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師走の渋谷でSade

2007-12-03 05:12:49 | Music
日曜は自転車で渋谷へ。東急文化村の周辺の木々が黄昏色に染まっている。
交差点に吹き溜まった落ち葉の上を 自転車を引いて歩くと、
サクッと香ばしく焼けたクロワッサンを齧るときみたいな音がした。

今日は道玄坂でお友達ライターRayさんが習っている音楽スクールの発表会。
ルパン三世のテーマからへルタースケルターまで、ジャンルレスな歌と演奏が
繰り広げられる中、Rayさんはひときわエレガントなシャイニーグリーンのドレス姿で
Sadeの「Kiss of Life」を披露。高校生も参加する中、大人のクールな色香で周囲を圧倒。
傍らでご監になっていたRayさんにびっくりするほどそっくりでお若いママも ほっと溜息。。


それにしても懐かしかった Sade。ハスキーなアンニュイボイスにキャットピープル(!)のような
しなやかなルックスで80年代を代表するディーバとして あまりにパーフェクトだったSade。
「Smooth operator」なんて、死ぬほど聴いた。

思えば、「Diamond Life」が出た頃、
今の六本木ヒルズ辺りにあったとんがったカフェバー(by’80年代死語辞典)インクスティックで
SadeLIVEがあり…観たくてたまらなかったけど、当時未成年だった自分の風貌が情けないほど童顔で、
アダルトなSadeライブには恐れ多くで踏み込めなかったっけ。。

Rayさんの2曲目披露まで2時間近く間があったので、中抜けしてアプレ ミディ セレソンへ。
ここでレコメンドになっているCDを試聴すると、必ずアタリが多々。しかもレコメンド版を買うと
橋本徹さんによるその時々のコンピがおまけでついてくる。これがまた素晴らしい選曲で、
そのコンピで気になった曲が収録されたCD「Love enchante」を買いに寄ったのだ。
このアルバムは、パリの選曲家集団D.I.R.T.Y. Soundsystemによる70年代のソフトなフレンチ・サイケ・ポップのコンピで、Olivier Bloch Laineの2曲(いずれも1976年作)が絶妙に快い。

アプレ ミディ セレソンの並びにある、いつもキュートなアイテムが満載の雑貨屋さんで
Rayさんの愛する“ロバ”がシンバルを叩くおもちゃをプレゼント用にゲットし、再び道玄坂へ。
今度はRayさん、シックな黒ラメ衣装で歌うアダルトなクリスマスソング。
目に耳に楽しい本日のベストドレッサーでした!

師走の渋谷に立ちつくす 孤高の電飾スケルトントナカイ。

土曜から二日続きでのんびり音楽夜話。しかーし、明日からはまたお仕事だぁ。。
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原マスミと月と矢川澄子

2007-11-21 11:31:50 | Music
朝方に仕上げた原稿をメールで入稿し、爆睡。そして夜は@神楽坂。
学生時代からの盟友えとさんと、9月に続いて今年二度目の原マスミのライブへ。

えとさんとは学生時代、スープが冷めない2軒隣に互いに巣を構え、
80年代サブカルワールドをピュアに濃く語り合った仲。珠玉の青い時代に。

思えば、ムーンライダーズの話題で意気投合したのが仲良くなるきっかけだったが、
その時に彼女が「原マスミって知ってるう?」と云ったことから、
私は原マスミという極めてワンアンドオンリーな世界に開眼することとなった。

ライブでは、相変わらず天然なMCのすべてが私のツボで、涙が出るほど笑った。
しかし、不意に弾き語り出すその詩世界には、めくるめく昏い淵が
ぽっかりと口をあけて広がっていた。。

会場で買ったリマスター版のCDを聴いて改めて感じたが、彼の詞はほとんどが月の夜。
どこまでもシュールな言語感覚と性別年齢不詳な歌声で、ルナティックな世界へといざなう。。

♪ヒマラヤのふもとの方に シワクチャになった月が
たくさんちらかってるらしいヨ…ウソだョ・・・「月面から目薬」
♪月がかけてくヘンテコな夜 ゴムの木のカゲで目を光らせて ノドをふくらませて
 甘いものを喰べている私の大切なカメラ・・・「カメラ」
♪月は今夜、宇宙をやめちゃうんだよ そしてこの星へこっそりおりてきて
 海で頭を洗って森で着替えをする・・・「夢の4倍」
♪窓辺の君の黒髪に 満月の炎が燃え移る テーブルクロスのサリー裸に纏い
 食卓に立ち上がって踊りながら 手品のような指先で胡桃を柘榴を喰べる・・・
・・・「トラキアの女」

昨夜のライブは、嬉しいことにお饅頭のお土産付だった。
帰宅後、えとさんに昔もらった原マスミの月のイラストのマグカップに入れた
茉莉花茶と一緒にいただく。左がチーズ味、右がよもぎ味。ごちそうさま!



