空飛ぶ自由人・2

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映画『ホールドオーバーズ』

2024年07月10日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

原題の『Holdovers』とは、
「留任者、残留者」という意味。
原題だけでは通じないので、
「置いてけぼりのホリデイ」と副題をつけた。

1970年冬、ボストン近郊にある全寮制のバートン高校。
クリスマス休暇で、生徒と教師のほぼ大半が
家族と過ごすため帰郷する中、
事情で帰れなかった5人の生徒を監督する役割を
歴史教師・ハナムが割り当てられる。
このハナム、
生真面目で融通が利かず、皮肉屋で、
生徒からも教師仲間からも嫌われている。
なにしろ、多額の寄付をしている議員の息子に
落第点を付けて、親を激怒させてもどこ吹く風。
校長(実は、元教え子)が「せめて採点をC-にしてくれ」
という頼みにも応じないのだ。

居残り生活に対しても規律を求めるハナムに
生徒たちはうんざり。
はじめ居残った生徒は5人だったが、
一人の生徒の父親が金持ちで、
ヘリコプターで迎えに来て、
4人を雪山に連れて行ってしまう。
残されたのは、最近再婚した母親から
「新婚旅行をするから来てくれるな」と断られ、
雪山の件も親と連絡が取れずに
行けなかったアンガス・タリー。


こうして、寮の料理長メアリー・ラムと
ハナムとの3人だけが
学校に残ることになる。
誰からも認められずに孤独なハナム、
親から見捨てられたアンガス、
一人息子をベトナムで亡くした悲しみを抱えているメアリー、
それぞれの心根に触れつつ、
次第に3人の間に疑似家庭的な絆が作られていく。

「ボストンへ行きたい」とアンガスが言いだし、
はじめは反対していたハナムだったが、
メアリーに説得され
「社会科見学」としてボストン行きを承諾する。
そして、ボストンで、
ハナムはハーバード時代の旧友と偶然出会い、
過去の秘密を明らかにされてしまう。
アンガスがボストンに行きたかった理由も判明し、
それはハナムとアンガスの共通の秘密となる。
しかし、ボストンでの行為が後で問題になり、
責任を追究された時、ハナムは・・・

「サイドウェイ」(2004)と「ファミリー・ツリー」(2011)で、
二度のアカデミー賞脚色賞に輝く
アレクサンダー・ペイン監督の新作。
しかも、「サイドウェイ」で主演していた
名優ポール・ジアマッティとの再タッグ。
ゴールデングローブ賞で主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。


アカデミー賞では、作品賞・主演男優賞・助演女優賞・オリジナル脚本賞・編集賞の
5部門にノミネート
メアリーを演じたダヴァイン・ジョイ・ランドルフが、
ひとり息子を失った女性の孤独を体現し、助演女優賞を受賞した。


受賞を逃したがハナムを演ずるポール・ジアマッティは受賞級の演技。
アンガスを演じたドミニク・セッサも初演技とは思えない演技を見せる。

もう50年も前の話。
全編に、古き良き時代のなつかしさが溢れる。
当時の全寮制の高校がどんなものであったか知って、興味は深い。
孤独を抱えた3人が
次第に心を通わせていく様がていねいに描かれ、
深い味わいが伝わる。
そして、最後の下りは、
激しく胸打たれる。
さすがは、アレクサンダー・ペインと思わせる作品。

最近、騒がしいものが多いアメリカ映画だが、
こういう作品が作られ、評価されているのは嬉しい

5段階評価の「4.5」

拡大上映中。

 



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