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あゝ都知事選挙

2024年06月27日 23時00分00秒 | 様々な話題

今日は、少々ユーウツな話題。
というよりも、情けない話。
東京都知事選挙のことですよ。

「緑のタヌキ」「白いキツネ」の化かし合い、もそうですが、
大量泡沫候補とポスター掲示板の件。

今回の都知事選には
過去最多を上回る56人が立候補。
昔から東京都知事選挙では
その注目度からか、
多数の候補が立候補する傾向にあり、
近年では1991年に16人、
1999年には19人、2007年には14人、
2014年には16人、2016年には21人、
2020年には22人が立候補し、
今回は新記録の56人が立候補した。
「選挙公報」も莫大な量になるし、
政見放送も11時間かかるという。

多数立候補について、過去の事例では、
1960年4月の栃木県・桑絹村における村長選挙では
分村を巡って村長派と対立した陣営が大量立候補をしたため、
202人が立候補する事態が発生した。
1995年の参議院議員通常選挙では東京選挙区で、
改選議席4に対して72人が立候補したこともある。
選挙の確認団体となるには一定の候補者をそろえる必要があったため。

で、今回の都知事選挙、56人のうち
名前の知られている4、5人を除いて、ほとんどが泡沫候補だ。
泡沫候補(ほうまつこうほ)とは、
当選する見込みが極めて薄い選挙立候補者。
「立候補しても泡のように消えてしまい落選する候補」
という意味からつけられている。

もちろん、立候補するのは自由で、
自分の政治的信条を広く伝える機会を作るのは重要だ。
しかし、立候補が多すぎると、
事務処理上大変なので、
そのために「供託金」制度がある。
立候補の際、一定額を供託し、
有効投票数の10分の1以下しか得票できなかった場合、
供託金を没収する仕組み。
これによって、むやみやたらと立候補者が出ることを予防するためだ。
ちなみに、都知事のような首長選挙の供託金は300万円
前回の2020年選挙の時は、
3位までが10分の1をクリアし、供託金没収をまぬがれた。

(先にあげた桑絹村村長選挙当時は、
 1962年の法改正以前で、
 町村の首長選挙の供託金は不要だったため、
 202人という大量立候補が出現した。)

供託金を没収されてでも、
自分の政治的信条を広く人々に伝えたい、
という人は立候補すればいい。

ただ、供託金300万以上の金が行政の負担になる。
ポスターの印刷費1枚134円が公費負担の他、
ハイヤー、レンタカー、ガソリン代、運転手代、
選挙ハガキ、選挙事務所の看板、選挙運動用の自動車看板、
個人演説会の看板など、
選挙公費負担は一人あたり、最大680万円になる。
こんなことは誰も知らない。
「公費負担」というが、実は「税金」だ。
だから、供託金を支払っても、
当選の可能性のない立候補は、
社会的経費の点からは、
実は迷惑な話なのだ。

しかし、今度の立候補最多56人というのは、ちょっと違う。
政治団体「NHKから国民を守る党」(以下「N党」)が
24名の大量立候補者を立て、
「掲示板ジャック」をしたのだ。
計画的に。

立候補者のポスターを1枚1枚、
計24枚を貼ったというのなら、仕方ない。
しかし、そうではなく、
N党に寄付をした人(立候補者ではない)の作ったポスターを
貼る場所として、N党の候補者のスペースを提供しようという
おかしな話だ。

5月末までなら5000円、
6月1~19日で1万円、
20日以降は3万円を党に寄付すれば、
都内1万4000箇所の掲示板のうち1か所で
好きなポスターを貼れる権利を差し上げようという。
一つの掲示板には最大24枚のポスターを貼ることができる。
5月末までに、全部の権利が完売したとして、
5000円×1万4000箇所で、総額7000万円。
「N党」の供託金総額7200万円に迫る。
立花孝志党首の定例会見では、
5000円コースは約850か所、1万円コースは約150か所、
3万円コースは約25件の“お買い上げ”があったと報告した。
425万円の「売上」だ。