ちなみに、原マスミは、音楽のみならず、吉本ばなな諸作のカバーや挿画から、
コアラのマーチのコマーシャルMCまでこなすジャンルレスなアーティストでもある。

ポール・ギャリコの心融かす繊細な物語『ひとひらの雪』(新潮文庫)のカバー装画や挿画も
原マスミの作品。うつくしい。この本は、私の冬のベッドサイドの常連でもある。
(ちなみに、ギャリコの傑作『ジェニー』は、世にあまたある猫をモチーフにした物語の中で私的№1)


『ひとひらの雪』の訳者は矢川澄子。澁沢龍彦の最初の妻であり、
彼の盟友・種村季弘とグスタフ・ルネ・ホッケのマニエリスム美術大全
『迷宮としての世界 』を共訳したことでも知られる。

この種村・矢川の名訳『迷宮としての世界』もまた、私の長年の愛読書のひとつ。
三島由紀夫に「今までの貧血質の美術史はすべて御破算になるであろう」と
云わしめた快作だ。

『ユリイカ増刊・不滅の少女/矢川澄子』によると、
2002年に矢川澄子が黒姫で自殺し、その亡骸が発見された際、
原マスミのテープが大音量で回り続けていたという・・・

実際、原マスミの音楽世界には、死に限りなく近い深淵な夢の闇がある。
ただし本人は、あたかもその夢世界の狂言回しの如く、
あっけらかんとした月明かりみたいなひとなのだが。

来る12月10日(月)~12月22日(土)に、青山のGALLERY HOUSE MAYA
開催される「企画展・本という宇宙 vol.1 L'innocente 文学にみる少年少女達の心のゆらぎ」にも
原マスミは矢川澄子の著作を題材に出品するよう。
・・・と、モチーフになっている文学作品名をつらつら見ると・・・
↓↓↓
●参加作家&出品予定作品
東逸子:「午後の曳航」三島由紀夫/井筒啓之:「女生徒」太宰治/宇野亜喜良:「ブリキの太鼓」ギュンター・グラス/作田えつ子:「L'amant 」マルグリット・デュラス/佐々木悟郎:「ライ麦畑でつかまえて」J.D.サリンジャー/城芽ハヤト:「誕生日の子どもたち」トルーマン・カポーティ/スズキコージ:「エレンディラ」ガルシア・マルケス/原マスミ:「ありうべきアリス」矢川澄子/古屋亜見子:「悪童日記」アゴタ・クリストフ/山田緑:「少女地獄」夢野久作/山福朱実:「誠実な詐欺師」トーベ・ヤンソン/山口はるみ:「悲しみよ こんにちは」フランソワーズ・サガン/山本タカト:「恐るべき子供たち」ジャン・コクトー  e.t.c…

・・・ことごとく私のフェイバリッツ! このブログのタイトルにもオマージュとして用いている
アゴタ・クリストフの「悪童日記」もモチーフに。必見!
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鳥籠の中の落日とピアノライブ

2007-10-29 03:30:13 | Music
風邪がやっと治ったと思ったら
ここ二週間ほど、連日締切続きで、かなりへろへろな毎日。
朝晩ずっとPCに釘づけで、靴を履いて外に一歩も出ないという日も多々。

ヴェネツィアの記事を書いたそばから、ハワイ関連の広告コピーを書き
さらにSONYのプロダクツについてのインタビューをまとめたと思ったら、
某女子大学関連の制作物のコンペ用コピーをしたため、
それをメールで送ったそばからJALの旅行サイトの八重山紀行の原稿を上げ、
さらに諧謔的な群像をモチーフにした絵画で有名な
吉澤千晴氏に電話インタビューし、取材のはずがなぜか
80年代の坂本龍一サウンドストリートの話で盛り上がり…。

なんだか、闇鍋の渦中を回遊しているような日々。。

そんな日曜の夕刻、
窓辺に吊るした空っぽの小さな鳥籠の中に沈んだ落日を追うように
ふと思い立ち、仕事を置いて家を出た。

向かったのは青山のスパイラルマーケット。
阿部海太郎ピアノライブを聴くために。

愛車ビアンキを漕いで行こうと思ったけれど
連日の寝不足でへたっていたので、諦めてタクシーで向かった。
思いのほか道が込んでいて、お店に入る頃には既にピアノの音色が。。

彼のアルバム「パリ・フィーユ・デュ・カルヴェール通り6番地」には
今夏、かなりはまった。
私はピアノ弾きにはどうも好みに偏りがあり
例えばクラシックの場合は癖のあるグールドや高橋悠治ばかり
好んで聴いてしまうのだが
阿部海太郎氏の奏でるピアノはとても素直で繊細ながら
独特のチャーミングさがあった。

昨年聴いたBEAMS30周年アニバーサリーアルバムの
ラストに収録されていたWorld of echoのカバーした『Free』が聴けば聴くほど実に素敵で、
デニス・ウィリアムスのエンジェル・ヴォイスを絶妙に換骨奪胎した
その儚い主旋律を奏でていたフェンダーローズの奏者が海太郎氏だった。

思いがけず、間近に彼のピアノ演奏を聴ける機会が訪れてよかった。

しかし帰りに、スパイラルマーケットですっかりお買い物モードに入ってしまい
寝不足もたたって帰宅後はさらにへろへろに。。

明日は代官山で椎名桔平インタビュー。
彼の出演する新作映画『魍魎の匣』のDVDチェックをする頃にはかなりぐったり。。
しかし椎名さんの役作りはかなり凝っていて、
遠藤周作か若き日の種村季弘と見まごうばかりの風貌に変身していたのには驚いた。怪優だ。
映画については公開前なのでノーコメント。

『魍魎』のテーマ曲も、ラストの東京事変の挿入歌も妙に耳についたが
寝る前には阿部氏のピアノ曲を反芻して眠りたいかな。
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