜の朝、私は重い足取りでプール小路に2匹を帰しにいざなった。

そしてクリスマス目前の晩、それは起こった。いつものように缶詰を持って現れた私の前には
一段とみすぼらしくなった仔猫たち。缶詰をあげるが、一匹だけなぜか食べようとせず、
その仔は私の前にふらふらと来て、ありったけの声で絶叫した。
ぎゃああああああああああああっ。生きていくことのつらさを全身全霊で訴えていた。
ぼやけていく私の視界の中で、その仔はか細い手脚で冷たいアスファルトを踏みしめ
昏いプール小路に呆然と立ち尽くしていた。

その夜を境に、その仔の姿は消えた。他の仔たちも一匹、また一匹と消えていった。
白玉さんだけは 幸い冬も逞しく生き延び、私が引越す夜、ちゃんとプール小路に現れてくれたが。。

この時季になると、どうしても白玉さんたちのことを思い出す。温かな毛布にくるまれて
ぬくぬくしているニキをみると、不意に胸の奥がちくちくいたむ。

(↑ぬくぬく、というよりもこもこ。。)

数年前、仕事でハワイに行った時(そもそもハワイは仕事でしか行ったことがないのだが)、
ふくちゃんにこの話をして寝たら、夢に白玉さんが出てきた。ハワイで白玉さんに逢えるとは
ゆめゆめ思っていなかったから、うれしかった。夢のなかの白玉さんは、陽光が照りつける
ワイキキビーチではなく、冬闇のプール小路にいた。やっぱり、白い影法師のように。
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佐山泰弘個展と猫放談

2007-12-05 11:22:29 | Cat 猫族の甘い生活
(photo↑「佐山泰弘作品集 猫からの贈り物」より転載)

昨日は、銀座シネスイッチで来年公開の「スルース」の試写(この話題は週末に)。
で、ちょうど近くで、案内をいただいていた猫造形作家佐山泰弘さんの個展が
開催されていたので観に行った。

佐山さんは、同居猫のミーちゃんをはじめ、さまざまな猫の仕草や佇まいをモチーフに、
立体造形、水墨画、グラフィックデザイン、写真など多彩な手法で作品化し、
国内外で個展、イベント出品などをして活躍されている方。
画廊でお逢いした限りでは、ご本人は、ひょろっとのっぽにおかっぱ頭&帽子姿で、
どこか“飄々としたスナフキン”みたいな印象(勝手に失礼!)。そしてすごくいい声。

佐山さんの個展に初めて訪れたのは、今年の夏。
猫友達のデザイナーふくちゃんの愛猫ウーちゃんをモデルにした完成作品を彼女と観に行ったのだ。
彼は、実際の猫を立体作品に仕上げるオーダーメイドも手がけており、「ウチの猫(コ)展」と
銘打った夏の個展では、そうしたオーダーリアル猫たちがずらりと並んでいて、大猫集会の趣だった。

佐山さんのつくったプチウーちゃん↓(2体のうち小さい方)。
そのあまりのリアルさに、ふくちゃんも私も驚愕。



本物ウーちゃん↓。この黄金の眼ぢからがそっくり。

ウーちゃんは、ふくちゃんのデザイン事務所のチーフデザイナーだった(事実)。
同じ黒猫ながら、うちのニキとはうって変わって、ウーちゃんはスマートかつシャープな運動神経の
美猫で、私は日ごろ「ナオミ・キャンベル」と呼ばせていただいていた。
脚がすらりと細長く、キャットウォークがこれほど似合う猫も珍しいという身のこなしだった。

しかし昨秋、不慮の事故で突然命を落としてしまった。
夜、電話をもらって自転車で駆けつけたとき、ウーちゃんの身体はまだほんのり温かかった。
手足も首筋も柔らかく、瞳もうっすら夢心地で、一見、まどろんでいる猫にしかみえなかった。
その黒い被毛に絶え間なくおちるふくちゃんの涙雨を浴びながら、
ウーちゃんはいつまでもいつまでも 花を敷き詰めた箱の中で心地よさげに眠っているようにみえた。


佐山さんがつくったウーちゃんは、いま、ふくちゃんの事務所で、やっぱり心地よさげに眠っている。
打ち合わせに行ったときにそっと眺めると、そこにウーちゃんが居るようにしか思えなかったりする。
それは、単に姿形がウーちゃんに似ているから、というだけではなく、その猫とその人との
深淵な結びつきへの温かなまなざしが、そこにそっと込められているからなのだと思う。