その結果、↓のような光景が現出した。

左右2列ずつ、下1列に同じポスター24枚。

では、24枚のポスターが、なぜ全体を囲むような「凹」型に貼られているのか。

ポスターの貼る場所は、くじによって決まる。
告示日当日に候補者もしくは代理人が、一回目のくじ引きをして、
くじを引く順番が決まる。
そして、2 回目のくじ引きで引き当てた番号がポスターの番号となる。
中央の部分を獲得できるのは、くじで24番までを引いた人だ。

「N党」はくじ引きに参加せず、
24番までが決まった段階で人数分並んで、
25番から48番までの連番を獲得したらしい。
全て計画的だ。

しかも、ポスターの内容が問題。
写真は、候補者とは全く関係のない人物キックボクサー
生き物のイラストなど。
女性専用風俗の広告もあり、
SNSに誘導されるQRコードが記載されていた。
警視庁が、風営法に抵触するとして警告し、
別のポスターに貼り直した。


中には、全裸に近い写真を掲載する者も出て来て、
「子供の目に触れる」と抗議が殺到、
迷惑防止条例に抵触するというので
注意を受け、撤回した。

次々と滑稽な話が出て来る。
こんなことは初めて。
おそろしく品性の無い話だ。

この前代未聞の事態に、林芳正官房長官は記者会見で
「(掲示板は)候補者以外が使用できるものではない」と発言。
松本剛明総務相も
「公選法上、掲示の権利を売買するものとはされていない」と述べた。
しかし、林長官は、
「記載内容を直接制限する規定はない」とも述べている。

要するに、今回の事態は、誰も想定していないものだった。
立候補者以外の人のポスターを貼るなどとは、誰も考えなかった。
しかも、金を払って、その権利を買うなどとは。
普通の常識ある人ならしない
なのにした。
おかしな精神構造の人間が。
少数の変わった人のせいで、
費用もかかり、
それだけでなく、
選挙制度までおちょくられた。

もう時代が変わったのだ。
長年続いた制度の疲弊が現われたのではないか。
選挙のたびに作られ、
投票が終わると解体される掲示板。
誰が見るというのか。
候補者のポスターは、投票所前に掲げれば十分で、
1万数千箇所も掲示する必要はない。
税金コストだけでなく、選挙管理委員会の人的コストも抑えることができる。

さて、このポスター事件、どういう展開になるか。
今は警察は動いていない。
選挙結果に影響が出たと批判されるのを恐れているのだ。
しかし、投票が終わった途端、
動き出すと思われる。
公職選挙法第144条の2第8項には、
選挙運動のために使用するポスターは、
掲示場ごとに候補者1人につきそれぞれ一枚を限り掲示するほかは、
掲示することができない、
と書かれている。
候補者1人につき、それぞれ一枚。
候補者でない者がポスターを貼ることができない。
まして、与えられたスペースを売買出来るものではない。
明らかな公職選挙法違反だ。
選挙が終わったら、立花孝志党首党首は逮捕されるだろう。

このことに関連して、
「れいわ新選組」の参議院議員1年ごと輪番制を思い出す。

2023年1月16日、
うつ病の症状により議員活動を休止していた水道橋博士が議員辞職。
比例代表だったため、個人得票順で次点となっていた大島九州男が
繰り上げ当選となった。
山本太郎代表は、記者会見で「残りの任期を有効に活用したい」として、
「れいわローテーション」と名付けて
比例名簿登載者のうち個人得票の多い順に5人が1年ごとに辞職し、
残り任期を5人が交代で務めると明らかにした。
議員職のリレー。
これも、想定外の出来事だ。
経験が必要な国会議員を、1年ごとに取り換えるとは、と批判が集中した。
結局、大島氏が辞職に納得しなかったため、
「れいわローテーション」による議員の交代は頓挫。
かろうじて、常識が守られたのだ。

この二つの事例は、
普通の常識のある人なら、するはずのないことだ。
なのに、恥じらいもなく、してしまう。
最近、日本は、こういうヘンテコな人物のすることで、
浸食されている。
外国人が見たら、笑うだろう。
「日本人って、馬鹿なの?」

今回の事態、「罰ゲームだ」と言った人がいるという。
「普段政治に無関心だから、これは都民に対する天罰です」と。

都民も、日本国民も可哀そう。

 



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