私も、ニキをいずれ佐山さんにつくってもらおうと思う。

今回の「佐山泰弘個展、猫とひるね。」では、猫の習性を絶妙にとらえたからくり猫や、
40体の猫たちが織り成す驚異の大宴会猫の宴」など、代表作を目の当たりに見られて面白かった。
独特の視点で撮影された写真作品も、単にかわいいだけの猫写真ではなく、
猫とのいい距離感が垣間見えるのが魅力。
私は、妙にデフォルメしたり、かわいく媚びたようなファンシー猫アイテムはちょっと苦手なのだが、
リアリズムに裏打ちされた佐山作品には、ほのぼのした中にもそれらとは一線を画する世界観がある。

「佐山泰弘個展、猫とひるね。」は、今週12月7日(金)11時~19時(最終日~17時)まで開催中。
@ボザール・ミュー(東京都中央区銀座7-5-15 銀座蒲田ビル4F  会場直通TEL03-3572-7590)
*エルメスの右肩の道を直進5分左手。
入口に茶白ぶちの「しーちゃん↓」という けだるい銀座猫が居る確立高し。
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至福の猫ファー

2007-11-18 07:37:44 | Cat 猫族の甘い生活
つい二ヶ月ほど前まではノースリーブだったのに、
ここ最近、夜半は 分厚いニットや起毛をもこもこ着込んだ生活。。

ニキもいつも私の側でふっくらまるまっている。
猫に限らず冬の生きものって、ほんとうにまるい。
ことりも羽毛を膨らませてまんまるになる。
ひともますます着込んでシルエットがまるくなる。

私はこれを「まるまりんぼ」と称している。


深夜、冷えてきたので ニキにファーを巻いてあげた。
じゃれてよろこんでいる。鳥の羽はやはりお好きらしい。



面白いので、ほかにも巻いてみた。まんざらでもないらしい。
むっとした顔に見えるけど、実はごろごろいっている。。



さらに調子に乗ってみた。案外、悪くないらしい。
アンナ・カレーニナ? 

ニキータ16歳。ヒトならとっくに80過ぎのお婆ちゃん猫。

その昔読んだ村上春樹 著・安西水丸 画『ふわふわ』の冒頭に、
「ぼくはこの地上に生きているあらゆる猫たちのなかで、
年老いたおおきな雌猫がいちばん好きだ。」と書いてあったけれど
これには同感。

秋の夜長には 年老いた猫婆のほわほわぬくぬくのリアルファーが
底知れず深い森のようにやさしい。

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黒猫集会

2007-10-31 23:59:41 | Cat 猫族の甘い生活
10月31日はニコンのスイーツサイト「kashi-kashi.com」で
ハロウィンスイーツの仕事をした関係者が集って「黒猫集会」を決起。

ドレスコードは黒猫。

黒猫ニキータ嬢(婆)と16年同居する身としては、
やはり化けるならニキータに、というわけで
彼女の膨大な撮影データからとりわけ化け猫系の写真を選んでプリントアウト。
はさみでちょきちょき切って、約5分で即席黒猫お面を作成。
かぶってみると、本猫ニキも後ずさるほどのインパクト(↑)。

写真は右からキャットウーマンそっくりのライターあんまさん(大泉洋ファン?!)、
ニキ面をかぶった私、映画ライターの多賀谷さん(№1映画は『男と女』だそう)、
そして仲良しライターでトルコ取材から帰国したてのセクシーダンサー(!)Rayさん。

この黒猫集会発起人で、猫パンチTVで猫ブログも連載中のマルチライターちよさんや、
アラーキー写真集『東京猫』に掲載のとあるキュートな仔猫写真にそっくりな(説明長っ)
仲良しエディター キムリエさんも一緒で、ほんと楽しかった♪
(前日、奇しくも犬本取材でそこはかとないアウェー感があっただけに
sweetなホームに帰ってきた感じでもう!)

黒猫集会では、妖しい黒ミサ、ではなく
なぜか大半は映画の話題でヒートアップ。
猫パンチTVの人気コンテンツ『女社長レナ』の作者ウラさんが
人がムダにばんばん死んじゃうバイオレンスもの好きとは意外!
それにしても、毎度思うけど、映画の好みは人それぞれで面白い。

奇しくも、この黒猫集会に行く直前まで、ドキュメンタリー映画
『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』のレビュー原稿を書いていた。
あの彫刻のような建築を想像し、創造し、しかし完成と共に
「なんてものをつくってしまったんだ」と深く恥じ入るゲーリーが、
やがて再び自らの創造物をそっと愛でる姿に、
巨匠とか天才とか、そういうステレオタイプの枕言葉だけで
このひとをくくるべきではないな、としみじみ思った。
(DVD は11月23日発売予定。必見)
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